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部屋の間接照明に照らされて、キラキラと涙が反射する。オレンジ色の柔らかな光だけが二人を包み込む。
「…もう傷つかないでいい。俺が…お前を…守るから」
『幸せになっても…いいの?』
まるで叱られた少女のような上目遣いで、幸せを求めるリコを…もう一度強く抱きしめた。"護る"という硬い意思を持ったまま。
そして…そっと唇をなぞるように…触れた。すべてが欲しい衝動。それは止められるはずもなく。彼女から呼吸を奪うくらい、長い口づけを交わした。
一つ一つ彼女の痛みを奪い去るように、ゆっくりと口づけていく。高まるのは情感だけではない。…それはきっと"愛"みたいなもので。
血管が浮き出るほど白く透ける肌。それをなぞるように触れて。耳元で漏れる吐息は、俺の鼓膜と心を優しく震わせる。
リコの痛みや傷。すべてを受け止めたくて、一つになってしまいたくて。
弾むベッドに倒れ込む。二人分の体重を受け、わずかにベッドがきしむ。目と目が合う。彼女は静かに目を閉じる。それは…暗黙の了解。少しだけ震える肩に触れて、二つの影が重なった。
「リコ…」
名を呼ぶだけで、なぜか愛しくて、何度も名を呼びながら、そっと柔らかな身体に触れていく。
…が、その想いは遂げられることはなかった。
『…ごめん』
小さく身体をよじり、ベッドに腰かけるようにして、身体を起こす。
『…あたしやっぱりまだ…』
欲望に身を任せて、急ぎすぎたのだろうか?
わからないけれど、とにかくリコは…少しだけ身を固くした。
また言葉なく、重い沈黙が訪れる。そしてその沈黙は、新たな自問自答を呼び起こす。
どこで間違えたのだろうか?と理由を探すけれど、見つからない。ならきっと、答えは彼女の中にしかないんだ。…だから、俺はごめんとしか言えなかったんだろう。
『あたしも…きっと唯人さんのことが…好き。でも…もう少しだけ時間をちょうだい?』
「…そう…だね。お互いに時間は必要なのかもしれない」
『ごめんね…』
つながったと思う瞬間は、ほんのつかの間で。苦味だけが空気を支配していた。