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太平洋の双翼  作者:  カズヤン
24/38

24.アメリカの策謀

 1941年(昭和十六年)7月 アメリカ ワシントンDC


「日本はまだ挑発に乗ってはこないか...」

 ワシントンにあるホワイトハウスの一室にて大統領であるルーズベルトが呟く。


「ジャップにはテンノウがいます。彼が軍部を抑えているのでしょう。」

 大統領顧問官であるハリー・ホプキンスがそう答える。


「...チャーチルからの催促が日に日に増えている。ビスマルクを仕留めきれんかったのが原因だ。」

 そう言ってルーズベルトはため息まじりにそうつぶやく。この頃イギリスは盛んにアメリカに戦争参加の要請を出していた。しかし、アメリカ国内の世論は戦争参加には消極的であり、ルーズベルト自身も選挙の公約に国民を戦争に送らせないと言っていた。


「ジャップが早く爆発すれば良いのだがな。」

「それは仕方ありません。それならば日本にもう少し圧力をかけてみるというのはどうでしょうか?」

 ホプキンスがルーズベルトに対しそう言う。


「・・・圧力か・・・」

「はい。圧力をかけて溢れそうな怒りを溢れさせるのです。」

「だが圧力をかけるにしても何か理由が無ければならない。」

「それならば理由を作ればよいのです。」

「ほう...理由を作るのか。」

 ホプキンスの言葉にルーズベルトはニヤリと笑う。


「はい。こちらの地図をご覧ください。」

そう言ってホプキンスは世界地図を広げる。


「ハワイは遠すぎるので意味がありません。そこで...」

「フィリピン、か。」

「イエス。」

「ふむ。それで、具体的にはどういったことをするのだ?」

「こういうのはどうでしょう。我が国の輸送船が、ジャップの潜水艦の攻撃を受けたというのは?」


「輸送船だと?乗組員がやられたらどうする?」

「スクラップ予定の船を使うのです。乗組員は必要最小限の人数を乗せ、夜間にフィリピン近海に近づきます。その後、船内の奥に仕込んだ火薬を爆発させるのです。そうすれば潜水艦にやられたように見えます。」

「フム...なるほど。よしホプキンス。君に任せよう。」

「分かりました。すぐに取り掛かりましょう。」

そう言ってホプキンスはルーズベルトの部屋を後にした。


「全く...極東のサルは言うことを聞いていれば良いのだ。サルが我々白人の上に立てるわけがないというのに。」

 ルーズベルトは誰もいなくなった執務室の中で、そう一人呟いたのだった。




 フィリピン レイテ近海


 この日、米アジア艦隊に所属する駆逐艦『スチュワート』は、輸送船からの救難信号を受け、レイテ近海まで向かっていた。

「艦長、まもなく目的地付近です。」

「そうか。見張り員に見張りを厳重にするよう伝えてくれ。」

 艦橋にいる『スチュワート』艦長は伝令の報告を聞いてそう言った。

 すでに時刻は十時を過ぎ、艦橋から見える景色は真っ暗であった。


「確か輸送船は、機関が故障して漂流中と言っていたな。」

「はい。そう聞いております。」

 艦長は隣にいる航海長にそう訪ねる。


「夜間の曳航作業は危険だ。すぐに取り掛からねばいけない。」

「ええ。サーチライトを使ってでも行うべきですね。」

「右舷三時方向に輸送船発見!!」

 見張り員の報告に、艦長は双眼鏡で輸送船を確認する。


「あれか...航海長、すぐに船を近づけろ。曳航準備にかかれ。」

「イエッサー。」

 艦長は操舵輪を握る操舵手に船を近づけるよう素早く指示を出し、曳航準備に取り掛かろうとした。その時、突如輸送船が爆発を起こした。


「どうした!! 何があった!!」

 艦長は突然起こった爆発を見てそう叫んだ。

「か、艦長...輸送船が...輸送船が突然爆発しました...」

 艦橋からその光景を見ていた見張り員は呆然としながら艦長の問いに答える。その間にも輸送船は火に包まれ、海中へと沈んでいこうとしていた。


「艦長...」

 あまりの突然の出来事に艦橋にいた全員が黙りこんでいた。艦長も沈んでいく姿を見ていた。しかし、すぐに艦長は考えを切り替え、素早く命令を出す。


「何を突っ立っている!! すぐに生存者の救助の用意をしろ!! 一刻も早くだ!!」

「は、ハイッ!!」

 艦長の命令を聞いた全員が大急ぎで動き始める。その様子を見ながら艦長は先程の爆発について考えた。

(あの爆発は一体なぜ起こったのだ?この海域には機雷は撒かれていないから触雷の可能性は無い。とすると...まさか...)

「ジャップの攻撃なのか?」

 艦長の小さなつぶやきは、周りの乗組員に聞こえることは無かった。こうして、後に『レイテ沖の悲劇』と呼ばれる事件が起こった。この事件を皮切りにアメリカの世論は対日世論が強くなり、日本は大きな危機を迎えようとする事となったのであった。






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