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現代版・マッチ売りの少女

 雪が降っている。

 往来を往く人々は、日没とともに降り始めた氷の結晶を、美しいものとは思わなかった。白く染まる風景から逃れようと、表情を硬くして足早に通り過ぎてゆく。

 そんな彼らを止めるには、少女の声はあまりにか細い。

「誰か……買ってくれませんか……?」

 消え往くような小さな声が、時より凍える口元から漏れては雪と共に降り積もる。めまぐるしく人の入れ替わるこの風景で、彼女だけがただ一人、写真に収められているかのようにたたずんでいた。

「お願いします。買ってください。おうちに帰れないんです……」

 ぽつり、ぽつり……うわごとのように言葉を発しながら、先を急ぐ人々を呼び止めようとするが、誰一人として振り返ってくれる気配はない。

「寒い……」

 髪に積もる雪が首筋を濡らし体温を奪っていく。恨めしそうに空を仰げば、雪はさらに深々と降り続いている。黒い雲から吹きつける凍てついた風が頬をかすめるたびに、指の先がジンジンと痛んで辛い。

「誰か……」

 助けて……。

 ……言いかけた。買ってほしいとかじゃない。もう、助けてほしい……。

 仕事を始めたのは確かに彼女の意思だ。お金がほしかった。服とかバッグとか、友達に馬鹿にされない程度には揃えたかった。だからとて、大学の学費と、一人暮らしの生活費を出してくれている親にこれ以上せがむことは、彼女にはできなかった。

 そして働き始めた気楽でコンビニエンス(便利)なアルバイト。まさかこんなリスクがあろうとは……。

「お願いします。このままじゃ帰れないんです」

 つぶやく彼女の脳裏に、悪魔のような男の顔が浮かぶ。思わず身震いをした。

 ……絶対に手ぶらでは帰れない。後が怖い……。

「ノルマがあるんです……」

 彼女はもはや、誰に言うでもなくそんなことを口にし始めていた。

「届かなかったら責任を取らされるんです……」

 日の暮れた街で……人の消えた往来で……一人だけ残された風景の中で……誰にも聞こえない心の叫びが、降り積もる氷の世界に埋もれていく。

「だからお願いします。だれか恵方巻、買ってくれませんか……?」


 利益利益と、大人たちが目一杯背伸びをする平成の夜。

 ……世知辛い吹雪に晒されて、彼女はまるでマッチ売りの少女のようだ。

2月にこんな事件がありまして・・・↓

「クリスマスケーキ売りながら、お節並べて、恵方巻予約ノルマ」

アルバイトとみられる女性は、クリスマスの16年12月25日、ツイッターでこうぼやいた。

別の女性は27日、「クリスマスケーキのノルマ終わったとおもってホッとしたら次は恵方巻?!?とりあえず3本セット×3で」とツイートした。


Jcastニュースより抜粋

https://www.j-cast.com/2017/01/27289198.html?p=all



ノルマが達成できずに苦しむ挙句、自腹切って恵方巻を買わされるアルバイトたちの悲劇が軽い社会問題として?ニュースになってましたね。

ノルマノルマのコンビニ産業。現代のマッチ売りの少女を思わせます。

何でいまさら二月の話題かって?

・・・今日、二月締め切りの某ショートショート賞から落ちたからだよっ!!

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