第1話 出発
あたしはくまさんリュックにお弁当二つをしまい、くまさんリュックを背負うとリビングを出た。
玄関はリビングを出てすぐにある。
玄関のドアにある不透明の硝子から陽が差し込んでいて明るい。出発には良い天気だ。
あたしはドアを開けようと手を伸ばすが届かない。
「たんぽぽ!」
…
「たんぽぽ」
あれ、たんぽぽが来ない。
すると、後ろから気配がし、振り返るとママが立っていた。いつもよりニコニコしままが玄関のドアの鍵を開けてくれた。
「行ってらっしゃい」
あたしは気持ち悪さを感じたが、遠出が楽しみで頭からすぐに消えた。
ドアを開け外に出ると日差しが暖かく気持ちいい。
「たんぽぽ」
「たんぽぽ」
あれ、また来ない。
ん、あたしは肩にかけているはずのポシェットを探す。
しかし、ポシェットが見つからない。
しまったぁ。ポシェットを忘れた。お弁当に気が向いていてポシェットに気が回らなかった。
玄関ドアノブに手をかけようと手を伸ばすが届かない。
ポシェットを忘れるなんて。
今後悔しても仕方ない。あたしは玄関ドアを叩いた。ままの事だからドアの前で様子を伺っているに違いない。
「ままー、ドア開けてくれたらぱぱの秘密教えてあげる」
すると鍵を開ける音がしてがチャッと玄関ドアが開いた。
「すみちゃんお帰り早かったわね」
「うん。ちょっと忘れ物」
「そう、大切なものを忘れるのにお弁当は忘れないのね」
ままは意地悪い顔をしてあたしを見つめる。
「ぱぱ、タンスの後ろに何かしまってたよ」
あたしはままと玄関の間をすり抜けあたしの部屋に入った。
ポシェットはドアに近い壁にかけてある。
ポシェットの外側に書かれているたんぽぽを見て、壁からポシェットを外し肩にかけると部屋を出て玄関に向かった。玄関には既にままはいなかった。今頃寝室のタンスの裏を探している事だろう。
「たんぽぽ」
あたしはたんぽぽを呼び出した。
たんぽぽはポシェットから出ると「ピュー」と気持ちよさそうにあたしを見て座った。
あたしはたんぽぽに乗ると玄関ドアノブを回し外に出ると、もものお家目掛け走り出した。