第60話 夏美を褒める修斗と、それを怪しむ加恋
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『わっ、夏美。今日の私服めちゃくちゃ可愛いな。すっごく似合ってる!』
『えへへ、でしょでしょ? ハイウェストスカートって言って、男子が好きなファッションなんだってー』
『たしかに好きかも。なんか、すごくいい感じだ』
『ねぇねぇ、男子的にはどのあたりがいいの? 実は私、あんまりピンと来ないんだよね』
『うーんと、そうだなぁ……。やっぱり高い位置でキュッと絞られている分だけ、胸が目立つのが――って、あ……っ』
『も、もう。修斗くんってば……えっち!』
『ご、ごめん! ほんとそういうつもりはなくてさ! いや、もろにそうだったかもなんだけど! 普段はそういうことぜんぜん思ってなくて!」
「じー……」
「きゅ、急に感想を聞かれたから、パッと思ったことをついそのまま言っちゃったって言うか! ああもう本当にごめんなさい! 本当に反省してるから! ほんとごめん!』
『ふふふっ、そんなに必死に謝らなくていいよ。修斗くんがそういうこと考える人じゃないって、私、知ってるもん』
『う、うん』
『だから『そういうこと』は、ま、まだもうちょっとだけ先なんだからねっ!』
『ちょっとだけ先って……えっ!?』
『も、もう! 修斗くんってば女の子にナニを言わせるのかな! もぅ、修斗くんは本当にえっちなんだからっ!』
『夏美が自分で言ったんじゃんか……』
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脳裏によぎった懐かしい記憶を、オレは横へやると、言った。
「夏美も似合ってるぞ。ハイウェストスカートって言うんだよな? なんか大人っぽくていいな」
「あ……! うん、ありがとう修斗くん」
夏美が一瞬、嬉しそうな顔をしてから、上目づかいでオレを見てきた。
オレはなんとなく視線を外せなくて、オレを見つめる夏美の澄んだ瞳を静かに見つめ返していると――。
「ファッションは知らないって言ったのにぃ、ハイウェストスカートとかぜんぜん知ってるじゃーん?」
加恋がオレと夏美の間ににゅうっと割り込んできた。
「別にハイウェストスカートくらいは誰でも知ってるだろ?」
「えー、なんか怪しーんですけどぉ?」
「なにが怪しいんだよ?」
「ナツミンにだけぇ細かく褒めるとか、怪しー」
「だから怪しくないから。夏美じゃなくても、加恋がハイウェストスカートだったらオレも言及してたから」
「ふーん?」
「ほんとだっての」
「ま、そうだよねっ。ハイウェストスカートくらい、誰でも知ってるよねっ。じゃあ行こっか。そろそろ予定の電車が来るから♪」
加恋はコロッと態度を変えると笑顔でそう言って――どうせ恋愛脳だから夏美を褒めた=夏美が好きとか勝手に思ったんだろう――スッと当たり前のようにオレの手を取って歩き出した。
「手を引かれなくても1人で歩けるよ」
「あははー。シュートってばなに言ってんのぉ。歩くためじゃなくて、手を繋ぎたいから繋いでるんだよぉ♪」
加恋が振り返りながら笑う。
「そうか。光栄だな」
「やーん♪ 顔色一つ変えないでサラリとお礼とか、相変わらずクールぅ♪」
そんな、加恋に手を引かれて歩くオレの後ろを、夏美が少し遅れてついてくる。
改札を抜けてホームに行くとすぐに電車がやってきて、オレたちは他愛もないことを話しながら電車に揺られ、目的地の「フジパーゲート前駅」についた。
そしてなぜだか加恋はその間ずっと、オレの手を握っていたのだった。




