表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/92

第71話 逃げた先にて――◇夏美 SIDE◇

◇夏美 SIDE◇


「はぁ、はぁ……、はぁ、はぁ、はぁ……」


 私はフジパーの外れにある、人気のない小さな公園スペース(という名の芝生エリア)で、両膝に手をついて、大きく荒れた息と、乱れた心を必死に整えていた。


 遊園地には似つかわしくない姿だったけど、周りにはほとんど人がいなかったので、取り立てて不審がられることもない。


 フジパーにまで遊びに来て、芝生に座って時間をつぶすなんてもったいないもんね。

 当然だ。


 別にここに来たかったわけじゃない。

 一人になりたくて、人気のないところを探してやみくもに走っていたら、たまたまここにたどり着いてしまったのだ。


「修斗くんと加恋ちゃんがキスしてた……」


 それを見た瞬間に、私は頭が真っ白になってしまい。

 居ても立っても居られなくなって、気付いた時には逃げ出してしまったのだ。


 さらにはここに来るまでの間も、その光景を私は何度も思い出してしまっていた。


「こういうことになったら、ちゃんとお祝いしようって、思ってたんだけどな……」


 加恋ちゃんが修斗くんに好意――まではいかなくても、少なくとも興味があるのは分かっていた。


 修斗くんは加恋ちゃんに、というより恋愛にあまり興味なさそうだったけど――他でもない私のせいだ――加恋ちゃんの猛アタックはそれはもう凄まじかったので、いつか2人が「そういう関係」になるだろうなってことも、ちゃんとわかっていた。


 加恋ちゃんのアタックで、修斗くんがもう一度、誰かを好きになってくれたら――それは私には絶対にできないから――そんなことを思っていた。


 そう、頭の中ではわかっていた。

 だけど私の心は、わかってはいなかったのだ。

 

 まるでカップルのように仲睦まじい2人の姿を見た瞬間、私の心は制御を失ってしまった。

 感情が爆発してしまい、どうしていいかわからなくなった。


 そんなことを考えていると、荒い息がいくぶんか収まってきて。


「うんしょ、と……」

 私は膝から手を離すと身体を起こした。


 だけど心の中はグルグルと荒れたまま。

 乱れた心のままに、なんとはなしに空を見上げると、


「わ、綺麗な夕焼け……」


 オレンジ色と紫色のグラデーションが綺麗な夕焼けは、見事の一言で。

 人気のないところまで逃げてきた惨めな私を、まるで見下して嘲笑(あざわら)っているかのように思えた。


「あはは……。こんな綺麗な夕日なのに、すっごい被害妄想……」


 自分で言って、情けなくなってくる。


「嘘コクも……、嘘コクがバレた時に追いかけなかったのも……、今こうやって逃げているのも……、なにもかも全部、私が悪いのにね……」


 綺麗だった夕焼けが、滲みはじめた。

 せめてこれ以上は惨めにならないようにと、私は涙がこぼれないように必死に上を向いて堪えようとして――、


「夏美! こんなところにいたのか! よかった、探したんだぞ」


 公園エリアの入り口付近から、修斗くんの声が聞こえてきた。


 私はハッとすると、慌てて右手の甲で涙を拭って――笑って笑ってと自分に言い聞かせてから――渾身の勇気を振り絞って振りむいた。


◇夏美 SIDE END◇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ