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捧げる者  作者: 深香月玲
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78 最終決戦 後編

元勇者の欲求不満解消を眺めながら、順に十英傑からMPを貰っていく。


「元勇者が活き活きしているでござる。拙者も一回ぐらいやってきていいでござるか。」


サンクレイドもやりたいんだ。魔素領域(ダンジョン)斬りって人それぞれって聞いたけど、サンクレイドのはどんな感じなんだろう。


「拙者のは何とも言えない不快な音が響くだけでござる。」


そうなんだ。何でそんな笑顔なんだろう。周りの人に迷惑がかかるからやめようね。


「判ったでござる。」


何でそんな悲しそうなんだろう。

入れ替わりでプリメーラが来た。


「魔王も戦ってみれば存外大したことはなかったな。」


そうだね。力を奪う能力に頼り過ぎて実際にはほとんど戦闘らしい戦闘をしたことがなかったのかもね。


「やはり何事も反復するが大切なのだな。ということで、これからもよろしく頼むのだ。」


こんな時でも顔を赤らめて何をよろしくしてほしいんだろう。何をしてほしいのかちゃんと言ってごらん。


「カナタは判っているくせに意地悪なのだ。早くMPを持っていくのだ。」


はいはい。魔王の技能(スキル)階位(レベル)を削って変換したMPはそれほど多くはない。これは魔王を弱体化することを主目的として、MPの変換効率には重きを置かなかったからだ。そもそもの技能(スキル)を構成するMPと同量に変換する効果にすると必要とする素材やMPがとんでもないことになりそうだったのもある。なので、技能(スキル)に傷をつけてそれが内包しているMPで内側から破壊するような感じにしてみたんだよね。


「んっ。」


気が付いたらプリメーラが更に顔を赤らめている。おっといかん。MPをもらうための繋がりがずっと維持されてしまっていたようだ。


「もうちょっとこのままにしてほしいのだ。さっきからずっとイキッ放しみたいですごくいいのだ。」


まだ魔王と決着ついてないのに不謹慎ですよ。って、あれ?とんでもないことに気がついた。気がついてしまった。そうか、デミールの言っていたのはこういうことだったんだ。そうと分かれば即実行だ。


「プリム、どうしたのじゃ。お肌つやつやなのじゃ。」


「な、なんでもないのだ。ま、魔王を見てくるのだ。」


僕から離れて前衛に戻ろうとするプリメーラをセットフィーネが見咎めているが、そんなことを気にするより早くお願いしないとね。何をだって?それは後のお楽しみってことにしておいてください。


「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃー。これはさっき吹き飛ばしてくれた分にゃー。」


キャトレーブが寸分違わず同じ所を連打するとそこから勢いよく何かが噴き出す。


「ぐはっ。なんか出たっちゃ。貴様ら、異常すぎるっちゃ。常識ってものを弁えるっちゃ。」


「常識って何にゃ?それ、おいしいにゃ?にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃー。これはこの前、力を奪われた分にゃー。」


「ぐふぅ。そうだっちゃ、貴様ら。取引をするっちゃ。」


「取引なんて必要ないの。お前を排除すればそれで終わりなの。」


「聞くっちゃ。我がこの世界の仕組みを掌握した暁には貴様らに永遠の命をやるっちゃ。」


「永遠の命なんていらないのー。退屈なだけなのー。」


「なら、好きなものをくれてやるっちゃ。世界そのものでもいいっちゃ。いかようにも世界の仕組みを変えてやるっちゃ。」


「あー、やっぱこいつが神意排他能力増幅機関(システム)をどうにかしよーとしてるってことで間違いないっぽい。」


「へ?どういうことだっちゃ!?」


「それはお前が知る必要はないぜ。とっとと俺様たちにやられて退場しやがれ。」


「そうであるな。」


「ぶっ飛ばすだ。」


ツヴァイクの槍が突いたところは色がどす黒く変わり、ドライガンの斧が斬りつけたところは瘡蓋ができたみたいな感じになり、ゼクスベルクの金砕棒が殴りつけたところからは反響音が鳴り響く。


「自分たちは永遠の命も世界も要らぬのだ。カナタと愛の結晶を育み、たくさんの子供や孫に囲まれて幸せな一生を終えるのだからな。」


プリメーラの剣が翻ると泡がはじけ飛んだ。

本当に魔素領域(ダンジョン)斬りの作用って人それぞれなんだね。


「話にならないっちゃ。こうなったら一人でも多く道連れにしてやるっちゃ。」


どうやら無敵状態を解除して最後の悪足搔きをするつもりらしい。でも判断するのが遅かったね。僕の準備が完了しちゃっているもの。


『みんな、下がって。』


さっきの100万MPを込めた一撃を遥かに上回る《《2000万》》MPを込めた一撃が直撃寸前だ。


「これはっ!?こんな…最期は…イヤだっちゃ。」


魔王も一人で頑張ったけど、相手が悪かったね。

僕の一撃で倒れ伏した魔王は技能(スキル)が全てなくなり、階位(レベル)は1になっている。基本能力値と言うべきSTRとかの数値も幼児並みだ。


「魔王は死んだでござるか。」


僕の技能(スキル)はMPに働きかけるもので物理的な破壊はないはずなので死んではいないと思う。ただ、膨大なMPを相殺するために余計な負荷はかかったかもしれない。


「予定では500万MPで40から50ぐらいの階位(レベル)しか削れないはずだったのじゃ。妾たちが削ったMPを回収したとしても1まで削ったのはちと多すぎるのじゃ。どういうことなのじゃ。」


そうだよね。みんなから回収したMPを合わせても600万にいってなかったんだよね。でも、プリメーラから回収してる時に気付いちゃったんだよ。MP0問題の答えに。「捧げる者」が僕に力を渡してくれる時に、僕との間に回路みたいな繋がりができて力が流れ込んで来ている感じなんだけど、これまではどちらからともなくその繋がりを切ってたから判っていなかったことがあるってことが判ったんだ。デミールもそんなようなことは言っていたけど、はっきりくっきりしたことは判っていなかったんだよね。ああ、説明が回りくどくなってしまったけど、みんなからMPが0になるように力を貰ってもすぐに1になっていたのは、多分僕たちが大気中のマナを吸収してか何らかの方法で0の状態のままにならないようにしているからだったんだよね。だとすると「捧げる者」との繋がりを維持して力を貰い続けるとどうなるか、もう分かるよね。0になってもすぐに1になるから極少量だけど延々とMPが供給されるんだ。一人だとそれなりの量を貰うためには結構時間がかかるけど僕には一万人を超える「捧げる者」がいるわけで、ここにいない「捧げる者」全員に通知(メッセージ)でお願いして繋いでもらったというわけだ。1500万ほど貰うのに5分かからなかったよ。へ?肉体的な接触なしで力の受け渡しができるのかって。「青」の状態では無理かもしれないけど「紫」になってしまえばどうってことなかったよ。え?さっきもプリメーラから直接もらっていたじゃないかって?そりゃ、彼女たちはどうせなら直接渡したいって頑として譲らないからであって、実際男性陣はそこら辺に拘らないから「ちょうだい」「はい、どうぞ」ぐらいで済ませてたじゃない。


「それでプリムはあんなにお肌艶々だったのじゃな。カナタ、妾も繋ぎっぱなしを所望するのじゃ。」


「そんななるにゃ?うちもにゃ。」


この後、拙者もあーしもと女性陣全員からせがまれたのは言うまでもない。

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