表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
81/101

-81-

どれくらい眠ったのだろうか?


左腕に残る痺れは存在の証。俺が目を覚ました時、彼女はまだ静かに寝息を立てていた。


瞼から微かに残る涙の筋。きっと…夢の中でさえも、許されることはなかったのだろう。


起こさないように慎重に腕を引き抜いて、少し離れてタバコに火をつけた。


静かな室内に響き渡る石が擦れる音。ゆっくりと深く煙を吸い込み、またゆっくりと吐き出した。



期間は、たった数日間でしかないが、指折り数えても足りないくらいのいろんな出来事があった。泣いたこと、笑ったこと、お互いに許しあったこと。


それを噛み締めるように、一つ一つ思い出しているうちに、タバコが短くなって。結局、ほとんど口をつけずに灰になったそれを、灰皿に押し付けた。



一体これからどうすればいいのだろう。"幸せにする"と言ったものの言葉は漠然としすぎていて、具体的に何を為すべきかまったく不透明で。



ただ一つだけ、リコには…自由になってほしかった。雨の中でも踊れるくらい自由に。



彼女の心の縛りをほどくには、何をすべきなんだろう…。一緒にいるだけじゃきっと足りなくて、でも言葉にするのはどこか違っているようで。



ひどく不安でどうしようもなさに襲われる。


うつむいて下を向いていると、がさがさと言う音を立てて、彼女も目を覚ました。


『…おはよう』


「…おはよう」


どんな言葉より大切な言葉を互いに交わして、存在を確かめる。


その視線の先には何が映るのだろう?


何度も否定された話題。頭によぎるのは、ただそれだけ。素人が迂闊にふみこんじゃいけない闇。


だけど…だけど、俺はリコを救いたいんだ。



踏み込んだ先は、100m遥か上空に張られた細い綱かもしれない。もしくは、いきなり崖かもしれない。


だとしても…本当の意味で救うというのは、きっとそういう事の連続だと思えて。


手助けはできる。簡単にいい人にだってなれる。だけど…救うということは…本当に難しいんだ。



『…そんな思い詰めた顔しないで話してよ…』


寝起きの少し潤んだ瞳のまま、まっすぐに俺を見つめる。


「…うん…これからのことを考えていたんだ。リコを自由にするにはどうしたらいいんだろうって…」


その視線から逃げるように、宙を見て、もう一度タバコに火をつけた。


ゆらゆらと揺れる煙が、細く立ち昇り、霧散する。静かに、消えていく煙。


音が聴きたい。なぜかそう思ったんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ