第72話 夏美を探せ!(加恋の後押し、オレの冷静さ、夏美の事前情報)
加恋に背中を押してもらった俺は、ふじパー園内を早歩きで巡って夏美を探し始めた。
本当は走って探したいところなんだが、なにせ休日の遊園地ということもあって人が多い――しかも子連れが多いときた。
小さな子供にぶつかって怪我でもさせたら一大事なので、俺は逸る気持ちを抑えながら、人ごみの間を縫うように移動しつつキョロキョロと夏美を探していく。
背が高くなったことに今ほど感謝したことはなかったが、しかし俺はなかなか夏美を見つけることができないでいた。
「くそ、見つからない……! 夏美は今も泣いてるってのに……! すぐに話をしないといけないってのに……!」
焦りがどんどんと濃くなってきたが、『オレ』としてクールに過ごした2年間が、俺に冷静さを取り戻させてくれる。
「いやいや、落ち着けよ俺。こういう時こそ冷静になるんだ。このままやみくもに探してもダメだ。頭を使うんだ」
東京ドーム3個分というふじパーの広さは伊達ではない。
何も考えずに歩き回っても、いたずらに時間を浪費するだけだ。
広い園内でなかなか夏美を見つけられなかった俺は、近くにあった園内マップの看板の前でいったん立ち止まると、マップを眺めながら頭を働かせることにした。
「今の夏美の状況を、自分に置き換えてみたらどうだ?」
すごく悲しい時、人はどうするか?
「俺なら静かなところで一人になりたいと思うはず。例えば自分の部屋とか」
噓コクだと知って辛かった時、俺は一目散に自分の部屋に逃げ込んだ。
泣いてる姿を見られたくなかったから。
誰にも声をかけられたくなかったから。
そのことを思い出す。
夏美だって同じように思うに違いない。
「だとして、だ。園内で静かで一人になれるところ……そんなところあるか? だってここ遊園地だぞ? 遊園地ってのは騒がしさの象徴みたいな施設だろ――あっ」
その時、園内の端にある「公園エリア」という小さなスペースが目に入った。
芝生が植わっただけの空き地のようなスぺースは、お昼時にレジャーシートを広げてランチをする時間帯以外はあまり人気がないのだと、事前情報を細かくチェックしてくれた夏美に聞かされたことも思い出す。
「ここだ。ここに夏美はいる」
俺は直感した。
いやこれはもはや確信だった。
そうと決まれば話は早い。
「待ってろよ夏美、今行くからな」
俺は一目散に公園エリアへと向かった。
公園エリアに近づくにつれて急激に人気がなくなり、障害物のなくなった俺はどんどん加速し、ついには走り出していた。
そして思った通り、そこには夏美がいた。
夕暮れに染まる芝生の片隅に、空を見上げる夏美の後ろ姿が見えて――、
「夏美! こんなところにいたのか! よかった、探したんだぞ」
俺はもう感情が抑えきれずに、大きな声で呼びかけたのだった。




