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必死に自分を押し殺すことで、保ってきたギリギリのバランス。常に断崖絶壁から片足をのばすように。
壊してしまったのは、俺かもしれない。だけど、俺は本当のリコが欲しかったんだ。それはエゴと言われればそれまでの話だけど、自分をコントロールできるようなら、愛とは呼べないのではないか。
狂おしいほどの感情だけが、今の俺を突き動かしているんだ。
冷静でなんていられない、と叫んだリコ。きっと彼女自身も戦っているのだろう。表面と深層で。
こんな時に不謹慎だけど、どこかで俺は嬉しかったんだ。
「リコ、それが当たり前の感情だよ」
許すでもなく、突き放すでもなくただ口をついて出るのは本音。
その本音が、リコの凍りついた表情を変え、時計の針を動かした。
氷解。氷が融けるように、感情が溢れ出した。
『怖いのあの日からずっともう誰も信じない、好きになんてならないって、誓ったのに…』
「俺も怖いよ…。力もないし、何もない。あるのは…リコ、お前への気持ちだけ。でも、それだけあれば、今の俺は生きていけるんだ」
心からの叫び。それは恐怖。失う怖さはきっと誰もが知っている。でも、俺はもう逃げない。まっすぐにお前だけに向き合うよ。
両手で顔を覆い、座り込んだままのリコに手を伸ばした。もう…一人で泣かせない。ゆっくりと手を伸ばし、柔らかな頬に触れた。
他人の体温が、心まで温められるのかわからないけれど、そうなればいい、と思いを込めて。
差し出した右手に触れ、温かい、とつぶやいたリコ。届いたのかな?それが、コミュニケーションだよ。
思いが正しく届いて、それに反応があって。
今、二人は正しくつながっているに違いない。直感でそれを感じた。
「一人じゃないよ…確かにそれが怖いときもある。一人でいれば傷つかずにも済むかもしれない。だけど、俺はお前にもう…一人で傷ついてほしくないんだ。だから…俺は…」
その先は言葉にならなかった。
もう言葉より、理由を探すより、大事なことがわかっているから。
具体的には言えない。見えないけれど、誰もが求めていて、きっとそこにあるもの。
そう…ちょうど『愛』みたいに。




