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捧げる者  作者: 深香月玲
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68 完全制覇

アムラダの後は一日とちょっとでギアードの残りの都市を回った。この地域は僕がアムラダを旅立ってから立ち寄った都市があり「紫」と「青」が入り混じっていたりするので、これまでとはちょっと異なる方法で対面することになった。基本的には「紫」にはアムラダの時と同じように説明する必要があるのでまずは別室で待機してもらい、「青」に「紫」になってもらうと別室の方に合流して、最後にまとめて説明していた。説明の時には僕も同席していたけど、アムラダの時のように僕に喋らせるととりとめがなくなってしまうので、基本的にはフィオレンティーナが説明役をこなしていた。ミースでは中央広場の悪夢に匹敵する出来事もあったんだけど、ここではあえて語らずに流してしまうことにしよう。


ギアードを回り終えると次は南西大陸の方を回り始めたんだけど、最初の内は赤道に近いところが多くて小六の月に入った頃なのだが暑さが厳しいところが多かった。フォルティスも赤道直下ではあるんだけど、標高が少し高めで海岸線も近いため昼間でもそこまで暑くなることはない。南西大陸の他の特徴としては砂漠地帯が多いことと大きな内海があることかな。その内海の総面積は小大陸に匹敵するそうだ。この内海は大青洋とも大緑海ともつながっていないので厳密には湖ということになるが、あまりの大きさと美しさから紺碧内海と呼ばれていて、実際に見たその水の色は吸い込まれそうな深く濃い青でした。その内海にも島がいくつかありそのうちの1つに小都市があったんだけど、凪の時に星空が水面に映って天地に広がる光景はとても幻想的でもう一度訪れたい場所の一つになったよ。


最後は小大陸のオルデスにおるです。使い古されたダジャレであいすいませーん。


「これですべての「捧げる者」に会って、地上の地図(マップ)情報が揃ったことになりますね。お疲れさまでした。」


おー、例の数字が本当に「10980/10980」になっているのを見ると感慨深いものがあるねえ。タララタッタッターとかテテテテーテーテーテッテテーなんて効果音が聞こえるかと思ったがそんなことはないようだ。効果音?「統べる者」として超覚醒したなんて感じることも特にない。数は数、それはそれということなのだろう。

地図(マップ)情報も全大陸の空白地帯が揃い、実質的にこれで地上に僕の目の届かないところがなくなったわけで、超越感に近いものがあるね。これで「魔王」を探すことができるはずだが、それはプリメーラたちと達成して喜びを共有することにしようと思う。

しかし、この両方の偉業を年が明ける前に達成できたのもフィオレンティーナのおかげですよ。細かい計画の調整のほとんどをやってもらったものね。


「そんなことはないですよ。カナタさんの転移があってこそですから私はちょっとお手伝いをしただけです。」


いやいや、フィオレンティーナにおんぶに抱っこにくんずほぐれつしていただけの僕なんて大したことはしてないですよ。


「それじゃあ全部揃ったことをお祝いしてしちゃいましょうか。」


相変わらずのとびきりの笑顔で僕を誘ってくるので断る余地なんてありません。そんな罰当たりなことができるわけないじゃないですか。


◇◆◇


「それでいつも通りで特段変わったことはなかったように思うんですが、「捧げる者」全員に会って何も変化はなかったんですか。」


薄布に包まっただけのフィオレンティーナがそんなことを聞いてくる。

さっき、自分でも思ったがこれといった変化は感じていない。イケメンになったとか、超人的な力が出せるようになったとか、一発必中で孕ませることができるようになったなんてことは一切ないようです。最後のが特に余計でしたね。

すいません、代わり映えがなくてしょうもなかったですか。


「いえいえ、カナタさんに不満があるとかではないのですよ。ただ、「捧げる者」全員一致団結全力全開でどんな凄いことになるんだろうと勝手に少し期待していただけの話でして。」


フィオレンティーナはそっちの方の限界突破が気になっていたらしい。一体どんな変化を想像していたのだろう。一万人がかりで襲われるような感じだったりすると恐怖心の方が凄そうなんだけど。


「だから、ちょっと気になっただけですのでちゃんと満足していますよ。次回もこのままでいいので優しくしてくださいね。」


そんなお顔で言われたら次回までなんて待てるわけがないじゃないですか。二回戦突入です。


◇◆◇


「そう言えば、空白地帯の地図(マップ)情報なんて集めて何をするつもりかちゃんと聞いてませんでしたね。」


あれ?そうでしたっけ?


「カナタさんのやることですからちゃんと目的あってのことだとは思っていますが、一区切りついたところですし教えていただけると嬉しいです。」


ざっくり言っちゃうと魔王を見つけちゃおうってことなんですよね。余計な心配をかけないように掻い摘んで説明しておく。


「なるほど。それで「青」の情報もあれほど簡単に集めることができていたんですね。不思議だとは思っていましたが、聞いて改めて納得いたしました。それにしても、私にもそんな力があれば世界中のどこにいてもカナタさんを見つけられるのにすごく残念です。」


ちょっと拗ねたように言うフィオレンティーナが可愛すぎて三回戦突入しました。


◇◆◇


「それでは吉報をお待ちしております。」


はい、楽しみにしていてください。

フォルティスに戻ると早速十英傑に集まってもらおうと連絡しようとしたのだが、通知(メッセージ)を送る前に次々と集まってきたよ。

どうやら「探知」を常時使用して戻ってくるのを今か今かとみんな揃って待ち構えていたようだ。


「とっくに予定の時間は過ぎているはずなのに随分と遅かったのー。しっぽりし過ぎのスケベやろーなのー。」


なんかいろいろと見透かされているようです。


「フィオレンティーナのことはちゃんと労ったようで何よりだ。」


こうなることを見越して今回は誰もついて来ていなかったということのようですね。

大人たちの心配りに頭が下がります。

気遣ってもらったフィオレンティーナが礼を言って下がると皆の中に奇妙な緊張感が高まる。


「それで、地図(マップ)情報はちゃんと揃ったにゃ。」


もちろんです。


「魔王が何処にいるか判るのでござるな。」


そうです。


「「統べる者」を待ち続けた時とはまた別の感慨深いものを感じるのじゃ。」


「長年の恨みつらみをぶつけに行くの。」


「俺様の努力がこれで少しは報われるな。」


「ツヴァイクはそれほど報われることしてないと思う系。」


「先代勇者の無念を少しは晴らしてやるのである。」


「ぼっこぼこにしてやるんだ。」


みんなそれぞれの想いが胸中にあるようだ。

そりゃそうだよね。生まれた時から魔王を何とかしろって言われて、どんな相手かも何処にいるかもどうやっていいかも判らずに三十年の長い間を生きてきていたんだ。一切の記憶のない僕には計れないような苦しいこともあっただろうし、大変なことがあったことだろう。ようやく、その倒すべき相手の居場所が判るのだから込み上げてくるものもあろうというものだ。


それじゃあ、いきますよ。


「魔王」を検索する。


だけど、揃っているはずの全世界の地図(マップ)のどこにも反応はなかったんだ。

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