第1話 俺が恋愛不感症になったわけ。(1)
この作品を見つけていただき、ありがとうございます。
当作には、配信者、ざまぁ、追放といった流行り要素はありません。
代わりに、高校生のピュアな純愛をひたすらまっすぐに描きました。
時に甘く、時に切ない。だけどどこまでも純粋な恋の物語を楽しんで貰えると嬉しいです。
「加賀見君のことが好きです。付き合ってください」
俺――加賀見修斗は、中学1年のクリスマスイブに、クラスの女子から告白された。
場所は自分の教室。
時間は放課後。
告白してきたのは釘宮夏美という、クラスメイトの女の子だった。
夏美は、美少女やイケメンが集まる通称「キラキラグループ」のメンバーで。
聞き役のポジションで、いつもにこにこしながら、メンバーたちの話を楽しそうに聞いては相槌を打ったり。
グループを率いる千堂真紀――通称「女王様」から、主に恋愛話であーだこーだと弄られたりしていた。
本人は、
「私は真紀ちゃんみたいに可愛くないから、彼氏とか浮いた話は全然だよ」
みたいなことを、恋愛話になるたびに言っていたけれど。
俺たちその他大勢のモブ男子たち――その定義は女子とほとんど話さないことだ――から見たら、夏美はそれこそ雲の上の存在ってくらいに可愛かったし。
なにより、言いたいことを好き放題にズケズケ言っては大きな声でギャハハと笑う他のメンバーたちよりも、優しくて控えめな夏美ははるかに素敵な女の子に見えた。
だから今まで一度も話したことがなかった夏美から、
「加賀見君のことが好きです。付き合ってください」
って言われた時はビックリしたし、驚いたし、驚愕した。
頭の中で何度も言葉の意味を確認したし、夢かと思って自分の頬を思いっきりつねってみたりもした。
「ど、どうしてほっぺをつねったの?」
そんな俺を見て、夏美はびくりと身体を震わせる。
ヤバい。
挙動不審過ぎて、キモかったのかもしれない。
いや「かもしれない」どころか、どう見てもキモいよな。
ヤバいぞ。
せっかく俺みたいなノンキラなゲームオタク男子を好きになってくれて、あまつさえ告白までしてくれたのに、今ので一気に冷めちゃったかもしれない。
「ごめん! 釘宮さんに告白されるなんて夢みたいだなって思っちゃって。それで夢じゃないことを確認しようと思って、つい頬をつねっちゃったんだ」
俺は慌てて言い訳をした。
自分でもわかるくらいに早口でダサダサだったけど、キモがられるよりはましだ。
いや、早口で言い訳するのもキモさで言うとたいがいか……?
「そ、そうだったんだ。あの、それで加賀見君の答えは――」
それはもう緊張した面持ちで、急かすように尋ねてくる釘宮さん。
その顔は妙に青白く、顔色が悪く見えた。
告白が断られると思って、緊張しすぎているのだろうか?
俺はそんな風に察しを付ける。
釘宮さんに告白されてノーっていう男子は、まずいないと思うんだけどな。
俺だってそうだ。
悩む理由なんてなにもありゃしない。
「もちろんOKだよ。釘宮さんはすごく可愛いし、優しいし、素敵な女の子で。俺、好きって言ってもらえてすごく嬉しかった」
すごく恥ずかしかったのに、自分でも信じられないくらいに自然に、素直な気持ちが口をついて出た。
恥ずかしさや嬉しさや緊張が、俺の精神の限界をぶち抜いて、一周回って落ち着いたのかもしれない。
ともあれこれでカップル成立。
今は不安げな釘宮さんも、OKを貰って喜ぶことだろう。
いつもキラキラグループで見せているあの素敵な笑顔が、早く見たいな。
なによりこれからは、あの笑顔を俺に向けてもらえるようになるんだ。
その事実が心の底から嬉しかった。
「う、うん」
しかし釘宮さんはというと、相変わらず不安げな顔をしたままで、なぜかチラチラと教室の入り口のあたりを見ていた――ような気がした。
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