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矢野と私

ラブホテル探索

作者: ひとは
掲載日:2026/03/26

「この前、バイト先の先輩とその友達二人とラブホへ行ったんよ」


 矢野はエセ関西弁でそう話し出した。

 幼馴染の矢野は私の家によく泊まりに来る。

 子供の頃から続く習慣で私が大学生になった今でも変わらない。矢野は大学生では無くスーパーでアルバイトをしながらネットで色々やって稼いでいるらしいが詳しいことは聞いていない。


「ビッチ……」

 小さい頃から彼女との付き合いだが、男三人とラブホテルへ行くようになるなんて思ってもいなかった。付き合い方を考えないといけないかもしれない。


「もう変な想像しんといて! エッチ!」


 いや、ラブホテルで他に何をすると言うのか。


「ちゃんと最後まで聞いてや。潰れたラブホテルの跡地に肝試しに行ったんよ。何でも殺人事件があった場所とかでテレビとかでも取り上げられた有名なとこなんやって。ほんと先走って想像してエッチなんやから」


 絶対に矢野は私の反応を楽しむために情報を後出しした。以前の廃病院といい矢野はそういうものに興味がある。

 悔しいので話を促す合いの手も入れずに放っておいた。


「バイト先の中村って先輩がドライブへ行こうってしつこく誘ってくるから断り切れなくて。それなら『一緒に肝試しに行くならいいですよ』って言ったら、先輩の友達も付いて来たんよ。ほんま情けない。だから『先輩と二人きりでも良かったんですけどね』って言ったったわ」


 矢野はビッチじゃなくて小悪魔だったか。

 実際、黒髪ロングの前髪パッツン、服はゴスロリっぽいのを好んで着ていて昔から一部の男からはモテたんだよな、こいつ。うちに来る時もその格好で来るし、オシャレに無頓着な私にはよく分からない。


「そんでそこのラブホ、昔殺人事件があったのが原因で潰れちゃったみたいで、建物が取り壊さずに残ってるらしいんよね。それで今でも中に入れるんだけど、被害者の霊が出たり、殺された部屋に入ると部屋が真っ赤になったりするって聞いて興味わいたんよ、一回行ってみたいなってなって」


 矢野の話を聞くのは面白いが、それでも私はそこに行きたいとは毎回思わないのよね。


「結局、四人でそのラブホまで行ったんだけど、男三人が舐めてて懐中電灯すら持ってきてなかったんよね。元から恋愛対象にならないけどがっかりやったわ。暗い中、どうやって進むつもりだったんや、って怒ってもうた」


 熱心に矢野を誘ってる中村はお気の毒に。今回に限らず恋愛対象になっていないのに毎回よく頑張ってるよ。


「でな、建物の中に入っていったんよ。入口はボロボロやったんだけど、中は案外綺麗なままでな。そのままでは泊まろうとは思わないけど、ちょっとリノベーションすれば使えそうなのにもったいないわぁ」


「うーん……でも、殺人事件が起きたところなんて嫌じゃない?」


「エッチ」


「なんでやねん!」

 矢野の言葉に思わず突っ込んでしまった。私は中学から中高一貫の女子高だったし共学の大学に進学した今もそういうことは経験したのとないから想像で話しただけなのに。


「で、目的の部屋に着いたんだけど、全然普通だったんよね。何か和風な感じの部屋で掛け軸があったり日本人形が飾ってあったりで、こんな雰囲気じゃすることもできひんわ、って突っ込んでしまったわ」


 あれ? この言い方だと矢野は経験あるのかな? そういう話はしたことないから、肝試しの話よりもそっちの方が気になるんだけど。


「ねぇ、肝試しよりも矢野のその……そっちの話にしない?」


「エッチ」

 今日三回目だ。今のは仕方ないか。


「それでな、何か変やなと思ったからスマホで調べ直したんよね。山の中でもないから電波も全然届くし。そしたら何と! そのホテルはただ潰れただけでテレビで取り上げたのは本当だけど事件は無かったみたいやねん」


「何よそれ? じゃあ、ただ廃ホテルの不気味な部屋に行っただけなの?」


「まぁ、それはそうやねんけど、後で調べ直したら行ったラブホ、和風の部屋なんて存在してなくて全部洋風の統一された部屋だけやったんや。誰かのイタズラか、それかテレビの演出がそのままだったか、どっちにしても趣味悪いわぁ」


「結局、また変なところ行ったるじゃない。もう行くのやめなよ。そのうち何か変なもの持ち帰っちゃうよ」


「うーん、でも興味あるからやめられへんのや。あとな調べてる時に見つけたんやけど、市内のラブホで殺人事件あったのは本当らしいんよね。で、何とそのラブホ、まだ営業してるんよ! ネットの書き込みだとその部屋だけ停電が起きるとか、デリヘル嬢が客に呼ばれて行ったら女性がいてずっと俯いて黙っていて怖くて逃げたとか、そんな書き込みがあって。あー、気になるねんけど、営業中のラブホに一人で行くのは何か嫌やねんな」


「じゃあ、バイト先の中村さんって先輩といけばいいじゃない?」


「えーっ、それは絶対嫌や」

 中村先輩、御愁傷様です。別の女の子を探しましょう。


「なぁ、そのホテル一緒に行かへん? うちら二人なら最近流行りのラブホ女子会ってことで何とかなるやろ」


「それこそ絶対いやっ!」

 古い考えって笑う人もいるかもしれないけど、やっぱりそういうところは好きになった人と行きたいと思う。


「乙女やなぁ」

 矢野はそう言って笑った。

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