プロローグ
あたしはウキウキしている。
リビングのドアを開けるといい香りがする。
「おはようございます」
思いっきりご挨拶。
でんぐり返し!
今日は二度寝はしない。
あたしはサッと立ち上がると食卓に向かった。
「すみれおはよう」
「すみちゃんおはよう」
ぱぱはいつもとおんなじ。文字がいっぱい書いている紙を横幅いっぱいにひろげている。
あたしはももとお揃いの椅子をずらして座る。
ままは出来立てのご飯をお盆に乗せて食卓に来た。
「すみちゃん、準備は出来たの?」
「はい!」
あたしは元気いっぱいに答えた。
おねんね前に確認した。くまさんリュックには冒険七つ道具。水中眼鏡、膝掛け、縄跳び、指し棒、ホイッスル、鈴。そして散弾水鉄砲。ぱぱが昨日作ってくれた特殊な液体をいっぱい入れた。
それと…
何か忘れている気がして、あたしは辺りを見回す。
「あっ」
あたしは小さな声で言った。
大変な物を忘れていた!
「まま、お弁当二つ」
「すみちゃん、ももちゃんのお弁当はままさんが作ってくれるでしょ」
「ままさん忘れるかもしれない。きっと忘れる」
ままはため息をついてキッチンへ戻って行った。
今日から日本で一番大きな山に行くのだ。
富士山に。