第13話 入学式の日、オレは夏美と再会した。
高校の入学式の日。
「おー、予報通りいい天気だな。今日からオレも高校生。まるで世界がオレの新たな門出に、太陽の祝福を授けてくれているかのようだ――なんてな」
天気がいいこともあって、オレは晴れやかな気分でミニポエムなどを口にしつつ、今日から通う高校へと向かっていた。
オレの通う藤ノ宮高校は地元から電車で2駅の距離にある。
まぁまぁ近いんじゃないだろうか。
距離的にはチャリ通も可能な距離なんだけど、学校周辺の道が狭く、坂と階段も多いので電車通学を推奨とのことだった。
それはさておき。
オレは高校の最寄り駅で電車を降りると、オレと同じまっさらな制服を着た新入生の群れに交じって歩き始め――ようとして。
駅から近くの団地へと向かう階段で、おばあちゃんの荷物を運んであげている女の子を見かけた。
後ろ姿だけで顔は見えないが、藤ノ宮高校の女子制服を着ていて、ショッピングキャリー(いわゆるコロコロ)を抱きかかえながら、40段くらいある階段をゆっくりと上っている。
時々フラフラしているところを見ると、かなりいっぱいいっぱいのようだ。
「多分、新入生だよな? あんなとろとろペースで階段の上まで行ってたら入学式に遅刻するぞ? まぁオレには関係ないがな……」
同じ高校の新入生だからってだけで、オレが手助けする義務も義理もありはしない。
しないんだが、見て見ぬ振りをするのはどうにも気が引けたオレは、高校へと向かう新入生の波から抜け出ると、階段を上る2人の所へと近づいていった。
「女の子だとフラフラしても、男のオレならすぐに上まで持って上がれるだろうしな」
中学の間、毎日の筋トレ&週に2回ほどのランニングを欠かさなかったオレは、ムキムキではないもののまぁまぁ筋肉質な身体つきになっていた。
トレーニングで成長ホルモンがたくさん出たのか、身長も172㎝とかなり伸びている。
昔のゲームオタクだったオレならいざ知らず、今のオレなら女の子だとふらつくような荷物でも余裕で運べるはずだ。
あとはまぁ、入学式という大事な日に遅刻しそうになってまで人助けをするお人よしに、少し興味があった。
と言っても、恋愛的な意味ではまったくない。
恋愛脳や出会い厨でもあるまいし、男とか女にかかわらず、純粋にどんな奴なのか知りたかっただけだ。
「お人よしってのは得てして損をするもんだからな」
それこそ今、この子が遅刻しそうになっているように。
正直者がバカを見るのは、オレはあまり好きじゃあないんだ。
だから手助けをしよう。
「おーい、そんなペースじゃ入学式に遅れるぞ? その荷物はオレが持つよ。ここはオレに任せてくれないか?」
オレが声をかけると、階段をフラフラと上っていた女の子が、足を止めて振り向いた。
「え――っ」
小さな声とともに振り向いた動作に合わせて、ハーフポニーの黒髪がふわりと柔らかに流れる。
その動きにオレは強烈な既視感を覚えていた。
振り向いた女の子がオレを見る。
目が合った瞬間に、女の子の目と口が大きく見開かれた。
多分だけどオレも同じような顔をしていたに違いなかった。
荷物を持とうと差し出していたオレの手は、中途半端なところで止まったまま。
女の子もまた、荷物を抱えたままで動きを止めていた。
だが、それもそのはず。
なぜならその女の子とは他でもない、釘宮夏美だったからだ――。




