第3話 俺が恋愛不感症になったわけ。(3)
俺と釘宮さんはお付き合いを始めたものの、
「友達に冷やかされるのは恥ずかしいから、みんなには隠れてこっそり付き合うっていうのはダメかな?」
釘宮さんにそう提案されて、俺たちは隠れカップルをすることになった。
実を言うと釘宮さんの気持ちは、俺も結構わかってしまったりする。
彼氏ができたとなれば、釘宮さんがグループ内で弄られるのは間違いない。
お相手が冴えないモブ男子ともなれば、なおさらだ。
盛大に冷やかされることは想像に難くない。
だけどそもそもの話、俺は彼らのやっている「弄り」があまり好きではなかったのだ。
他人のプライバシーにズケズケと踏み込んで、「ウェーイ!」って全員で囃し立てる。
あれの何が楽しいんだろうか?
心底わからないよ。
まぁ向こうからしたら、俺たちみたいな陰キャ男子が教室の隅っこでチマチマゲームをしてることが理解できないだろうから、お互い様ではあるんだろうけど。
まぁそういう理由で、俺のことで釘宮さんがグループの中で弄られるのは、俺としては絶対に嫌だった。
彼らのことだ、「どこまでやったの?」とか平気で聞きそうだから。
というか絶対に聞く。
聞いて聞いていじりたおす。
俺にはその確信があった。
釘宮さんにそんな恥ずかしい思いをさせるわけにはいかない。
――か、彼氏として。こほん。
だから俺たちは、学校では今まで通り俺たちはただのクラスメイトを演じることにした。
というか俺も、周囲に付き合っていることを知られるのは恥ずかしかったので、この提案は渡りに船だった。
いやだって、女子と付き合ってるとか知られたらなんかすごく恥ずかしいだろ!?
もちろん隠れカップルといえ、カップルであることに違いはない。
緊張していたからか付き合い始めの頃はどこかよそよそしい態度だった釘宮さんも、付き合ううちに打ち解けてフレンドリーになってきた。
例えば休み時間に、俺たちは暇さえあればこっそりラインで連絡を取り合う。
夏美:さっきの数学の小テスト
どうだった?
できた?
修斗:この前やったところだったし
一応ぜんぶ解けたよ
夏美:うらやま~(´;ω;`)
修斗:もしかしてダメだった感じ?
夏美:うん、じつは……
修斗:数学は苦手なの?
夏美:むしろきらいー!(>_<)
授業中はひーひー言ってるよ~!
修斗:よかったら俺が教えようか?
数学は割と得意なんだ
夏美:ほんと!?
すごく助かるかも~( *´艸`)
修斗:じゃあ今度、勉強会しようよ
次の土曜に市営図書館に行かない?
図書館ならちょっと遠いし、誰も来ないだろうから
夏美:りょ!頼りになる~!
(人''▽`)ありがとう☆
修斗:一応、彼氏だからね
夏美:いきなり恥ずかしいのは禁止!
みんなの前でにやついちゃうじゃんか(/ω\)
修斗:あはは、ごめん
気を付けるよ
夏美:罰として勉強会では優しく教えるよーに!
俺が『おけまる!』の猫スタンプを送ると、夏美は『せんきゅー!』の猫スタンプを返してきた。
なーんて感じの、なんとも他愛のないやり取りだ。
だけどそれが人生初の彼女相手ともなれば、文字を一つ打ち込むだけで、俺の心は幸せで満たされていくのだった。
そして、一人でスマホをいじっているか、もしくはオタ友達と集まって、最近人気の格ゲーでポイントを盛れただの、有名プロとマッチングしただの、どうでもいい身内話をダラダラしていた俺とは違い。
釘宮さんはキラキラグループ全体に気を使いながら、自然なタイミングを上手く見計らって隙間ラインをしていた。
時々、他のキラキラメンバーから、
「最近よくラインしてるよな? 誰と連絡してんの? もしかしてオトコか?」
とか聞かれても、
「普通にお母さんだよ。あれこれ心配性なんだー」
なんて上手にかわしていた。
告白されて以降、釘宮さんを毎日意識して見るようになって、キラキラグループのメンバーでいるのも大変なんだなと、なんとなく思う俺だった。
ちなみに俺の陰キャグループの構成メンバーは、「もしかして彼女ができた?」などという発想に至りはしない。
「ソシャゲの周回か、ゲームの攻略サイトでも見てんだろうな。そんなことより俺も周回周回!」ってな感じだ。
多分、俺が当事者でなかったら同じように思ったことだろう。
女の子から、しかもキラキラグループのキラキラ女子から告白されたなんて、夢にも思わないはずだ。
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