第48話 ザ・チャラ男が現れた! 撃退しよう!
3人で通学するようになってからは、こんなこともあった。
高校からの帰り道。
全員が帰宅部なオレと夏美と加恋は、同じく帰宅部の生徒たちの群れに交じって3人で話しながら歩いていたのだが――。
高校最寄り駅の前まで来たところで、唐突にそれは起こった。
「うわっ、君ら2人ともヤバカワじゃん! 見たことない顔だけど、藤コーの新入生? 学校終わったの? 今から俺と遊ばない? メシでもスイーツでも奢るよ?」
いきなりチャラそうな風体の、ホストっぽい男が声をかけてきたのだ。
シルバーメッシュの無造作ヘアに、シルバーのピアス、夕方になって冷えてきたのに大きく開いた胸元には、これまたシルバーネックレス&グラサンを立て差ししている。
日焼けサロンにでもいったのか、こんがり焼けた顔には軽薄そうな笑みが浮かんでいた。
ちなみに「藤コー」とは俺たちの通う藤ノ宮高校の略称の1つだ。
だが短縮するほど長いわけでもないし、多くの生徒は普通に「藤ノ宮高校」と呼んでいる。
それはさておき。
絵にかいたようなザ・チャラい男のお誘いを、
「遠慮しまーす」
「ど、どうぞお構いなく!」
加恋は慣れた様子でほとんど無視するように。
夏美は身体をビクリと固まらせると、ひきつった愛想笑いを浮かべながら。
2人はそろって拒絶の言葉を伝えた。
「そう言わずにさー。今からゼミがあったんだけど、もう余裕でサボっちゃうわ。時間ないんなら、軽くお茶しようぜー?」
しかしザ・チャラ男は――ゼミって言ってるから大学生だな――断られてもまったく気にした様子もない。
「知らない人とは遊びませーん。他をあたってくださーい」
「ぜんぜんお構いなく!」
再び塩対応する加恋と、引きつった愛想笑いを浮かべながら断る夏美。
しかしザ・チャラ男はそれでもなお、軽薄な笑みを浮かべたまま食い下がってきた。
「それなら俺、藤コーのOBだから、つまり君らの先輩なわけ。ほら、知らない人じゃないっしょ? 先輩・後輩の仲じゃん」
滅茶苦茶すぎる論理だった。
ぐだぐだと話を続けて行く手を塞ぐナンパ男に、オレはいい加減、呆れながら言った。
「悪いんですけど、2人ともまったく興味ないみたいなんで、これ以上誘うのはやめてもらえませんか?」
年上相手なので、丁寧な言葉遣いを心掛ける。
こんなでも一応、人生の先輩だからな。
するとザ・チャラ男は急に態度を豹変させると、眉間にしわを寄せてオレを睨みつけながら罵ってきた。
「なんだよお前? 無関係はひっこんでろよ。っていうかいつから居たんだよ?」
「いや、最初からいましたけど、見えてなかったんですか?」
「なんだと?」
「というか無関係なのはそっちだと思うんですが」
オレたちはクラスメイトだが、アンタはそれこそ何万人といる高校OBの1人で、つまり完全に赤の他人だよな?
「はぁ? なんなのお前? 女の前だからってイキってんの?」
「いえ、普通にしてます」
「ああ? 調子乗ってんじゃねーぞ」
なんか逆切れされるしさ?
思考回路が違いすぎて、もはや意味が分からないんだが。
なんなのこの人?
あれか、凄んだら引くと思われてんだろうな。
昔のオレなら完全にビビッていたはず。
だが今は、身長だってザ・チャラ男よりオレの方が高いし、なによりオレには周囲の状況が見えていた。
都会とは言わないが街中にある駅前で、帰宅途中の生徒や通行人がたくさんいる。
すぐ近くの駅やコンビニには監視カメラも付いているだろうし、車にはドラレコだって標準装備だ。
それ以前に、揉め事になったら誰がスマホで撮影し始めるかわからない時代だ。
こんな状況で暴力沙汰などあり得ない。
オレが何と言ってこいつを撃退しようか考えていると、加恋が言った。




