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『憎かったのよ。すべてが』


静かに語り出すリコ。


『あの子が死んで本当に一人になった時、あたしはあたしじゃいられなくなった。唯人さんの言う通り、卑怯者だったんだろうね。転がるように地元を飛び出したのはいいけど、あてもなくツテもないあたしは…』


一度視線をはずし、下に向ける。過去を振り返ると痛みが伴うのだろう。


『あたしは…どんどん染まっていった。善悪の判断なんて忘れちゃって、自分を正当化してさ』


責任転嫁なんてよくある話だ。


「それだけ…傷ついたんだろ」


『…かもしれないわね。でも、自分が傷ついたから、他人を傷つけていいなんて話でもないわ』


やんわりと微笑みを浮かべるリコ…なんて悲しい表情。



『アザーサイドのシステムを聞いた時に、すぐに飛び付いたわ。汚い大人を見過ぎたせいか、洞察力には自信があってね』


確かに、それは言う通りなのだろう。まるでシナリオライターのように、ここまでの脚本を書き上げたのなら。


「じゃあ…どうして俺を?」


『今ではわからないわ。…良心?出来心?ちょっと違う。あなたの心を折りたかったのかも…』


残酷な言葉には違いないが、気持ちはわからないわけではない。


慎重に慎重を重ねれば、試すためのハードルは高くなる。…ちょうど神の試練のように。



「けれど俺はここにいる。それが…答えだろ?」


『そうね…』


ため息を一つついて、小さく笑う。後悔もあり、懺悔もあり。



『あなたは諦めなかった。あたしは諦めてしまった。もっと早く出会いたかったわ』


「今からだって遅くないよ」


『…無理よ。今さら戻れるはずなんて…ないのよ』


「そんなことはない」



人はいつからだって変われるんだ。



『もう計画は動き出しているの。今さら止められないわ』


「計画?」


『アザーサイド計画よ。あなたも見たでしょう?』


これまでの行動を見透かすように、さらりと言われる。もちろん見たには見たが。


「一応は…」


『あの半分は嘘なの』


「それは一体?」


『あたしがシンに確信に触れるような情報を流すと思う?』


…確かに、そうだな。彼の浅はかさは…危ういんだ。

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