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ただ、これ以上は詮索できないだろう。逆に警戒されるのも、良くないと思われたから。
俺は気まずさをかき消すように、タクシーを呼んでもらうことにした。
すうすうと寝息を立てるリコ。その寝顔の裏側は、天使か…悪魔か。何にせよ、変化はある。
"やぶ蛇"にならないことを祈りたい。
この寝息さえ演技に思えてくるのは、やはり疑心暗鬼の現れなのか?
程なくしてタクシーが到着する。シンくんと軽い挨拶をして、折れそうなくらい軽い身体を持ち上げて、そっと後部座席に滑り込ませる。
運転手に行き先を尋ねられると、少し迷ったフリをして、ホテル街、と告げる。
『お客さんも悪いですねー。こんな美人を酔わせて、連れ込むんですか?』と、羨望と嫉妬混じりの言葉を投げつける運転手。
面倒は避けよう。多少イラッとしたが、聞き流して、タバコに火をつけた。
流れる景色を見つめる。ヘッドライト、テールライト。家庭から漏れる明かり。深夜でも煌々と光るコンビニに群がる人々。まるで小さな誘蛾灯。例え、夜でも…俺たちは明かりを求めるということなのだろう。
短くなったタバコを、フィルターを押しつけるようにもみ消すと、もう目的地は目の前だった。
身体を揺すっても、声をかけても一向に起きない彼女を、仕方なく首の後ろと膝の後ろに手を差し入れて持ち上げた。俗に言う"お姫様抱っこ"である。眠り姫ではあるが。
フロントでまばらに点いた電光パネル。部屋を選び鍵を受け取る。
なんとかエレベーターのボタンを押して、5階まで。
ようやくベッドに彼女を横たえた時には、もう汗だくになっていた。
暑いな…暖房が効きすぎている。エコに関するサミットをやったところで、エゴにはしょせん、効果は薄い。とにかく自分だけが良ければ、世界のバランスなんてどうだっていいんだ。
備え付けの冷蔵庫から、缶ビールを取り出し、プルタブを起こす。プシュッ、と音を立て炭酸が立ち昇る。
ゴクゴクと喉を鳴らして飲む。喉を通る苦味と刺激が、大きく息をつかせる。
…シャワー浴びるか。彼女は大人しく寝息を立てている。お酒の効果なのだろうか?深い眠りから覚めそうにない。童話なら王子様のキスで目が覚めるのだろうが、あいにく俺は王子様ではないし、意識のない子にキスをするほど無粋でもない。
彼女のアウターを丁寧に脱がし、ハンガーにかける。そっと布団をかけて、服を脱いだ。




