表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/101

-6-

少し感傷的になりながら、その波を見つめる。


この時間からじゃ圧倒的に帰る方が多いのは、ごく自然なことで。



その中で、異質な存在を見つける。


本当に浮き出ているような感じで…オーラがある。


行き交う人も、思わず振り返ってしまうような。


モデルなのか?圧倒的な美貌は、ひどくこの街には似合わない。


人の流れに逆らって、スッと構内のベンチに腰かけて、携帯を開いている。


白のロングファーコートに、カーキ色のロングブーツ。すらりと伸びる脚がなまめかしい。



…まさか…な。


俺はゴクリと唾を飲み込み、彼女の番号が出ている画面を握りしめた。


一つかぶりを振って、息を大きく吸い込んで、震える手と心を落ち着かせようと試みた。


…違う。あんな綺麗な子であるはずがない。そう確信しているのに、汚い心は正直で。(あんなに綺麗な子だったらいいのに)と、余分に緊張感を高めていた。



約束の5分前。184と打ち込んでから鳴らす。


目はあの子に釘付けのまま。


コールが鳴るかならないかの内に彼女が出る。


『ゾラさん?着いたの?』


俺は震えて動かない口をもぐもぐと動かそうとした。


「…ああ。…リコは着いたの?」


あの子も電話に耳をつけている。いや…偶然かもしれない。


『とっくに。白のファーコートを着てるわ。南口のベンチ』


…間違いない。あの子だ。俺は震える手で電源を…切った。


…そして、背中合わせでベンチに座った。


少しの沈黙のあと、急に彼女が口を開いた。


『もしかして…ゾラさん?』


「ああ」


『…どうして隣じゃないの?』と笑う彼女はまるで可憐な少女のよう。


「自信がなくてね…。こういうの初めてだしさ」


『…よかった』


何に対してのよかったなのかはわからないが、それは俺の気持ちを落ち着かせる薬のようで、ひどく即効性があった。


「それでどうすればいいんだい?」


『…じゃあご飯でも食べる?』


「そうしようか」


背中合わせから正面を向き合う。綺麗だ。どうしてこんな子が…いや、深くは考えないようにしよう。


どうせ同情してしまうだけだから。それならば、この瞬間を楽しもう。



まるで当然のように腕を絡ませる彼女。


並んで歩くと、少し鼻が高かったが、どうしてアイツなのと言われてるようで、変な気持ちがした。



とりあえず少し奥まったカフェバーに入り、俺はビールをリコはワインを注文した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ