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まるで岩みたいだ。隆々とした逞しい体躯。ドアを開いた先に待ち受けていた"ナイト"と呼ばれるその男。
何も言葉は交わさずに、静かにその男の後ろに着いていった。
その男の背中に見えるのは自信。これから闘うであろう俺に、背を向けながら、まったくこちらを気にする様子も見えない。たとえば俺が、後ろから襲いかかることも可能性はあるだろうに。
ただ、お互いにわかっていたのだろう。交わした言葉は一瞬でも相容れないことを。そして、正々堂々と闘わなければならないことを。
中心街を外れた倉庫街。きっと昼間はトラックや、人であふれかえるだろうに、今では人の気配すら見えない。
ずっと無言で歩いていた背中が止まり、こちらにくるりと振り向いた。
正面から見据えられると、なおさら威圧感を感じる。
『…正直、失望したよ。あいつが組織を捨ててまで選んだものは、こんなドン・キホーテだったとはな。君にもわかるだろ?こんな闘いなど意味をなさないことを』
挑発的なセリフは、緊張感を高めていく。まるで酸素が薄くなったかのように、張りつめていく温度。
「それでも彼女は俺を選んだ。お前や組織ではなく、俺を。確かに、俺はお前には勝てないだろう。だけど、それでもやらなきゃならない時もあるだろ?それとも、お前は弱い奴とばかり闘ってきたとでも?」
吐き捨てるように舌打ちをして、蛇が鎌首をもたげるように、こちらを睨み付けた。
『きっと後悔するぞ。その減らず口を今すぐに塞いでやる』
怒りを露にして、今にも襲いかかろうという気配。
まさに火蓋が落とされる瞬間に、滑り込んできた車のヘッドライトに照らされる。
いったい誰だ?
そちらを見ようにも眩しすぎて、手をかざしても見えない。
一方、ナイトの方も同じようで、知らされていない様子。
静かに扉が開き、降りてきたのは初老の男。
見覚えなどない。
ちらりとナイトの方を見やると、怯えた様子で下を向いていた。
…誰だ?
あのナイトを震え上がらせることのできる人物。
単純に考えて、一人しかいない。
「お前がボスか」
ずっとリコを苦しめてきた人物。全ての悪の正体。こんな毒気のない爺さんが…と思ったのは、目を見るまでだった。
忘れもしないあの目。全てを憎み、自分以外の人間など信用しない、凍らせるような目。
それが更に確信となった。




