表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/92

第55話 合わない呼吸

 ザ・チャラ男事件があってから数日の間。

 オレはまたアイツが絡んでこないかと警戒していたのだが、さすがに懲りたのかザ・チャラ男がオレたちの前に顔を見せることもなく、おかげでオレたちは平和な高校生活を送っていた。


 そうこうしているうちに、この前少し話していた球技大会の参加種目決めがあって、オレと夏美と加恋は3人とも希望通りに男女混合フットサルに参加することになった。


 今日は球技大会に向けて、体育の授業を使ってのチーム練習が行われたのだが。


「ちょっとぉ? ナツミンとシュート、ぜんぜん息が合ってないよぉ? 緊張してるのぉ? リラックスだよ、リラックスー♪」


 当然のようにチームを仕切っていた女王・加恋が、優しい言葉と人好きのする笑顔とともに――オレたちを傷つけないようにだろう――オレと夏美にダメ出しをしてきた。


「ご、ごめんなさい」


 明らかに硬い動きでミスばかりしていた夏美が、申し訳なさそうに肩を縮こまらせる。

 そんな夏美の隣で、しかしオレは反論を繰り出した。


「オレたちの息があってないのは事実かもしれないが、そうは言ってもだな? 男子の制限ルールがマジできついんだよ。もうまともにプレーできないレベルで」


 高校生ともなると、男女の運動能力の差は歴然としている。

 同じルールじゃ競うことすら難しい。


 ということなのだろう。

 うちの高校の男女混合フットサルでは、男子に対して「正直やり過ぎなのでは?」と思わざるを得ない、厳しすぎる特別ルールが課されていた。


1.男子はヘディング禁止。

2.男子は利き足で故意にボールを触るとファウル

3.攻守にかかわらず、男子から女子への故意の接触は全てファウル

4.女子の得点は3点


 かなり男子に厳しいルールだろ?


 オレは利き足が右足なんだが、ぶっちゃけ右足でしかボールをまともに扱えない。

 なのに左足だけでプレーするとか、これではまともなプレーなどできるはずもなかった。


 オレに限らず男子は皆、この「男子絶対に許さないルール」に大苦戦していた。


「激しく同意」

「まともにボールも蹴れないって言うか」

「俺はそもそも運動があまりだしな……」

「んだんだ」


 オレの言葉に、細川たち他の男子メンバーも一様にうんうんとうなずく。


 しかし加恋はそれくらいの言い訳はお見通しとばかりに、理路整然と詰めてきた。


「だからこそ息を合わせないとでしょぉ? チームプレーで補わなきゃ」


 端的かつ明快な加恋の言葉に、


「……なるほど」

 オレたちはぐうの音も出ないほどにうなずかされたのだった。


 とはいうものの。


「夏美! ワンツー!」


 オレは近く似た夏美に、左足でへろへろながらもなんとかパスを出すと、縦に走った。


 ワンツーパス(いわゆる壁パス)をしようとしたのだが、夏美は身体をビクリと強張らせると、ボールをあらぬ方向へと蹴ってしまっていた。


「ご、ごめんなさいっ。すぐ取ってくるね!」

 夏美が青い顔で、ガバっと頭を下げると駆け足でボールを取りに行く。


「ナツミーン! リラックスだよ、リラックスー♪」

「う、うん」


 その後も、オレと夏美のプレーはどうにも嚙み合わないままで、


 キーンコーンカーンコーン。

 体育の授業の終わりを告げるチャイムが体育館に響き、練習は終わりを告げたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ