第64話 お花摘みの夏美、2人きりの修斗&加恋
◇
その後もオレたちは、いろんなアトラクションやアクティビティを遊び。
その都度、「あれが良かった」「ここも良かった」と感想を語り合った。
さらには園内のフードコートで、最近の物価高&ご当地価格に気圧されながら、これまた感想を語り合いながらお昼ご飯を食べ。
午後も精力的にアトラクションやアクティビティを巡っては感想を言い合った。
………………
…………
……
「ふわぁ~、スカイウェーブも楽しかったー」
「浮遊感がすごかったよねぇ♪ ふわーってなったもん♪」
「ジェットコースターとはまた違ったスリリングさがあったよな。慣れるまで、かなり緊張したよ」
「私も~! スピードが出てきたら身体が浮き上がるような感じがして、『わっ! 私、重力から開放されちゃった!?』って思っちゃった!」
「ナツミン、その感想、ないすぅ♪」
「うんうん、言い得て妙ってやつだな」
上下に緩やかに波打ちながら遠心力でグルグル回る巨大な回転空中ブランコ――「スカイウェーブ」を楽しんだ後、オレたちが感想戦で盛り上がっていると、
「あ、ごめんね加恋ちゃん、修斗くん。ちょっとだけ外していいかな?」
夏美が突然そんなことを言った。
その言葉はとても曖昧だったが、曖昧ゆえにオレはすぐに夏美の意図を察する。
「OK、待ってるな」
「アタシもいいよーん」
そう遠くないところに、女性用トイレの案内板が見えていた。
つまりはそういうことだろう。
ここで夏美に何をしに行くのかイチイチ聞くほど、オレは空気が読めない人間ではない。
「すぐ戻るから」
「急がなくても大丈夫だぞ」
「そうそう♪ ゆっくりしていってね♪」
「ありがとう。じゃあちょっとだけ行ってくるね」
そう言って、早足でトイレに向かった夏美から、オレはすぐに視線を逸らした。
これまた当たり前だが、女の子がトイレに行く姿をオレはぶしつけに眺め続けたりもしないのである。
そういうわけで、オレは一時的に加恋と2人きりになった。
もちろん遊園地で2人きりだからといって、何があるわけではない。
──と、
「あれぇ? ねぇシュートぉ。シュートの前髪に葉っぱが付いてるよぉ?」
加恋はそう言うと「うんしょっ」と背伸びをして、オレの頭の前髪の上の辺りを指差してきた。
「え、マジか? …………ええと、取れたか?」
加恋に指摘されたオレは、右手でパサパサと軽く前髪を払ってみる。
「うーうん、まだ。なんかね、結構ちっさい葉っぱがぁ、髪に絡まってる感じぃ?」
「なるほどそういう感じか、了解…………今度はどうだ?」
具体的なイメージがついたオレは、前髪を根本から先端へと手櫛ですくようにして、何度か右手を動かしてみる。
「うーん、微妙にしっかり絡まってるから、払ったり透いたりしただけじゃ無理かも?」
「なぁ、加恋って手鏡? ええっと、女子はコンパクトミラーって言うんだっけか? そういうの持ってたりしないかな?」
女の子ってだいたいみんな、小さな鏡を常備してるよな?
少なくとも夏美は常に持ち歩いていた記憶があった。
というか、加恋は特に持ってそうなタイプに見える。
「そりゃ持ってるけどぉ、うーんと、それならさぁ?」
「それなら?」
「それならアタシが取ってあげた方が早いかなぁって? シュート、ちょっと屈んでくれるぅ?」
加恋がオレの目の前で、地面と水平にした右手の平を上から下、上から下と、2回上下させた。
屈んで、というジェスチャーだ。
どうやら髪に付いた葉っぱを、加恋が取ってくれるらしい。




