第82話「いったいいつから覗き見してたんだ?」
「あはっ♪ その調子だと、無事に仲直りできたみたいだねーん♪」
やたらと素敵な笑顔で言ってくる加恋に、俺はジト目とともに質問を投げかけた。
「いったいいつから覗き見してたんだ?」
「わわっ! 覗き見なんてそんなぁ! 人聞きが悪いよぉ!」
わざとらしく、顔の前で両手を左右に振る加恋。
わざとらしいんだが、まるですべてが計算されているかのごとく、むやみやたらと可愛い。
「そんなこと言って、ガッツリ見てただろ?」
白を切る加恋を俺が問いただすと、しかし加恋からはまるで事前に用意していたかのような、完璧すぎる答えが返ってきた。
「あれはぁ、シュートがナツミンをおんぶして戻ってくるのが見えたから、アタシ迎えに行ったんだよぉ? どうなったかなぁって、すごく気になってたからぁ、居ても立っても居られなくなってぇ」
「ああ、うん」
「そしたらそしたらぁ、急に2人がいい雰囲気になっちゃったでしょぉ? もぅ出ていくに出ていけなくてぇ♪ だから邪魔しないように、そおっと見守ってたのー」
「むっ、な、なるほど? それはまぁ、その、加恋の言う通りだな……」
加恋の説明に、俺は一撃で黙らされてしまった。
完璧すぎて反論の余地すらない。
「そんなことより、お二人さぁん。一度は分かたれた恋が、もう一度、成就する。ううっ、いい話だねぇ♪ ドラマみたぁい♪(* >ω<)」
俺が反論の術を失ったの確認すると、加恋はニマニマと笑みを深めながら話を変えた。
コイバナ・スマイルって言うのかな。
女子が他人のコイバナをする時によくする、興味本位全開のスマイルだ。
『オレ』はずっとこういうのを避けてきたので、すぐにわかった。
断言しよう、加恋はこの状況を完全に楽しんでいる。
だがまぁ、加恋に世話になったのは事実。
俺は加恋に大きな借りがある。
ゆえに今は興味本位も受け入れるとしよう。
「おかげさまでな。スカしたままで夏美を追いかけようとしなかった俺の背中を、加恋が無理やり押してくれたおかげだよ。本当に感謝してる」
「ふふん、さすがアタシだよねっ♪ アタシやるぅ♪」
右手で可愛く横ピースしながら、それはもう楽しそうにおチャラける加恋に、ここまで俺たちのやり取りを静かに聞いていた夏美が、おずおずと口を挟んできた。
「でも、加恋ちゃんはそれで良かったの?」
「えー、なにがぁ?」
「だって加恋ちゃんって。その……、修斗くんのこと――」
「あははっ♪ そーだよぉ。あーあ、初恋だったのになぁ。失恋しちゃったぁ。愛され美少女・加恋ちゃん、人生初の敗北かもぉ?」
「えっ? 加恋は俺のこと好きだったのか?」
「まぁね~。多分だけどぉ」
「そうだったのか――」
加恋が好きだったのはきっと、俺じゃなくて『オレ』だ。
そういう意味じゃ、加恋と俺が付き合っても上手く行かなかった可能性は少なくない。
――いや、どうだろうか。
加恋は俺が夏美を追うと言った時、『いい顔できるじゃん』と言った。
観察眼のするどい加恋だ。
『オレ』の中にいた俺を見抜いていた可能性はあった。
ま、今となってはもうわからないことではあるが。




