創造神
その時代、世界を創造できる神がたくさんいた。
ある者は山を、ある者は川を…人の思い付かない独創性溢れた作品を創り上げることに没頭した。
ここにも一人の神がいる。
世間知らずだが若干の才能が備わったこの神も、ここらで何かを創ってみようと思った。
やるからには半端な仕事はしたくない。皆をあっと驚かせて、自分の名が響き渡る物にしたい。
そう思った彼はある時からただひたすらに部屋に篭って頭を捻り始めた。
食べることもしゃべることも寝ることも忘れて、ただただひたすらひとつの作品を創ることにまい進している。
どうせだから大きなものを創ろう。世界に降り立った者の目に必ず映り、その者たちの想像力を掻き立て、長く長く受け継がれてゆくもの・・・。
形が決まっていては面白くない。どのようにも変化しながら見るものを飽きさせない代物でなければ、創造したものはすぐに淘汰されてしまうだろう。
美しいものがいい。見るたびに不快になるような物では後世に語られる自分の評価はさぞ厳しかろう。
彼はひたすらに頭をひねった。創造力という点では先ほども述べたとおり才能があるほうだ。それでも万人を驚かせ、かつ理想に合うものを創り出すのには、生半可な知恵では追いつかない。
試行錯誤を繰り返し、何度も何度も自分に失望して、部屋に篭ったまま何年が過ぎただろう。いや、実際は何百年過ぎたかわからない。
神もすっかり年老いた。
頬はこけ、目は落ち窪み、ひげや髪は力を失い、その浮き上がった肋骨が彼の刻んだ年月を物語っている。
しかし、完成した。
彼にとっての最高傑作だった。色は白を基調として、限りなく壮大な外観と繊細な陰影が美しく、しかも空の機嫌によってその表情を変えることができる。
人は毎朝毎晩空を仰いでは、さまざまな想像を膨らませながら、いくつもの詩を生み出して夢を語るだろう。
そう。その神は、"雲"と言うものを創り出した。
すぐ報告がしたい。川を創った神は驚いてくれるのではないか。山を創った神は苦笑いを浮かべてくれるのではないか。彼の心は少年のように踊った。
神は自分の作った雲を持って、数百年ぶりに部屋の扉を開けて飛び出した。
そして、言葉を失った。
部屋の外には数百年前と変わらない、広大な大地が広がっている。
そのすべてを包み込んでいる無限の青空には、すでに数え切れないほどの雲が浮かんでいた。




