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フロントの人が言っていたよりも早く、コンビニは見つかった。少しだけワクワクした気持ちを抑えるように、お目当てのCDロムを見つけてカゴに放り込んだ。
昨日、してもらったように軽めの朝食代わりにサンドイッチと、野菜ジュースを放り込み、カモフラージュも完璧だ。そして目を覚ますためと、頭を回すために、ミントのタブレットと、チョコレートを一つ買い込んだ。
およそ10分ほどで部屋に辿り着いた。ここからが本番だ。
鍵を捻る手にも力が入る。寝起きドッキリのような手に汗握る緊張感。粘りつくような、プレッシャーの中、カチリと音を立て、扉が開いた。
テーブルに荷物を置いて、借りてきたノートパソコンを接続する。少しだけ処理が遅いのは仕方がないが。
確認のために、もう一度声をかけてみる。
「リコ」
…返事はない。相変わらず規則正しい寝息だけが繰り返されている。
そうっと彼女のバッグに近寄る。胸が痛いほどドキドキする。なるべく音を立てないように、慎重にでもできるだけ素早く。
お目当ての紙袋は無造作に放り込まれていたため、すぐに発見できた。
カサカサと袋が鳴る音にさえ、反応してしまう。スッと中身を取り出すと…何も書いていない真っ白のCDロムが、姿を現した。
細心の注意を払い、寝息を聞き逃さずに、CDをインストールする。音楽ファイルであってほしい気持ちと、そうではないだろうと確信めいた気持ち。…その答えは?
…もちろん後者である。
gifファイル。主に画像に使われる拡張子。
ダブルクリックで開くと…一面黒で塗りつぶされた画面しか出てこなかった。
…なんだこりゃ?まったく意味がわからない。…ただ、どこかに絶対に意味はあるはずだ。俺は買ってきたロムにコピーを始めた。
なにせこんなところに備え付けのノートパソコンである。コピーにさえ時間がかかる。その間ずっと背中の寝息だけに集中し、生きた心地がしなかった。
なんとかコピーも終わり、そっとバッグに戻したときには、外も少しずつ明るくなり始めていた。
…ふう。額にへばりつく冷や汗を拭い、指を鳴らして、背中を伸ばした。緊張感からか肩の重みが取れない。
これで一歩彼女に近づいたのか、それとも…関わってはいけないことに足を踏み込んでしまったのか。
それはまだ誰も知らない事である。