79 捧げる者
最終話となります(_ _)
「カナター、これ、止め射していいのかな。」
これこれ、早まるんじゃありません。
元勇者が魔王の息の根を止めたいようでうずうずしている。
魔王にはもう何の力もないだろうけど、一応僕の活動制限で拘束している。
「意識も戻ってないのにやるのはもったいないのー。」
「この世に生を受けたことを後悔させてやるの。」
「あーしもじっくり甚振りたい系。」
そんなところで意外な一面をのぞかせないでください。
「神意排他能力増幅機関のこともあるのだ。聞けるだけのことは聞き出さないとなのだ。」
だからこそじっくり拷問して吐かせるとか言ってるんで怖いんですけど。
大人なんですから良識のある行動をしましょうね。
ここで僕に通知が届く。差出人は…えっ!?
「…なんでまだ生きてるっちゃ?」
魔王も意識を取り戻したようだ。
そっちはみんなに任せることにしよう。
「なんにゃ。死にたかったにゃ?」
「貴様らが手を下さなくても世界の仕組みが放っておくはずがないと思っただけっちゃ。」
「お主が言っている世界の仕組みとは神意排他能力増幅機関のことでござるか。」
「それの名前は知らないっちゃ。けど、音の響きから伝わるのは多分それで合ってるっちゃ。」
「知っていることを話すのじゃ。洗いざらいじゃぞ。」
「判ったっちゃ。話してやるっちゃ。」
魔王が語ったのはこんなことだ。
自分のいた世界の面倒をみるのがイヤになってこの世界に来たところ、気付いた時にはこの体に納まっていたそうだ。
別の世界を征服してやろうという気概が全くなくはなかったので、世界の仕組みに気付いた途端に掌握しようと思わず動いてしまい、そこからは世界の仕組みとの一進一退の攻防をするようになってしまったんだとか。
この世界の中では自分が「魔王」という存在であり、いずれ「勇者」が倒しに来るということも知った上で、世界の仕組みとの攻防を続けつつ「勇者」の力を奪い取る方法を生み出したらしい。
「魔王」にとって最初の「勇者」は格好の獲物になってしまい、それに味をしめたことで力を貯えることに専念するようになったとのことだ。
「なに訳わかんないこと言ってるのよ。ワタシにはさっぱりわかんなくてさっぱりしたものが食べたくなっちゃってるわよ。ってことで、言い残すことはもうないのかしら。」
大剣を振りかぶる元勇者の前に進み出て、僕特製の燻製肉で「待て」をする。
腹を上にして寝転がるな。「待て」だ。間違えるな。
「魔王の言ってることは概ね正しいみたいだ。」
「カナタ?何故そんなことが判るのだ?」
「別の視点からの報告と比べてもそれほど食い違うところがなかったんだよね。」
「別の視点とは何でござるか。」
「神意排他能力増幅機関の視点だ。」
十英傑の視線が一斉に僕に集まる。
そう、さっき僕宛に届いた通知は神意排他能力増幅機関が差出人だったんだよね。それを読みながら魔王の言っていることを聞き比べていたが、出鱈目などではなく互いが互いを裏付けるようなものだった。しかも、神意排他能力増幅機関は魔王の攻撃を回避するためにあらゆる手段を行使した結果、「大いなる存在」との繋がりが切れてしまったらしい。神意排他能力増幅機関も魔王を懸命に排除しようとしていたが、互いに決定的なことができずに今に至ったということだ。
「そうだったんにゃ。」
「結局、こいつが全ての元凶なのー。」
「でも、これのおかげであーしらはカナタに出会えたなし。」
「そうとも言えるの。それで、カナタはどうするの。」
それなんだけど…。
◇◆◇
「ぐはっ。信じられないっちゃ…。」
無敵状態の魔王をプリメーラの剣が袈裟懸けで両断する。
何とも呆気ないものだ。
「貴様が弱すぎるのだ。」
「こんなんじゃ、ワタシすっとしないんだけど。」
何が気に入らないんだ。
「だって、魔王倒してもカナタがワタシの処女奪ってくれないんだもん。」
だから、そんな約束をした覚えはない。
「ひどいよ。カナタなしではいられないカラダにしておいて指一本入れないなんて。」
誰が何をしたって言うんだ。それに、それを言うなら入れないじゃなくて触れないの間違いだろう。って、入れないでも間違いではないか。触れてさえいないわけだしってそんな問題なのか。
「「統べる者」はひどい男すぎるっちゃ。先っぽぐらい入れてやるっちゃ。」
「お主如きがカナタを語るなでござる。」
「横暴っちゃ。」
魔王が両断された状態から復活しているが、不思議でも不死身でもない。
だって、ここは「夢中生有」の中だからね。
あの後、魔王には罰として、自分が変えてしまった世界の仕組みを元通りにすることにその身を捧げさせることにした。神意排他能力増幅機関だけではなかなか手を加えられたところを把握しきれないということもあったからだ。そのついでに、こうやって憂さ晴らし…じゃなくて僕たちの訓練の相手をすることもやらせている。既にこの世界には僕らの脅威になるようなものはいないが、一層の強さを求めて自らを鍛えている。って、どこの戦闘民族だよ。ただ、魔王は元から強さという点では疑問があったので僕たちが更に強さを伸ばした今では弱いもの虐めの様相を呈してきている。ある程度、神意排他能力増幅機関の修復が進んだら魔王を鍛えなおしてやった方がいいかもしれない。
そして勇者には相変わらず僕らの全てを明かしてはいないが、これまでの功績を踏まえてこうやって交流は続けている感じだ。ことあるごとに僕に肉体関係を迫ってくるのが輪をかけて日常茶飯事になっているので、もはや冗談としか思わないことにしている。
「そなたもよく飽きずにカナタに言い寄るのじゃ。」
「飽きるわけないじゃない。カナタを一目見た時からビビッてイッちゃったんだから。」
「とんでもないスケベなのー。」
「ここまで突き抜けてると呆れを通り越してしびれるにゃ。」
「だからまだ突き抜いてもらってないってば。」
「じゃあ代わりに俺様が…。」
「女の敵なの。」
「ご愁傷さまだな。」
ユイトセインの炎熱魔法がその威力を遺憾なく発揮した後には無残な焼死体がひとつ。
それにゼクスベルクが手を合わせている。
「ハルカ殿はそんなにカナタがいいであるか。」
「いいなんてもんじゃないわよ。カナタのためなら一人エッチだって我慢するし、穴という穴を全てカナタだけに捧げるわ。」
「ただの色魔なし。肉欲の権化認定してやるなし。」
「失礼ね、純愛でしょ。」
それのどこが純愛だ。純愛さんに謝れ。
こちらで本編は完結となります。
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