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丹薬の達人  作者: Noah
1/1

裏切り

乾いた風が、その朝、静かに吹いていた。


それはただの風ではなかった。

砂埃と枯れ葉を巻き上げながら――何かが変わろうとしている気配を運んでいた。


小さな村、ハンベイの中央広場には、人々が集まっていた。

男も女も、老人も…そして何より、若者たち。


数十人。


豪華な刺繍の服をまとった者もいれば、

ぼろ布のような服しか持たない者もいた。


だが、彼らに共通しているものがあった。


希望。


---


今日は特別な日だった。


選別の儀。


それは五年に一度、すべての宗門の支配領域で行われる儀式。


五年。


それが、新たな世代が生まれ、成長し、

そして“選ばれる”ために与えられた時間。


選ばれなかった者は――

さらに五年待たなければならない。


だが、ほとんどの場合――

それは二度目の機会が来ないことを意味していた。


---


「今日、弟子が選ばれる…」

「五大宗門が来ている…」


---


石でできた高台の上に、五人の人物が立っていた。


彼らは――五大宗門の代表。


白の衣をまとい風のように軽やかな者。

黄金の紋様を身に宿し威厳を放つ者。

闇のような衣に包まれた者。

緑の装いで自然と調和する者。

そして――血のように深紅の衣を纏う者。


---


その前に置かれていたのは――核石。


古く、磨き上げられた石。


誰も読めぬ文字が刻まれている。


嘘をつかない。

誤ることもない。


それは、すべてを見抜く。


---


儀式は単純だった。


残酷なほどに単純。


一人ずつ前に出る。

胸に手を当てられる。


そして――石が反応する。


---


「不合格」

「可」

「平均」

「中級資質」


---


泣き崩れる者。

歓喜する者。

そして――静かに消えていく者。


---


その中に――リュウセイがいた。


質素な服。

働き続けた手。


だが、その目は違った。


希望ではない。


耐え抜く覚悟だった。


---


「次」


彼は歩いた。


一歩ずつ。


台へと上がる。


---


「名前は?」


「リュウセイ」


---


老人の手が胸に触れた。


核石が――反応する。


---


だが。


何も起きなかった。


---


光らない。

震えない。

沈黙。


---


「妙だな…」

「弱くはない…だが測れない」


---


「不安定」


---


「修行には不適」

「崩壊する可能性あり」

「価値なし」


---


リュウセイは退けられた。


まるで――最初から存在しなかったかのように。


---


夕暮れ。


彼は家の前に座っていた。


---


中から声が聞こえる。


---


「そんなこと、できるはずがない…」

「もう決めた」


---


「私たちの子よ!」

「失敗作だ」


---


沈黙。


---


「売るつもり?」

「冬を越えるためだ」


---


「彼が家族よ!」

「荷物だ」


---


その言葉で――すべてが終わった。


---


外で、リュウセイはすべてを聞いていた。


何かが――壊れた。


---


扉が開く。


父と母が出てくる。


---


目が合う。


---


だが、何も言わない。


---


ただ――背を向ける。


家に戻る。


---


そして――


---


バタン。


---


それが、終わりだった。


---


「こいつか?」


---


振り返る。


黒い衣の男。


---


「そうだ」


---


「売るのか?」

「機会を与えるだけだ」


---


嘘だった。


---


男は微笑む。


---


「俺はシャオ・テンだ」


---


「来い」


「生き残れば――強くなれる」


---


リュウセイは振り返らなかった。


---


そして、歩き出した。


---


夜。


長い道。


静寂。


---


夜明け。


---


「行くぞ」


---


馬車が動き出す。


---


村は遠ざかる。


過去も、名前も、すべて。


---


こうして――


誰にも気づかれることなく、


一人の少年の物語が始まった。

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