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第45話 加恋、修斗、夏美――1軍グループ結成。

「特に理由はないけど。オナ中でも、お互いに家も知らないし」

「私は知っ――、あ、ううん。だ、だよね!」


 オレの返事を聞いた夏美が、何事か言いかけてから、慌てたように首を振りつつ同意した。


「あれ? 家も知らないの? へぇ、そーなんだ?」


「中学は同じでも、小学校は隣の学区だったからな」

「そ、そうなの! だからあんまり知らないんだよね~」


「じゃあなおさら、明日から一緒に来てほしーなぁ♪」


「一緒にって、何でだよ?」

「なおさらって、どういうこと?」


 オレと夏美がそろって疑問を口にすると、加恋は待ってましたとばかりに言った。


「だってそうしたら、アタシとシュートとナツミンの3人で登校できるでしょ?」


「3人で登校?」

「えっと、加恋ちゃんは一緒に登校したいの?」


「うん♪ なんか2人は気になるって言うかぁ? 波長が合うっていうかぁ? それにほら、教室では3人でお隣さんなわけでしょぉ? だから仲良くしたいなぁって。ダメかな?」


 自信満々のパーフェクトな笑顔で加恋がそう言った途端、教室が盛大にざわついた。


「お、おい! 今の聞いたか?」

「ああ!」

「昨日に続いて、加恋ちゃんが直々にお誘いしたぞ」

「加恋ちゃんの1軍グループはあの2人かぁ」

「加賀見くんと釘宮さん、いいなー。羨ましいなー」


 クラスメイト達が口々にそんなことを言い始めたのだ。


 まずったな。

 まさか何気ない会話から、そういう風に話を持って来られるとは。 


 教室の中に強烈な同調意識が生まれるとともに、加速度的に共通認識が広がっていくのがわかる。

 オレと夏美が、加恋のグループの「栄えある」一員に選ばれたという共通認識だ。


 もう完全にそういうことになっていた。


 強制するでもなく、威圧するでもなく。

 ただただ笑顔で、断れない空気感を一瞬にして作り出してみせる。


 皆が憧れるクラス女王としての人気をいかんなく使い、周囲の空気感を思い通りに作り上げ、自分の願った通りに物事を進めようとする加恋のやり口は、実に巧妙だ。


 まさにカリスマ。


 加恋に対してやや引いた気持ちを持っていたオレはそれに気づけたが、加恋の魅力にとらわれたクラスメイト達はまったく気づいていないことだろう。


 そして現状クラスメイトたちにあるのは、オレと夏美に対する大きな羨望と、わずかの嫉妬だ。

 だが万が一ここで加恋のお願いを断りでもすれば、それは「何様のつもりだ」という反感へと変わるに違いない。


 みんながなりたい加恋の1軍メンバーに選ばれながら、ナニ断ってんだこのヤロウってな。

 そういう状況を、加恋は笑顔のままに作り出したのだ。


 夏美がオレの答えを窺うように、視線を向けてくる。


「じゃあ明日から夏美と同じ電車で、降りたら加恋と合流ってことで、夏美はいいか?」

「私は全然、オッケーだよ。一本後ろの電車に乗ればいいだけだし」


 夏美がこくこくとうなずくと、加恋にゃぱーっと笑った。


「やった♪ じゃあ駅で待ってるからねっ♪ 2人とも遅れないでよね?」


「電車が遅れなきゃ大丈夫だ。こう見えて規則正しい生活をしているんだ」

「私も朝起きるのは得意だから、大丈夫だよ」


 と、

 キーンコーンカーンコーン。


 まるでオレたちの会話が終わるのを待っていたかのように、予鈴がなり、おのおの散っていたクラスメイト達が自分の席へと大移動を始める。


 オレたちを1軍グループに囲うという目的を達した加恋も、ひらひらと手を振りなら自分の席に座って、机の上に置きっぱなしだった鞄から、教科書やらノートやらを取り出し始めた。


 こうしてオレと夏美と加恋は朝、一緒に登校することになり。


 さらにはオレと夏美は、加恋の1軍グループのメンバーに選ばれてしまったのだった。


 ……どうしてこうなった?


 よりにもよって恋愛脳の加恋と仲良くなるなんて、高校入学当初に思い描いていた高校生活とは、かなりかけ離れつつあるような……?


 オレは恋愛とは無縁の、どこにでもある普通で平凡な高校生活を送りたいだけなのに――。

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