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聖女 3

もう少し、書かせていただきます


ギル王子視点です

父が突然召喚の儀を行うと神官と王族に言い出したのは一年前の今日だった


前回行われた儀式は、今から150年も前の事で、召喚に使われる陣も呪文も何一つ分からない中で召喚の為の作業が行われた

召喚の陣・呪文は、昔の文献を元に神官が、召喚の知識を広めていく


何故突然召喚などするのか? 

それは、魔王と魔族がここ最近になって活動を活発化させているからだ

魔王の発見は、数年前に見つかってはいたが、今回の魔王は消極的だったために警戒するだけになっていた

しかし、つい一年と半年前に魔王・魔族領からほど近い小国が魔王の手により陥落した


その情報がわが国に届いたのはそれから数ヶ月後のことだ。


人間と魔王の戦いは今まで二回あったが、そのどれもが異世界の聖女によって収束させられている

なぜ、異世界の聖女によって収束出来ているのかと問えば、魔王の負の魔力に張り合えるのは正の魔力しかないからだ

異世界に渡りこちらに来た人間は、魔方陣によって正の魔力を有することが出来る


だれが、そんなような魔方陣を作ったのかは分からないがすべては、聖女の手にかかっていた



聖女召喚、聞こえはいいが、本質は生贄の召喚であった

今まで、二回召喚された聖女は、そのどれもが最後魔王と相打ちで死んでいた


だから、3回目の聖女も死ぬのだろう

だが、哀れの目で見てはいけない

聖女に逃げられてしまえば、もともこもないのだから



召喚の儀が始まり、聖女がこの地に舞い降りた

私は、王子として聖女の案内役をする事になっている


さぁ、出番と陣のそばに来てみれば聖女は、布団とともにまだ眠っているではないか

コイツが? こんな聖女が人間を救える? あやしいものだ

さらに、聖女が起きるや否や俺の言葉を無視して、攫うだとかおかしな宗教団体だとかいい始める始末


まわりの神官たちも困惑気味でいた



しかし、聖女の能力、つまり魔力が相当な物だと言うのはラッキーだ

聖女の魔力の使い方をしたラミダは、彼女の魔力的素質を大いに評価していた


通常、魔力と言うものを感じとるには魔導士でも、一ヶ月もの歳月が必要なのだ

それを彼女は二日でやり遂げ、残りの五日を魔術を使う練習に専念している


しかし、ラッキーとアンラッキーと言うべきでもある


文献によると、二番目の聖女は魔力を掴むのに、通常どうりの一ヶ月がかかっている

魔術に関しても同じで、魔導士が一つの術を使えるのにかかる時間は、一週間

聖女も一週間かかったと書いてあった


つまり、聖女

三番目の聖女は、明らかに以上な魔力の使い手だ


俺たちも、文献をたよりにここまできたので、最後には相打ちかもしくは倒した後に死んでくれるだろうと思っていた

しかし、今回の聖女はそうはいきそうない

聖女が元の世界に帰れる手段など我々はしらない

だが、もしすべてが終わり、元の世界に戻れないと知った聖女がどのような行動に出るかわからない


そこで、神官や王と相談し、聖女を魔王もろとも闇に葬り去る事になった

俺の国には、古くから伝わる神具がある

あらゆる物を、闇の彼方へと葬り去る物だ


しかし、これを使うには王族の血筋の者にしか使うことはかなわない

なので、俺も、旅に参加することになる

しかし、王子一人では危険とあと四人、魔導士のラミダ、サラサ、弓使いルーク、そして回復にリーネが参加することになった


つまり、この四人は、聖女の魔王討伐の為の者たちではなく俺の護衛の者たちだった

聖女には、俺たちのことを魔王討伐の仲間と偽って話してあった


彼らには、なるべく聖女と親交を深めないようにと伝えている、情が移れば始末するときに感情がそれを阻む



そして、魔王と聖女の討伐の旅が始まった



旅の最中に、だんだんと問題が起こり始めた

聖女が、壊れ始めてきたんだ

彼女は、人を殺したことが、生き物をこの手で殺したことがないらしい


聖女は、初め一人殺し、また一人殺し、だんだんと体の精気がなくなっていった

このまま行けば、魔王と戦う前に聖女が死ぬか魔王を倒せないで死ぬ可能性が強くなっていった

魔導士ラミダは、女は恋人の為なら何でもできるなどと、俺に恋人役を演じろと言い出し始めた


そこで、俺は初めて聖女の顔を見たことがない事に気がついた


彼女は生贄だからと、彼女と壁を作っていた自分がいたことに気がついた


泣かなくなった聖女、いつも夜になると月を見上げているようになった彼女


彼女は、最初のころは表情豊で笑うこともあったが、今は笑わずひたすら魔族を殺していく無表情な顔になっていた

目も死んだような目になっていた


助けたい! 初めて彼女を見て思った俺の気持ちだった

けして、美しい顔立ちではないが、俺は彼女に好意を抱き始めた


だが、ここで俺が好意をもって彼女を生かす道を選択すれば、そしてもし元の世界に帰れる手段がないと知った彼女が、彼女を召喚した俺の国を憎み破壊する行動にでたのなら、責任を俺は取ることはできない


だから、俺は王子の仮面をかぶって彼女を、聖女を騙すことにした

偽りの恋人を演じた

そうすると、だんだんと彼女の表情も明るくなってきて、元気に笑うようになった


彼女がうれしそうな顔をすればするほど、俺のこころは悲しみにそまる

彼女が俺に甘えれば、俺は心臓がえぐられたような痛みが走る


頼む、俺にそんな顔を向けないでくれ!!

俺は、お前を騙してるんだから・・・・・・



運命の時が来た


魔王と対峙する彼女が見える

必死に聖剣を振りかざし、魔王を殺そうとする彼女が見える


そして、そんな必死な彼女に俺は気付かれないように神具を発動させた


魔王の城は、神具で作られた闇の球体に飲み込まれいく


時間が過ぎていく

闇の球体は、魔王の城を取り込むと収縮を開始した


小さくなっていく球体を目の前で見ながら、俺は泣きそうな目をこらえながら彼女の最後を見送る




そして、球体はもう俺の手の拳ぐらいの大きさになると、弾けるようにして爆発し、この世界から消えていった

残ったのは、五人だけ


最後の最後まで利用した聖女はもう、この世界には存在していない




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