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Sleep-Walker~夢と現~  作者: 桜椛
第4章   夢追いの亡者
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66話  女性の価値

「で?早くそんなとこ座ってないで、ここに座りなよ」



 俺としては普段のこいつとの違いがなんとなくわかったためもう話すところは無かったのだが、小鳥はまだ話足りないようであり、懲りずに自身の隣をぽんぽんと叩いていた。



 どうしたものかと考えた。

 別にこれから何をしようと言う訳でもない。特別面白いテレビもやっているわけでもない。精々ニュースくらいだろう。

 だからまぁたまには兄妹水入らずで話すのも悪くは無いかなと思った。とは言え、だからと言って実の妹の部屋で、実の妹が毎晩寝ているベッドで、兄妹揃って座るというのはいかがなものだろうか。

 別にそこからの発展性は何も無い。あってはいけない。だから気にするべきところではないのだが、やはりどうしても気にしてしまうのは、ここ最近の妹の成長具合と、やはり俺がどうしようもなく男だからということだろう。

 というか先ほどまであのロリっ娘を相手していたから余計に、というのもある。いやはや慎に困った困った。



「座るの?座らないの?」



 語気を強めに言われた俺は、その勢いに負けてか仕方なく、心なし人一人分くらいの距離を開けて小鳥の横に座った。



 ちら、と横目で小鳥を見る。



 白のタンクトップを着ているため、小さいながらも谷間がチラチラと覗いている。もう少し覗きこんでみれば、きっとその頂きも見れるのではないのだろうかと言う危うい位置だ。



「ちょっとお兄ちゃん。何処見てんの。やっぱりそういうことが目的か……」



 小鳥はじとっと俺を睨め付け、自分の体を抱きしめて少し距離を置いた。



「だから違うと言っているだろう。俺は実の妹に興奮するほどおちぶれちゃいねえよ」



 小鳥は口を尖らせ、ぼそぼそと呟いた。



「……前に一度裸見たくせに……」



 あまりにも消え入りそうな声に、俺はその全てを聞きとることができなかった。まぁ別に呟いたということはそこまで重要なことでもないのだろうと思い、俺は軽く聞き流した。



「まぁでもあれだ、お前でも好きな男作ってみたらいいんじゃねえか?その調子なら小学生男子くらい、ころっと堕ちるんじゃねえか?」



 俺はふふんと鼻を鳴らして指をぴんと立てた。小鳥はその指を2、3秒見てから、俺の顔を見た。

 


「あのねえ……今どきの餓鬼は高望みするのが当たり前で、それを分かっているから女子も可愛く見られようとメイクだなんだするのは当たり前なの」



 はぁと溜息を吐いて目を閉じた小鳥。

 確かに、今思い返せば俺の頃もそうだったかもしれない。だけどそれでは子供としての可愛らしさが皆無ではないか。

 若いころから、自分の眉が気に入らない、自分の髪色が気に入らないと手を加えていたら、待っているのは後々つらいことばかりだ。

 


「だというのに、そんなのなーんもしてない、友達すらいないこの私に、一体誰が靡くっていうのよ」



 そこにはもう諦観の念しか感じ取れなかった。小学生にしてそこを悟ってしまうのは早すぎるし、実にもったいない。



「いや待て小鳥よ。子供には子供の可愛らしさってものがあってだな?何も見た目だけが大事ってわけじゃねえんだぞ?」



「いやいや、所詮見た目だよお兄ちゃん。何もお兄ちゃんだって不細工な女の子のこと好きにはならないでしょ?」



 いやまぁそれはそうなんだが……



「それが全てじゃねえっつってんだ。いいか?小学生の時点で可愛く見られたいからっつって化粧だなんてするのは結局は『大人っぽく見られたい』っていう意識があるからなんだよ。それってつまりはよ?若いうちから年くってるって言い変えてもいいことなんだよ。それってすごく勿体無いことだと思わないか?」



 小鳥は何度か目を瞬かせて、うんと一度唸った。



「それもそうかもね……でも、それでもやっぱり男子はそういった女子の方が好きなんだからそれに合わせるのは普通なんじゃない?」



 私はそんなことしないけど、と付け加えた。

 


「うーん……難しいとこだな……女子からしたらそれは諸刃の剣もいいとこなんだよ。俺としてはな?いくら年取ってもすっぴんが綺麗な女性の方が俺は好感が持てるぞ」



 いくら、といっても流石に限度はあるが。十~二十代くらいの女性は、すっぴんがひどくブサイクというのはいかがなものかと思う。それくらいの年齢ならまだまだ世間的にも、老若男女でいえば『若女』と呼ばれる立ち位置だ。

 つまりは若いと言われる立場なのだから、若くしておくのがせめてものマナーというか、若いからこそ若いと呼ばれるのであって、若いと呼ばれる立場の人間が老けていたら、それはもう『若い』という立場として置いておくのはいかがなものだろうかという話になってくる。

 だから、若いうちから自らを老いさせるような行為をするのは、愚行とも呼べるのだ。

 

 とは言えしかし、別に化粧が悪いと言う訳ではない。

 自分を着飾るために化粧をするというのは、限度と尺度と適度を弁えていれば全く問題ない。だからこそ『化粧』などという言葉があるからであり、その需要に応えて化粧道具も販売されているのだろう。

 しかし、それはあくまで自分の顔を変えるものではなく、自分の顔の見られたくない部分を隠すためだと思う。

 化粧の発端は大昔の魔避け、と言うのを聞いたことあるが、最近じゃあ『現代の人避け』、としか見れない。寧ろ魔を呼び寄せているのではなかろうかと疑ってしまうほどだ。


 

「すっぴんが綺麗って……それって結局、元々顔の造りが綺麗な子しか報われないじゃん」



「……だからそういうことじゃねーんだよなー。人ってのは人である限り、見た目以外に良いところがあるってもんだ」



「見た目以外に良いところ?性格ってこと?でもそれって難しいよお兄ちゃん」



「ん?なんでだ?」



 小鳥は片目を閉じて、左目で俺を見ている。



「だって顔が不細工な子は、自分に自信が無いからって性格まで卑屈になってって不細工になって行くからだよ。そして性格がブスなら顔もそれに比例して不細工になって行く。負のスパイラルだよ。ブススパイラルだよ」



 確かにな。精神的に落ち込んでいる奴の顔は、心なしか暗く見えるのは当然のことで、だからこそ卑屈な心でいつづければ顔もそれにつれて不細工になって行くのは道理だ。



「だけどよ?それって何もその人の性格全てが駄目だってわけじゃないだろ?その人だって何処かしら良いところがあるってもんさ。例えば犬が好き、とかそういう下らないどうでもいいことでも、意外と人ってのはそういうところを見ていたりする。だからこそ『あ、この人犬が好きなんだ。何だか意外』というギャップを持たれるかもしれん。それってとてもいいことだぞ」



 ギャップ萌えという言葉があるくらいだからな。それは間違いではないだろう。典型例を挙げれば、『素行不良のヤンキー。だけど実は子供好き』というのが分かりやすいだろう。

 普段悪いイメージしか与えていないから、ふとした時に垣間見た一般的に良いイメージと言うのが、その人の株を大きく上げることになる。

 それをひけらかすとその人の立ち位置は『ただの悪い人』にしかならない。多分ただ嫌われるだけだろうな。だけど、垣間見たと言う部分が大事であり、普段表に出していないからこそ人はそこに魅かれると言う者だ。

 



「でもさ?事実、結果論として見た目が良い人が救われてるじゃん?芸能人とかもそうだし」



 うーんさっきから小鳥の言っていることは正しんだよなー。正しいからこそこの納得をさせるのは難しいと言うか……それだけじゃない、別の見方もあるというのをこいつは知っておいた方がいい。



「それもそうさ。人ってのは、結局綺麗な者が好きだからな。それは何も人だけに留まらないぜ。美術と言うのはその言葉通り美を求めるものだ。つまりは自然美、造形美、機能美……他にもきっと色々あるだろうが、こういうの言葉があるってことは、人はそういったものが好きなんだよ」



「好きだから綺麗とか美しいとか言葉ができたんだろうね」



「あぁ、そうだな。だから顔の造りが綺麗な人が報われるのは当然のことなんだよ。そう考えてしまえばいい。一種の美術作品だと」



 軽々しく言った俺の言葉が気に入らなかったのか、小鳥は眉をしかめて俺を睨みつけている。



「美術作品って……仮にも私は、私の学校の人達を同等の価値にあるとは見ていないけれど、それでも常識的に『人』だっていう認識はしているしそれをこれから変えるつもりはないよ」



「当たり前だ。何も俺は本当に美術作品だと思えって言っているんじゃねえよ。ただそういう風に考えてみたらどうだ?っていう話をしているわけで」



「だから何?結局は変わらないじゃん。美しいから作品として映えるっての?醜かったら人目に触れることすら許されないっての?」



 どこか怒りを孕んでいるような語気で小鳥は言葉を紡いでいる。何だか見ていて痛々しくなってきた。何故小鳥はこうも悲観的になっているのだろうか。

 別にシスコンと言う訳でもこいつの肩を持つわけでもないのだが、小鳥は不細工と言う訳ではないと思う。寧ろ可愛い方に当たると思う。さきほど同じクラスの児寺鞠(こじまり)を見ても可愛いと思ったが、それと同等ぐらいの可愛さはあると思う。

 だと言うのにこいつはなぜそこまで気にしているのだろうか。お前不細工だな、とでも言われたか?小学生のそんな言葉なんてのは、大抵はかまってほしいだけの戯言だ。聞き流すのが一番だぞ。相手にしている方が馬鹿馬鹿しくなってくるほどだ。



「違う違う。醜いのは人目に触れてみて初めて醜いとされる。つまりは人目に触れなければそれは醜いとは言えず、仮に触れたとしてもあまりみていたくないなーと思う程度で、別にそこに存在すること自体を赦さないなどとのたまう奴はそうそういねえよ。そいつのことがどうしようもなく嫌いだっていう場合を除いてな」



 それに、と続ける。



「お前は別に醜くなんかねえよ。これは別に実の妹だから、とか、贔屓目で見て、とかそういうわけでなく、ただ純然たる事実として、小鳥は醜くなんかねえ」



 その言葉に小鳥は、顔を真っ赤にして握り拳をつくって頭上に掲げた。

 お、おいおい待て待て!折角自信付けさせようとしてんのにそれはねえだろ!!


 

 しかしやがて力なく垂れ、顔を俯かせてしまった。



 しばしの沈黙。掛ける言葉を探していたところで、ごにょごにょと音が聞こえた。耳をそば立ててみると、それは小鳥の声で、更に言うとあるひとつの言葉を紡いでいた。



「……ありがとう、おにいちゃん……」



 何だかむずがゆい。耳なんてそばたてなきゃよかったと思うくらいに俺は今恥ずかしい気分になっていた。きっと今の小鳥同様に顔が真っ赤になっていることだろうさ。


 なんだか空気がぽよよんとしてきた。慣れないなこういう空気は。



 そんな状態の中、何も話さずにただベッドに座っているだけの時間が流れた。実際どれだけの時間が過ぎたのか分からない。だけど俺からしたら、それはもう一時間とも一日とも言えるような、途方もない時間のように感じた。


 かのアインシュタインが、相対性理論を子供に分かりやすく説明するために、『楽しいことをしている時は時間が速く進むように感じ、つまらないことをしている時は時間が遅く進むように感じる。それが相対性理論』と言った。

 しかしそのシュタインの言葉通りなら、俺はこの時間を早く感じているはずなのだが、とても長く、遅く感じたのは一体どういうことなのかと抗議申し立てたい。

 いやまぁ別にそれ自体が相対性理論ではないし、ましてや俺がこの空気と状況を楽しいと思っているのかと言えばそうではないだろうし、まぁそこら辺はなんだか判別に困ると言うか答えを出してはいけないと言うかとにかく俺の頭の中はぐちゃぐちゃだ。



 そして唐突に小鳥は口を開き、先ほどの話の続きをしてきた。



「でもさ、……結局どうしたらいいのか分からないんだよね……どんなに普通に接してみようと思っても、『あぁ、こいつら馬鹿だなー』って思うことが多くてさ……だからたまーにそれをボロッと言っちゃって、嫌われちゃうんだよね。まぁ別に自分でも驚くほど傷つかなかったんだけど……」



 ぎゅっと脚を抱え込み、体育座りをして顔を埋める小鳥。

 その表情はとても物憂げで、その声はとてもか細かった。



「うーん……確かにな、そう思うことってあると思うよ。俺だって、中学のころから一緒の奴がいるんだけどよ?もう本当馬鹿だなーっていうかついていけねーっていうか、そんなんしょっちゅうというか見るたんびに思っているんだけどよ」



「それって友達なのお兄ちゃん……」



 あまりの俺の言い草に、疑いの念をこちらへ向ける小鳥。



「あぁ、認めたくはないしあんな奴を友達としたら、他の友達まで同列として扱うことになって何か申し訳なくなってくるけど、それでもあいつは悪いところばかりじゃない――あんなんでも俺は助けられたことあるんだ」



 なんだかんだいいつつ、自分は痛みに慣れているからと敵の攻撃をかばう盾を自ら名乗り出る。それはとても容易なことではない。

 確かに、あいつの能力上ダメージを受けなければ発動できないと言う条件が付いているが、それでもやはり前面から攻撃を受けることの恐怖が無いわけではないはずだ。

 だというのにあいつは文句を言わずにそれをやってくれる。馬鹿だ馬鹿だと言ってきたが、実際あいつがいないと俺らはもっと辛い体験をしてきたのではなかろうかと不安になるほどだ。

 まぁ、こんなこと本人には全く言っていないけどな。言ったら調子に乗るから絶対に言わない。億尾にも出さない。



「そう、つまりはそんな馬鹿だなーって思う奴でも、何処かしら良いところがあるわけで、たとえそれが見えなくてもそれが同じ社会で過ごす身として、一定の距離を置いて『仕方が無い』と受け入れることが大事なんだ」



 それが『友達』という立ち一ならばそういう関わり方で大方問題ないはずだ。



「お兄ちゃんの言いたいことはなんとなくわかったよ、でもね……私はまだそこまで大人になれないし、餓鬼だ餓鬼だ思って関わらない時点で私も餓鬼なんだろうし、だからこそ厄介と言うか友達としてかかわれないというか」



「まぁあんまり思い詰めんなよ。人間関係なんて大抵そんなもんだし、思い詰めてもどんどんネガティブな思考になって行くだけで、余計気分は重苦しくなる。だから深く考えずにぽけら~っとのほほ~んと気軽に話していればいいのさ。たとえそれが馬鹿らしいと思っていてもな」



 俺はその時桜のことを思い出していた。あいつはいつも呑気と言うか何も考えていないと言うか、それでも友達と仲良くやっているし、あいつはあいつなりに結構考えているところがあったりするのは今まで関わって分かってきたことだ。

 つまりは、



「自分だけが特別だと思うなってことだよ。誰だって何かしら抱えているものがある。それが友人関係だろうと家庭環境だろうと何だろうとだ。だけどそれを日常生活ではあまり表に出さずに、逆に友人と何気なく話すことで日頃の鬱憤を晴らしたり忘れたりしているんじゃねえかな」



 正直俺も、話していて初めて気付いた。

 というか今までそんなこと気にもしなかった。『自分だけが特別だと思うな』、か。まるで自分に言い聞かせているみたいだな。



 小鳥は目を見開き息を詰まらせた。目は泳ぎ瞼は瞬いている。そして何かが吹っ切れたようにからからと笑った。



「そっか……そうだよね、……私より頭いい人は一杯いる。だから私と同じこと、それ以上のことを考えていてもおかしくはない。だけどそうは思っていても、友達と話す時はなるべく気にしないようにしているんだ……そうすることで少しでも自分に掛る負荷を減らそうとしているんだね……」



 それがすべてではないだろうし、結局は俺たちの推論でしかない。自分の心すら曖昧で判然としないのに、他人の心なんか分かるはずが無い。ただその人を理解していると言うのは、飽くまで()()()()()()()()()になっているだけ。

 

 だけどそれでいいんだ。


 だって、相手も自分の心がはっきりと分かっていないのだから。

 自分はこう言う性格で自分はこういう時にこう言う反応をする。そういうのは結局は分かったつもりで、経験の集合体、統計によってたぶんこうなるのだろうと推測でき、そして大抵は当たっている、当たっているつもりになっている。だから『自分はこういう性格なのだ』と思うことができる。

 ならばそれを他人に当てはめてあげれば良いだけだ。自分ですら『自分』の理解に推測に推測を重ねるのならば、他人にだって推測で立ち向かってもいいはずだ。

 他人の理解と言うのはその推測の精度の違いであり、この場合逆にそこをよく理解できてしまうと上手く行動ができなくなる。

 

 自分が起こした行動、発言により、他人はこう言う反応をするのだろうなと分かってしまった時、その反応が悪い者だと分かった時、行動に移すと言うことはまずできない。

 そんなことはない、分かっているのならば別の行動を起こせばいいじゃないか。そう思う人もいるだろう。しかし、俺はその違う行動と言うのを思いつくことができない。

 およそどのアクションを起こそうが、他人にとって悪い反応を与えてしまうと分かってしまう時がある。そうなってしまうともう行動を移すことなどできない。どうしようもない。八方ふさがりである。


 しかし、そういう時こそ楽観的に、気軽にそういったことを気にせずに話しかけることにより、人間関係は上手く廻って行くのかもしれない。

 どのアクションを起こしても反応が悪い。それを理解している時人は酷く沈んだ顔をしていることだろう。そうしてそれは、うっすらと他人に伝わる。つまりはその状態で話しかけられれば、相手だっていい思いはしないはずだ。だけどそういったことを全く気にせず同じ言葉を発してみると、相手からしたら受け取る印象が違う筈だ。なぜならそれは、話している本人の表情が違うからだ。

 

 人間は視覚から得る情報は極めて多い、と言う話を以前したことがあるかもしれない。

 人は誰かから、屈託のない笑顔で話しかけられて、まず悪い気はしない。少なくとも、暗い表情で話しかけられるよりは極めて受け取る印象が違う筈だ。

 

 暗い顔で『呪ってやる』と言うのと、明るい顔で『呪ってやる』と言われるシーンを想像してほしい。


 暗い顔で言われた場合は、極めてその言葉の信憑性が高まってくる気がする。なんだか本当にこの人は私のことを呪いそうだと。

 しかし、明るい顔で言われたらどうだ。全く何を馬鹿なことを言っているんだHAHAHA~とこちらも笑い飛ばすことができる。

 つまりはそういうことだ。視覚から得る情報として、人の表情と言うのは、人の心すら左右する大事な部分なのである。だから深く考えてはいけない。笑顔で、気楽に、桜のように頭に一面のお花畑を咲かす勢いで人に話しかける。それが大事なんじゃなかろうか。



 いやまぁ一面花畑は流石にまずいが。



「そうそう。まぁいきなりそんな事を言われても難しいだろうけどな。頭では分かってはいても実際行動に移すとなると動けなくなる。世にこう言う奴等は『頭でっかち』とか、『頑固者』とかいわれたりするんだけどよ、そいう奴等は得てして友達が少ない。きっと俺がお前の兄である限り、俺もそのたぐい何だろうとは最近思い始めている」



 うんうんと数度唸ってから小鳥をちらと見た。さきほどまでの暗い表情は何処へやら、楽しそうに笑っている。



「そうだね。お兄ちゃんは頑固者だ。そして私が妹である限り頑固者なんだろうね」



 ははっと笑い膝をぎゅっと抱きしめた小鳥。やがてゆりかごのように体を前後させ、勢いがつきすぎたのか「おっ~っとと」とか言いながらベッドへ倒れ込んだ。



 きっと児寺鞠が言っていた『少し気になる』と言う部分もここら辺に起因しているんだろうし、何だかこの調子なら心配はなさそうだなと俺は思った。

 


 

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