第81話 (if) ◇モノローグ 小鳥遊 加恋◇
◇モノローグ 小鳥遊 加恋◇
ふじパーから我が家へと帰ったアタシは、お母さんの美味しい晩ご飯を食べて、温かいお風呂に入って――今は自室で日課のストレッチに励んでいた。
「はうぅー……。はうぅー……」
開脚前屈で股関節やハムストリングスをしっかり伸ばしてあげてから、次は足先から太ももまでをさすってリンパ流しを始めた。
もはや無意識でやれるまでになった各種ストレッチをこなしていきながら、アタシは今日という濃密な一日を追憶する。
今日の収穫は、なんと言ってもこれだよねっ♪
「シュートとナツミンがよりを戻してよかったぁ」
本当に良かったと、アタシはそう思っていた。
うん、たしかにそう思っていたの。
だからこれは紛れもない本心。
「――って、別に言い訳とかしなくても、いいんだけど……」
最近、気になっていたことがスルっとマルっと解決して、アタシは気分スッキリ――のはずだったんだけどぉ。
「なのにどうしてこんなにも、胸がざわつくんだろ?」
ざわつくというか、チクチクするというか。
「シュート――」
胸の奥のざわざわを意識した途端に、その名前が口からポロっとこぼれ落ちた。
ただそれだけで胸のざわざわが、蕩けるような温もりを帯びた不思議な感情へと遷移していく。
「アタシ、あの時ホッとしてた」
『結局、2人は付き合うの? わだかまりは解けたんだよね? 元鞘するの?』そう尋ねた時に、シュートが黙っちゃって答えなかった。
「あの時アタシ、ホッとしてたよね」
シュートが明確にナツミンを選ばなかったことに、アタシはいいようのない安堵を覚えていたのだ。
まだアタシにもチャンスがあるって、そう思ってしまった。
だってシュートが迷っていたのは、きっとアタシが理由なはずだから。
アタシとナツミンを心に思い描いたせいで、シュートはあの問いに答えられなかったのだ――。
「うーん……。さすがにそれはぁ、自意識過剰すぎかなぁ? あははー」
自嘲気味に笑ってみる。
だけど世界一の愛され美少女になるために、ずっと人間観察を続けてきたアタシの経験値は、それが決して過剰な自意識ではないと告げていた。
また胸の奥がじんわりと熱を帯びてくる。
はぁ。
やれやれ。
ふぅ!
もういい加減、アタシは認めないといけないようだった。
「アタシはシュートが好き。ナツミンと同じでシュートのことが好きなんだ。シュートだけは譲れない……譲りたくないって、思っちゃってる。アタシはシュートに恋しちゃってるんだ」
その結論が胸の奥にストンとシンデレラフィットで収まる。
「そっかぁ。アタシ恋しちゃったんだ――」
小鳥遊加恋、15歳。
初めての恋をしちゃいました。
◇モノローグ 小鳥遊 加恋 END◇




