18話 晴天
ジリリリリ。ジリリリ。
「うぉっ……!?」
俺は目覚ましの音に驚きそれをすぐ止める。決して目覚ましの音で目覚めたわけではない。
実際には、一昨日から寝れていない。正確にいえば体は確かに眠っている。
今も気怠さを感じているが、精神的には一昨日から眠れていない。ノンストップで今日の朝を迎えている。
あのゲーム世界から帰還してすぐ、目を開ければ朝になっているのだ。気が休まらない。
「7時か……」
この時間が本来の俺の起床時間だ。
日中よりも夜の方が密な時間を過ごしている……過ごされている。
とはいえ俺は学生だ。時間が決して待ってくれるわけでもないので日常は当たり前に始まってしまう。気乗りはしないが準備をしなければいけない。
「雷架……元気ないけどどうしたの?」
支度を終えた俺は一階へ降り父さんへ挨拶を済ませる。朝食を食べようとリビングへ向かうと、いつもは必ずおはようと言ってくる母さんが、開口一番元気が無いと言ってきた。
きっと精神的な疲れが顔に出ているのかもしれない。それとも、母親だからだろうかそういうのも気づいてしまうのか。あまり心配はかけさせたくは無いんだが。
「おはよう母さん……ちょっと質の悪い夢を見ただけだよ」
「そう?……あまり無茶はしちゃダメよ?」
「あぁ……ありがとう」
そういって麦茶を飲みおかかのおにぎりを頬張る。おいしいはずの食事もあまり味がしない。
食事を済ませ時間を確認する。そろそろ出るか……
鞄を肩に下げ玄関を出ると、最早いつも通りと言ってもいいくらいに、タイミングよく桜が出てくる。
「舞園さん、おはよう」
それに気付いたのか、笑顔な桜。
「おはようライ君!」
こいつには昨日……正確には今日なのだが……助けられた。
感謝してもしきれない。まさかあそこまで根性のある奴だとは思わなかった。
俺はこいつに対する評価を少し改めた方がいいのかもしれない。
「舞園さん……昨夜はありがとう。本当に助かった」
そう思ったので素直に感謝の言葉を口にしてみた。突然の事に驚いたのか桜は大きな目を更に見開いた後、優しく微笑む。
「ううん。ライ君のおかげで皆が助かったんだよ」
俺は何もしていない。あくまで皆が助かる道標となっただけに過ぎない。寧ろ敵に操られてばかりで役立たず、足手まといもいいところだった。
「ありがとう……本当にありがとうな……舞園さん」
「えへへ、私は今こうやってライ君と話せているだけで嬉しいよ!」
俺は何処となく気恥ずかしい気分になりながら、桜の顔を見た。
桜は笑顔でこちらを見ている。俺はその笑顔に釣られて笑ってしまう。
そう、これが日常。俺たち高校生の当たり前の日常。取り戻さなければいけない、この幸福を。
「雲一つない、綺麗な青空だな」
「ボカボカ!?初めての対人戦!」
「クロック三兄弟!ここに参上!」
「扶來さん!助けて下さいですの!」
「あっはは。一体何をそんなに怒っているんだい?」
「何してんだよてめぇえええええええええええ!!」
世界を受け入れた主人公。それを良しとしないとある男。
『Sleep-Walker~夢と現~』
第二章 常闇の闖入者
精神的に眠ることを許されない者たちに、果たして安眠は訪れるのだろうか…




