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ほんの少しのまどろみの中、小さな夢を見た。幸せだったあの頃の夢を。
互いに夢を語り合い、それが終わることなんて、これっぽっちも考えてなくて。
それもまた一つの罪悪感なのだろうか。君じゃない人と、同じベッドで眠っているから。
…夢か。ふと目を開くと、心配そうに見つめているリコと目が合った。
『大丈夫?ひどく寝苦しそうだったけど…』
「夢を見ていたんだ。遠い昔のね…」
それにひどく感傷的な顔をする。何かを思い出しているのだろうか?
『それは…辛かったね』
本当に辛そうに吐き出すから、何も言えなくて。
「もう…そんな時間?」
『唯人さんが起きてからと思ったけど、大丈夫なら早めに行く?』
「ああ…シャワーだけ浴びれば…いいよ」
『あ…それと、電車がいい?車がいい?唯人さんタバコ吸うから…』
「遠いの?そこ?」
『車で3時間ぐらいかな?』
「…なら、ドライブ代わりに、車で行こうか。タバコも吸えるし、コンビニにも寄れるし」
『…とは言ってもあたし…ペーパーなのよ…』
「ああ、もちろん俺が運転するよ」
…どんなことがあるか、わからないから。他人のハンドルに命を預けたくはないし。
『いいの?ごめんね』
俺は一つ手を振って、シャワーを浴びた。
朝のシャワーは思考回路をクリアにする。汚れを落とすことよりも、目覚ましのための習慣。
車で三時間。およそ…200kmというところ。
一体…どこに行くつもりなんだろう?その範囲内には、都市なんて腐るほどあるし。結局…蓋を開けなきゃ…わからないってことだね。
身支度を整えて、家のカギを閉める。
一緒に部屋から出るのに、少しだけ恥ずかしかったけれど。
シャワーを浴びている間に、駅前のレンタカーを借りたようで、あとは駅に向かって歩くだけ。
いつものように腕を絡めて、微笑みを絶やさない。
完璧だからこそ…裏があるって思ってしまう人間もいるんだよ…リコ。
レンタカーなら、ディスクを運ばされる心配も…いや、ディスクはリコが持っているんだ。もしかしたら…遠い誰かに渡すために、俺を利用しているのかもしれない。
…今日は、一人にさせない。そんな思いを秘めたまま、俺もリコに微笑みを返した。