13. 新生チハ登場!!
1938年(昭和十三年)五月 小笠原諸島沖
「ソーナーに感あり!!敵潜水艦です!!」
その日、海上護衛隊は小笠原諸島沖で訓練を行っていた。一昨年の三月に設立以来、海上護衛隊は日々激しい訓練を行っていた。
「対潜戦闘用意ッ!!」
「対潜戦闘用意ッ!!爆雷投下準備急げッ!!」
この日も伊号潜水艦を仮想敵とした戦闘訓練が行われていた。
第一護衛艦隊旗艦の天龍には海上護衛隊司令長官の中川良三大将、参謀長の新見政一少将が座上しており、訓練の経過を見守っていた。
「新見君、訓練は順調のようだな。」
「ええ、長官。」
訓練の経過を見ていた中川大将は、新見少将にそう言った。
「戦争になれば彼らの活躍が日本の海上輸送を左右する。近いうちに白鷹型護衛空母や松型護衛駆逐艦も配備されるようになる等、上も我々を重視してくれている。」
松型護衛駆逐艦は、史実の松型駆逐艦の設計を基に改良を加えており、より対潜、対空能力が強化されている。
「ならば期待に応えれる様、より訓練に励まねばなりませんな。」
新見少将は力強くそう言った。
海上護衛隊が訓練を行っていた頃、緋村はというと...
横須賀海軍基地
「チクショーまた負けたー!!」
緋村は飛行場のど真ん中でそう叫んだ。緋村はこの日先任搭乗員との模擬空戦で大惨敗したのである。
「まだまだですな緋村少尉。」
緋村との模擬空戦に勝った一空曹は、緋村に対しそう言った。
「くそー、やっぱすごいな上田一空曹は。」
「いえいえ、緋村少尉も筋は良いですよ。あと二年もすれば私なんか相手にならなくなるでしょうよ。」
「世辞なんて言われても嬉しくねえよ。」
「ですよね。」
そう言って上田一空曹は去っていった。上田一空曹は横空でも指折りのベテランパイロットで、トレードマークのひげ面から、「ひげダルマの上田」と呼ばれている。
「くっそー、悔しい。」
「まあ仕方ないですよ。上田一空曹が相手だったんですから。」
緋村は格納庫わきで知り合いの整備員と話していた。
「それでも悔しいもんだぜ。どうにか勝てるようにならんかねえ。」
「よく上田一空曹が言ってるじゃないですか。『技は見て盗め』って。」
「そりゃあそうだけどよ。やっぱりベテランにゃあ敵わんなあ。」
そう言って緋村は格納庫の壁にもたれかかった。緋村はこれまでに上田一空曹との模擬空戦を十数回挑み、そのすべてに敗北していた。緋村も持てる技を出して挑んではいるのだが、全く歯が立たない。
(絶対にいつか勝って舌を巻かせてやる。)
そう心に誓いながら、緋村は飛行帽を片手に飛行場へと戻っていったのであった。
緋村が横空で訓練を行っていたころ、杉野は村田ととともに陸軍の富士裾野演習場にいた。杉野たちはこの日試験運転を行う九七式中戦車を見に来たのである。
「これが新しいチハですかッ!!」
戦車オタクである村田が目を輝かせながらそう言った。杉野たちの目の前には生まれ変わった九七式中戦車が鎮座していた。
「形はほぼ一式中戦車だな。」
杉野は九七式中戦車を見ながらそう言った。
「確か主砲は新型の四十七ミリ砲ですよね?」
「ええ、そうです。」
杉野は近くにいた陸軍の技術士官に尋ねた。
「武装は新型の九八式四十七ミリ砲を搭載、装甲は前面五〇ミリ、側面二十五ミリ、エンジンは新型ディーゼルエンジン240馬力...すごいな。」
技術士官から渡された資料に目を通した杉野は、その性能に驚いた。
「この時代だったら、かなりの高性能ですね。」
「ああ、T-26なら相手じゃねえな。」
この生まれ変わった九七式中戦車は、史実の一式中戦車を基に改良を加えたものであり、その性能は一式中戦車を凌駕するものであった。
「これならノモンハンでも大丈夫ですね。」
「ああ、そうだな。」
杉野は九七式中戦車を眺めながらそう言った。
それからおよそ半年が過ぎた。
「・・・そろそろノモンハンになります。」
「なんとしてもソ連に大打撃を与えてやらねばな。」
集まった会合で東條はつぶやいた。
「ですが叩きすぎればソ連から倍返しを受ける可能性もあります。」
杉野は東絛にたいしそう言った。
「うむ、満州とソ連の国境にはこの四年でかなりの防御陣地を構築している。万が一ソ連が侵入しても十分に対処できるだろう。シナ事変が起きなかったので順調に進んだ。」
東絛はそう言った。陸軍ではノモンハンに備えて四年前から強固な防御陣地を構築していた。
「戦車部隊も満州に配備させてあるし、戦闘機も新型の九七式戦闘機二型も新京に集結させている。」
戦車部隊は前述の九七式中戦車と改良型の八九式中戦車乙であった。
また、陸軍の戦闘機は新型の九七式戦闘機二型であり、エンジンは新型のハ25エンジンを搭載して、最高速度は四九〇キロを出している。武装は機首の七.七ミリ機銃と主翼に十二.七ミリ機銃をガンポットとして装備している。
海軍も同等の改造を行った九六式五号艦戦が配備されている。
「海軍航空隊もノモンハンが始まれば九六式艦上戦闘機六十機、九六式陸上攻撃機四八機が第一陣として準備しています。」
山本中将はそう言った。
「ドイツの工作機械がなければどうなっていたか...」
杉山大臣が呟いた。
ドイツから届けられる工作機械は、各地の工場で活躍していた。陸海軍の将官も工作機械の活躍に関心を持ち、さらにドイツから輸入する予定となっている。
「すべては準備が完了しているわけだな。」
首相の平沼騏一郎が呟く。
「あとは時が来るのを待つだけです。」
「だろうな。」
緋村の言葉に東絛はそう頷いて、その日の会合は終了したのであった。
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