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第74話 告白

「でも今は真実が知りたい。今さら虫がいい話だって思うかもしれないが、俺に『あの日』のことを教えてくれないか? 俺は全ての真実を知りたいんだ」


 俺は包み隠さずに素直な想いを夏美に伝えると、そこで口をつぐんだ。


「……」

「…………」


 夏美の目を真剣に見つめながら、俺が投げたボールを夏美が投げ返してくれるのをじっと待つ。


 なーに、2年も待ったんだ。

 いまさら5分待とうが10分待とうが、たいしたことじゃない。


 夏美は優しくて、素直で、誠実な女の子。

 俺はそのことをよく知っていた。


 待っていれば絶対に、俺の求める答えを返してくれるはずだから。


 だから急かすことはせず、ただ静かに待っていると、


「……じゃあ話すね」

「うん」


 ついに決心がついたのか、夏美はこくんと一度頷くと、昔話を語り始めた。


「中学2年の頃、私は真紀ちゃんのグループにいて。私は真紀ちゃんに嫌われないように毎日必死だった。真紀ちゃんは気分屋で、気に入らない子はすぐにハブったり無視したりしたから。それが怖くて、私はずっと真紀ちゃんの顔色を窺っていたの」


「ああ、千堂真紀な。覚えているよ。話したことはなかったけど、荒っぽくてイケイケな性格の女子だった」


 わかりやすいところでは、俺みたいなモブ男子とは絶対に話をしないタイプ。

 そのおかげもあって、俺は千堂真紀とは全く接点がなく過ごすことができていた。


「私は嫌われないようになんとか上手くやっていたんだけど、クリスマスの時に罰ゲームでウソコクをすることになっちゃって。その相手に修斗くんが選ばれてしまって……。私はハブられるのが怖くて嘘コクをしたの」


「まぁ、そういうこと……だったんだよな」


 夏美と別れた『あの日』、須藤と夏美の会話からそれは薄々理解できていた。


 ただ、俺はそれを事実として受け入れるのが怖くて。

 だから『オレ』というもう一人の加賀見修斗を生み出し、事実を受け入れることから逃げたのだ。


「でも本当はドッキリで、すぐにみんなが出てくるはずだったの」


「ドッキリ……」


「でもいつまで待っても出てこなくて……私は修斗くんと付き合うことになっちゃったの。話したこともなかった、何も知らない修斗くんと」


「そっか、だからだったんだな。あの時の夏美、教室の入り口を何度も見てたもんな。今さら納得したよ」


 つまりこの時の夏美は、あいつらにいいように扱われていたわけだ。

 俺だけでなく夏美も弄んだあいつらに、俺は無性に腹が立ってしまった。


「でもね? 最初は嘘コクだったけど、付き合ってからは私はどんどん修斗くんに惹かれていったの。一生懸命で、真面目で、優しくて、私のことを本当に大事にしてくれた修斗くんに、私はすぐに恋に落ちちゃってた」


 それは夏美の『告白』だった。

 誰かにやらされた『嘘コク』ではない、本当の意味での想いの告白。


「毎日すごく楽しかった。教室でこっそりラインをして、隣町まで行ってデートをして。夜にいっぱい電話でおしゃべりして――」


「……懐かしいな」


「だけど同時に、私はずっと罪悪感を感じてた。本当のことを言わないといけないって、心のどこかで思ってた。……でも言えなかったの。修斗くんに嫌われたくなかったの。なんとかこのまま誤魔化せないかって、私はそんな風に考えてしまったの。やるべきことから私はずっと逃げていた。それで――」


 想いが極まったように言葉に詰まらせた夏美。


「あの日を迎えたってわけだ」


 夏美の言葉を拾うように俺がそう続けると。

 夏美は一瞬、顔をゆがめて泣きそうな顔をしてから、だけど過去から逃げようとせずに、俺の目をしっかりと見ながら言った。


「うん、そう。これがあの時の全て。中学2年の時に、私が修斗くんにしてしまったことの全てだよ」

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