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バッドスタート!

 やってしまった。

 美香の顔は赤く、膨張し、今にも破裂しそうな風船だった。

「出てけ!この人間モドキ!!!そうだよ・・・いっつも啓太がアンタと遊んでて、小さな子供の笑顔を見たら誰だって表情が緩くなるのに、アンタはいっつも無表情。死んでるんじゃないの?生憎、美香ん家は死体は置きませんから!!!」

その通りだ。でも僕にはどうすることも出来ない。

壊された物は元通りにならない。

「その通りだ。僕は君達から見てただの人形の様な物だ。者ではない。加えて僕は壊された人形。壊れた物は元通りにはならないんだよ」

哲学を懐疑させるようなことを話してみた。分からないだろうな。


 哲学は好きだ。事を有耶無耶に出来るから。


「ワタシはそんなくだらない哲学は嫌いだね」

「陽子姉ちゃん!?」

美香が驚き気味だ。

「美香は学校行きな。自転車は修理に出すから」

美香が後ろめたさを感じながらも、学校の方向へ駆けて行った。


「はじめ君。どうしてキミみたいなコを楓が呼んで・・・そして家族にするっていったか分かる?」

最初から筒抜けだった訳だ。なるほど・・・ハハハハハッ!

「同情でしょうね。優しそうな女だし。しかしすぐに僕は捨てられると分かっています。壊れてると分かっていたけど拾ってみた人形の様に」

「そういう比喩表現っていうの?そーゆーのは嫌い。安心しな同情ではなくて、楓はアンタの事を人形とも壊れた物だとも思っていない。あのコはね、一度だけ誘拐されたことがあるの。お父さんやお母さんと仲が良かったあのコは、助けられた時には感情が死んでいたわ。自衛本能ってゆーやつが働いたの。あのコはアンタをその時の自分と重ね合わせているの」


「そんな事言われても、結局はあの女と自己満足のため・・・つまり僕はあの女の人形なんでしょう?ムリしなくていいです。僕はここから出ます」



 帰宅と同時に荷物を纏め、ドラム缶バッグを肩に掛けて玄関を出て、大きな門をくぐる。

 どこに向かうかなんて考えていない。出来ればここより遠くへ、遠くへ・・・遠くへ・・・



「ただいま~はじめは~?」

楓が帰ってきた。まず現在の状況を報告してあげよう。

「はじめが家出した」

「は!?真由ちゃんさ~まずちゃんと結果に至る過程を教えてよ」

「そんな事より追いかけたほうが良いんじゃない?5分くらい前だったから走れば間に合うかもね」


「真由!帰ったらお説教だからね!」


 楓姉ちゃんが走って行った。

さて・・・ご飯の支度でもしますかな。



 寄る所がない。身寄りも無く、友もいない。

 ここまで来ると人間、開き直れるものだ。

「やっぱり学校に行ってみるかな・・・」

独り言は虚しく空気に熔けていった。


「!?」


窓が割れている。割れた窓から中を覗いた。



  人

   が

    死

     ん

      で

       ま

        す

         よ

          ?

           」



見なかったことにしよう。

公園でブランコに乗ってブ~ラブラした。

息の上がった楓に会い、抱きしめられた。

「アンタ、自分の事誰も見てないと思ってんの?バカじゃない?ワタシはね、アンタが好きだから家に呼んで、一緒に暮らそうと思ったの!!!どうせ家族もいないから、ホイホイ付いてくると思って・・・ワタシはね、好きな人と一緒になるためなら何でもするの!!!だから帰ってきて!!!!!」


少し心が揺らいだ。心が若干動いた・・・気がした。


うん、家に戻ろう。美香に謝ろう。


そう思った。


だから、今、楓と手を繋いで家に帰る。


この家の本当の家族になるために。



・・・不思議だ。自分がここまで素直になっている。


これは、この女のお陰なのか・・・?


僕の心は幸せでいっぱいだ。


「好き」って言葉を久しぶりに聞いた。


ソレを僕に向けて言った。


嬉しい―――









この時、完全に僕は








死体を忘れていました。

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