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Sleep-Walker~夢と現~  作者: 桜椛
第1章:微睡みの科学者
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2話  胃もたれするわ

 

 校門から約50m、校庭を突っ切り正面玄関へと向かう。

 端には、何やら大仰なトラックが幾つも止めてあった。何だ? 今日の健康診断と関係でもあるのかな?


 正面玄関入るとすぐに1年の下駄箱があり、廊下を挟んで2、3年の下駄箱がある。

 桜、三浦、俺は各々自分のクラスの下駄箱へ向かい上履きを履く。そこから向かって左、掲示物が貼ってあるボードを横切り1年の教室がある2階へ目指して上る。

 急な坂を上った後の階段というのはひどく苦痛である。ふくらはぎパンッパンです。



「それじゃ、俺はここで」



 そう言って爽やかに教室へ入っていった三浦。去り際まで決まってるのはあれか? イケメンだからか? お?



「あぁ、じゃぁな」


「フウ君じゃぁね〜」



 フウ君? 突然の聞き慣れない呼び方に困惑した。だがまてこいつの適当なあだ名と考えれば……三浦「風」人だから「フウ」君ってことか。



 俺らは三浦を見送ると、教室をさらに1個飛ばして1年3組の教室へと入る。

 既に生徒達は集まっていて、友達と話したり、漫画を読んでたり、鞭を振るい振るわれていたりあぁっ! 音楽を聴いていたりんんっ! 机に突っ伏していたりとそこです! 各々の朝を楽しんでいた。



「って朝から何やってんだ悦受(えつじゅ)!!」



 教室の後ろで、上半身裸で四つん這いになって嬌声をあげているこの男の名は、立杉悦受(たちすぎえつじゅ)。本当に認めたくないがこれでも中学2年の時からの付き合いだ。



「はぁ……はぁ……よぉ雷架、おはようさん」


「おはようじゃねえ、公衆の面前でなにやらかしてんだお前は」



 悦受は気持ちの悪い笑顔を浮かべながら、荒い吐息を漏らしている。じんわり浮かぶ玉の汗がよりリアリティを増していて気持ちが悪い。



「公衆の面前での鞭打ち、羞恥プレイ最高だぜ!! はぁあんっ!?」



 右手をグッと握って言うも、しなる鞭が悦受の背中を叩く。すごい痛そう、ほら赤くなってるし。



「はっははっははは! 黙りなさいこのエテ公! 誰の許可を得て酸素を吸っているのかしら? 二酸化炭素を吸って酸素を吐きなさい!」



 それ植物!? 

 長い髪を揺らしながら、眼鏡を光らせ、朝から顔面を悦びに満たし鞭を振るい続けている女性徒。

 誰だ? こんな気性の激しい人居たっけ?



「レイカ様早くも格好の獲物を見つけたよな」「楽しそうで何よりだな」「俺もやられたい」



 クラスの男子がひそひそと話している。レイカ様?

 俺はスススっと悦受とレイカ様と呼ばれた人から離れ、こそこそ話している男集団へと近づいた。



「なぁなぁ、あの御方は誰なんだ?」



 つい御方とか言っちゃった。

 短い髪の毛を整髪塗料でセットし、漫画のようなツンツン頭の男子が答える。



「出会って間もないから知らなくて当然だな。レイカ様、秋春冷夏(あきはるれいか)さんだよ。俺あの人と同じ中学だったがあぁやってクラスの男子を虐めては楽しんでるのさ」



 若干薄い目をして男子生徒は語る。

 いや怖すぎるだろ!? というか今更ながら鞭はどこから!? 私物ですかレイカ様!?



「はっはは、お前もやられたきゃ頼んでみることだな」


「誰が頼むかっ!!」



 何を言い出すんだこの男は! 俺をあんな特殊性癖をもった変態と一緒にするな!



「はいは〜い、みんな〜出席とるよ〜☆」



 するとそこで、教室の前の方の扉が開いた。入ってきたのは、髪の毛を派手に縦ロールにした女教師だった。

 何故か鬱陶しいくらい無駄に高いテンション、無駄に高い声なのは、キャラ作りだろう。



「あ、はるるんおっはよー!」「はるるんかわいいー!」「はるるん今日もいいお胸!!」



 おい最後。

 はるるんと呼ばれた教師は右手を頬に当て、笑う。



「こらこら〜そんな褒めても成績はあげないぞ〜☆ 後男子〜セクハラで訴えるぞ〜☆」



 笑顔で怖いこと言うなこの人。


 近江遥(おうみはるか)。我が1年3組の担任であるこの人は、見た目と中身の若さとは裏腹に、31歳独身☆というなんとも痛々しい存在と相成ったのである。



「扶來く〜ん? 今失礼なこと考えなかった〜?」



 ひぃい! 心の中読んだ!?

 先生が現われたことにより、クラスの面々は自分たちの席へ座る。悦受もレイカ様とやらも、ちゃっかり騒ぎを収めて自席へと向かっている。



「はいは〜い、みんな〜今日は健康診断で〜す☆1、2、3組は〜引率の人に引かれて叶訪(きょうと)総合健診センターへ行ってもらいま〜す☆」



 ぴーんと人差し指を立てて、窓の方へ投げかける。まるで星の軌跡が見えるようだ。

 まぁそんなことはどうでもよくて、先生は語尾に必ず『☆』をつけて話すもんだから内容がこれっぽっちも頭に入って来ない。



「ということでみんな〜引率の人を待たせるのも行けませんので〜とりあえず校庭に行きましょう☆」



 言うや否や、皆を置き去りにするかのように教室から出て行く遥先生。突然のスピード感について行けず呆けた顔をしていた一同だったが、ハッと誰かが息を飲んだのを皮切りに立ち上がる。





 校庭に出ると、他のクラスの連中もぞろぞろと出てきた。

 あ、イケメンもとい三浦だ。ってことは1組かあそこの集団は。やば目合っちゃった。

 三浦は右人差し指と中指を二本、ピッと立てて微笑んでくる。おまえはどこのトレンディ俳優だ!




 校門まで行くと眼鏡を掛けた痩身の男がいた。明らかに着なれていないのが伝わってくるスーツを身にまとい、若干ぼさっとした頭をボリボリとかいている。清潔感という点ではあまり信用がおけないな。

 


「はい皆さん、おはようございます!」



 しかし男はそんな印象とは裏腹に爽やかな明るい声で挨拶をした。だらしなさは変わらず伝わってくるが引率の立場として自覚があるのだろう。



「今日は私が皆さんをご案内します、児守周一(こもりしゅういち)です! よろしくお願いします」



 別に今後会う予定も無いたかだか引率は名乗らなくても良いんだがな。どうせこっちも覚える気ねえし。



「それじゃぁみんな〜☆くれぐれも〜く・れ・ぐ・れ・も〜失礼のないようにね〜☆」



 遥先生は余所の人がいるせいか、俺らに見せる笑顔の倍以上口角を上げていた。

 


 俺たち約100人は、児守さんを先頭にぞろぞろとその後を着いていく。

 校庭まで来てくれれば良かったのだがそうもいかなかったらしく、俺らは学校を後にする。2列に並んで先生に着いていく様は宛ら遠足だ。少しの気恥ずかしさがあるな。

 学校から暫く北へ歩くと、小高い丘等があり自然豊かな風景が広がっている。その中腹程、駐車場に何台ものバスが留められていた。

 それぞれの組毎にバスに乗り、目的地である叶訪総合健診センターへと向かう。

 

 叶訪はこの夢咲から電車で二駅だが、距離的にも地図的にもそう遠くない。そのため電車で10分、バスでは20分となる。只今の時刻8時30分、9時前には着く計算だ。



 こんなバスまで引っ張り出して健康診断ねぇ。生徒の健康をそこまで考える学校だったのか……? 母さんや父さんの時代では特にそんな話は聞いてないが。

 

 叶訪……父さんが死んだ場所……


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