聖女 2
神殿と呼ばれる建物を出た私は、山の頂上から見た大都市をみて絶望を感じていた
そばにいた美形な彼から見たら、あの都市を見て感動している私という姿見見えたのだろう
「さ、行きましょうか。 素晴らしいのはこの王宮も同じですよ」などと、言った
でも、そんなんではなかった
考えて考えて結論づけた、ここは日本ではないのだと
いくらなんでも、あの大都市を宗教団体が作れる分けもなく、ましてやあんな大きな都市が知られていないと言うことはありはしない
仮にここが日本だとしても、あれほど美しいレンガで作られている街が観光名所にならないわけがない
つまり、ここは日本ではない
そう、日本ではないだけかもしれないのだ
往生際が悪い私は、次にここがどこか別の国だと思うことにしていた
だからか、思っていた
いつかは、絶対に日本に帰れると。
でも、次の日には私の希望はあっという間に打ち砕かれたんだ
救世主、そんな言葉を次の日、異世界2日目からよく言われるようになった
私に話しかけてきた美形な男は、この国の第一王子だと昨日の夜、部屋に入るときに言われた
しかし、私は「へぇ」としか言わず、王子は部屋を出て行き私は部屋で今までの出来事を整理した
この国の王子と言う奴が言った、ここは異世界などという馬鹿げた言葉を否定する私なりの答えを見つける事にした
眠くはない、先ほどまでずっと寝ていた訳だから、考える時間はあった
この世界を私なりに否定する答えを求めた
そして見つけた
でも、そんな浅はかな私の希望もあっさりと打ち砕くかのように、次の日の王との謁見で見ることとなる
魔法
おとぎ話で、たまに魔女などが使う不思議な力がこの世界にはあった
私たちの世界にない、魔法というものが有ってしまった
〈私の希望は、異世界などというものを証明することは誰にもできない、だからここが私の世界でないと証明できるものは何もない。 私は他の国に拉致されただけなんだ〉
だから、戻れるんだ。 私の家に・・・・・・
王は言った
「魔王は、強大な負の魔力で我々人間を殺している。 負のエネルギーは人間に宿る魔力では太刀打ちできない、だから貴殿が必要なのだ。 負の魔力と相反する魔力をもつ聖女、つまりそなたがだ」
つまり、私に魔王なるものを倒すのはお前で倒せるのもお前で倒さなくてはいけないのもお前だと
この世界になにもしてやる義理はないはずの私に、王はそういった
でも、そこで疑問が生じる
私にそんな力があるのかと? いままでのんびりと平和の世界で過ごしてきた私にそんな力があるのかと
叫びたかった、そしてふざけるなと言いたかった
でも、でもだめだった。 直感が、私の直感が継げている、何もしゃべるな
逆らえば殺されるのだと、生きられなくなるのだと
そして、魔王を倒すための準備が始まった
私は、自分の魔力を掴むため魔導士のコーチの元、一週間と短い期間で寝る間も省いて勉強させ、られた
コーチをした魔導士は、20代ほどの若い女性魔導士で、私に分からないことはやさしくではなかったが、分かるように教えてくれた
私をここまで連れてきたこの国の王子も、一週間の間に何回も私と話をしてくれて二人とはすぐに仲良くなった
そこでしったのは、何故言語が違わないのかと言うのは、私を召喚する時に魔方陣に組み込まれていたもので、完全翻訳機能が私には備わっているかららしい
魔王に相反する私に魔力は、正の魔力。 光の力なのだそだ
人間は、誰しも魔力を持っているが使えるのが四大元素、火・土・水・風の魔力だけだ
聖女の私は、光の魔力・一般知識では正の魔力
魔王の魔力は闇の魔力・一般知識では負の魔力
魔王を殺せるのは聖女の正の力であり聖女を殺せるのは魔王の負の魔力だけだ
これまで、魔王は2度この世界に誕生する、そしてそのどれもが異世界の聖女によって葬られているのだそうだ
そして、聖女は役目を終えると(つまり魔王が死ぬと)負の魔力を吸収して、異界への扉を開く
胡散臭い話だと思うけど、そんなような話を私は聞かされ信じてしまった
準備が整った
私は魔力を完璧にないにしろ操ることに成功していた
そして旅立ち
魔王討滅の為に集まったのは、魔導士が私をコーチしてくれたラミダ、剣士には王子のギル、遠距離攻撃に魔導士のサラサと弓使いのルーク、回復には王女のリーネの6名の旅となった
多くの国民に讃えられながら私たちは最初に、この国から程近い小国カリアドに向かう
旅には徒歩と言うはけではなく、馬車で向かった
途中、山賊に何度も遭遇しそして、私も人を殺す
初めての日は、泣き崩れた
辛い、苦しい、死にたい、ごめんなさい
だれでもいいから私を責めてほしかった、なんで殺したのと責めてほしかった
だけど、答えは決まって「よく殺したな、次も殺していけよ」
なんて残酷な言葉、でもこれしか、この言葉しか誰もかけてくれはしなかった
そして、旅は順調に進み、順調に私をこわしていく
4度目の山賊との遭遇には、すでに殺しというものに私は慣れてしまっていた
殺しても、殺してもなにに思わなかった
そんな時、そんな私に声をかけてくれたのがギル王子だった
彼は言う、「ごめん、ごめんな。君を傷つけたいわけではない、悲しませたいわけではない。でも俺は君を傷つけることしか与えてやれない」
悲しそうな彼の言葉は、私の心を暖かくしていった
私は、こんなにも思われているのだと
旅が進に連れて、魔族が現れ始めた
魔族は、人間の形をした生き物だった
彼らの言葉は、完全翻訳機能がついている私にすら何を言っているのか分からない言葉だった
2つ彼らが人間と違う物があった、一つは言語、そして一つは瞳だ
人間は、私と同じ黒目しかいない
しかし、彼らの目は赤いのだ
血塗られた赤なのだ
私は毎日のように魔族と殺し合いをした
魔王が近くにいる証拠だった
そして、ついに魔王の城にたどり着く
奇跡的に、これまでの旅で傷ついたり死んだりしたものはいない
そして、これまた奇跡的に、ギル王子は私の恋人になっていた
もし、もし魔王が死んで元の世界に帰るとしてもギル王子も来てくれると言った
うれしかった、泣いた
そして、私は今魔王の前にいる
目の前の魔王は若い20歳代の男だった、もう決着はついたようなものだった
彼は腹を刺され、もう目も朦朧としている
私は最後の情けと、首を切り楽にさせようと聖剣を振り上げた時だった
「何故だ、何故我々が負けねばならない」
魔王が、始めて口を開く
魔王は魔族と違い、人間の言葉を話せるようだ
私は言った、お前たちが人間を死に貶めるからだ
「死? 人間? ・・・・・・そうか、お前は知らないのか。我らの歴史を」
そして、魔王は目を私に向けて言った
「・・・・俺たちも、人間なのだ。 差別され続けている人間なんだよ」
血を吐き出しながらも、しゃべり続ける魔王
この世界には、人間とよばれる種族がいる
そして、長い歴史の中、人間はまた人間の中に格差を作り差別を作る種族だった
人間の中には、黒の目を持つものを上位種、赤の目を持つものを下位種としていた
上位種の人間は、下位種の人間を差別し奴隷のように扱った
しかし、長い歴史の中で下位種の人間の中にそれは違うのではないかと叫ぶ男が現れた
1人目の魔王であった、彼は下位種の人間を率いて上位種の人間の国を倒す
そして、叫ぶ
「人は平等だ、何故我々は目の色だけで差別されねばいけない」
当然、下位種の人間が歯向かったことに怒り、上位種の人間は戦う
しかし、初めに反旗を起こした男は、神から力を授かっていた
絶対的な闇の魔力だ、闇を制御するための魔力だった
上位種の人間は、意味の分からない力を使う人間を恐れ、彼らと同類と言うのを消し去り
彼らを新たな世界の敵、魔王と魔族といい始める
そして、人間として悪の根源の魔王を倒すため別世界の扉を開き生贄を召喚する事を考える
そして、最初に召喚されたのは、15歳の少女だった
そして、物語は彼女と同じように進む
おかしいな、とは思っていた
だって、魔族と人間の違いが瞳の色だけだなんておかしいと思っていた
しかし、彼らも人間んだったなんて、差別されていただけの人間だった何て・・・・・
「時に、お嬢さん。 君の名前はなんと言うんだい?」
最後の力を振り絞り喋る人間の青年がそこにいる、魔王ではなく人間の青年だった
「わ、私は・・・・」
わたしは・・・
「なんで、泣くなよ私、泣かないでよ」
気がつくと目から涙がこぼれていた
だって、名前が、名前が思い出せなかった
そういえばそうだ、もう一年以上呼ばれていない名前
仲間からも、なんという名前かも尋ねられなければ呼ばれることもなかった名前
そうか、私は・・・・・
「君は、使い捨ての聖女なのか・・・・・」
仲間はもういない、この場所にはいない
時期にこの空間は闇に飲み込まれ消え去るのだから
仲間は、もう私を置いて帰ってしまった
「いえ、彼らは、もともと仲間ではなかったわね・・・・・」
そして、最後に見たのは魔王の冷たい死体だけだった