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どれくらい眠ったのだろうか?
左腕に残る痺れは存在の証。俺が目を覚ました時、彼女はまだ静かに寝息を立てていた。
瞼から微かに残る涙の筋。きっと…夢の中でさえも、許されることはなかったのだろう。
起こさないように慎重に腕を引き抜いて、少し離れてタバコに火をつけた。
静かな室内に響き渡る石が擦れる音。ゆっくりと深く煙を吸い込み、またゆっくりと吐き出した。
期間は、たった数日間でしかないが、指折り数えても足りないくらいのいろんな出来事があった。泣いたこと、笑ったこと、お互いに許しあったこと。
それを噛み締めるように、一つ一つ思い出しているうちに、タバコが短くなって。結局、ほとんど口をつけずに灰になったそれを、灰皿に押し付けた。
一体これからどうすればいいのだろう。"幸せにする"と言ったものの言葉は漠然としすぎていて、具体的に何を為すべきかまったく不透明で。
ただ一つだけ、リコには…自由になってほしかった。雨の中でも踊れるくらい自由に。
彼女の心の縛りをほどくには、何をすべきなんだろう…。一緒にいるだけじゃきっと足りなくて、でも言葉にするのはどこか違っているようで。
ひどく不安でどうしようもなさに襲われる。
うつむいて下を向いていると、がさがさと言う音を立てて、彼女も目を覚ました。
『…おはよう』
「…おはよう」
どんな言葉より大切な言葉を互いに交わして、存在を確かめる。
その視線の先には何が映るのだろう?
何度も否定された話題。頭によぎるのは、ただそれだけ。素人が迂闊にふみこんじゃいけない闇。
だけど…だけど、俺はリコを救いたいんだ。
踏み込んだ先は、100m遥か上空に張られた細い綱かもしれない。もしくは、いきなり崖かもしれない。
だとしても…本当の意味で救うというのは、きっとそういう事の連続だと思えて。
手助けはできる。簡単にいい人にだってなれる。だけど…救うということは…本当に難しいんだ。
『…そんな思い詰めた顔しないで話してよ…』
寝起きの少し潤んだ瞳のまま、まっすぐに俺を見つめる。
「…うん…これからのことを考えていたんだ。リコを自由にするにはどうしたらいいんだろうって…」
その視線から逃げるように、宙を見て、もう一度タバコに火をつけた。
ゆらゆらと揺れる煙が、細く立ち昇り、霧散する。静かに、消えていく煙。
音が聴きたい。なぜかそう思ったんだ。




