67 実家に帰らせていただきます
アムラダでの顛末を聞いたところこんな感じだったそうだ。
前々日の夜の夢中生有での訓練後に転移門を使ってアムラダに一番近い大都市のノーマンに移動すると、わざわざ街道を外れて休みなしの強行日程でアムラダまで移動してきたんだそうだ。街道を外れてきたのはもちろん僕の検索から逃れるためで、それは僕を驚かせようというただただそれだけのためだったらしい。ライラとエクセラにもかなり事前に通知で連絡が行っていて、それぞれ準備を進めていて二人は前日にアムラダ入りしたということだ。ちなみにノーマンからアムラダへの定期便の馬車は丸二日かかるんだけど、十英傑もライラとエクセラも一日かからずに踏破したそうだ。もちろん自分の足で走り通したなんてことはなく、ミースで僕がミリンダから貰った自動二輪車より大きい四輪車型のものを入手し、運転手も複数人雇い入れて交代で休ませながら走らせ続けたということだ。十英傑はアムラダ入りはせずに前日までは郊外の空白地帯で野営する念の入れようで、雇い入れた運転手を使って僕の両親を含めいろいろ多方面とやり取りを進めていたんだとか。当日になって僕が各都市を回り始めると、本格的にいろいろ動き始めてアムラダ入りして街中の歓迎演出に口だけでなく手を出したり、婚約式会場の準備に勤しんだりと女性陣は楽しそうに動き回っていたが、男性陣、特にツヴァイクはいい迷惑だったようで隙あらば女性に声をかけてさぼろうとするので目を付けられていたらしい。街中では十英傑が見られるということで人が溢れ、盛り上がっていたそうで都市にとってもいい刺激になっていたようだ。フィオレンティーナが当日の朝から僕を急かすようにしていたのはプリメーラたちのことを意識させないように忙殺させるためだったようで、これについては完全に手玉に取られてしまっていたよね。
すっかり出し抜かれてしまって、以前に両親に大勢のお嫁さんを紹介する夢を見てうなされたことを思い出したけど、実際にやってみると良かったって言えるかな。父さんも母さんも喜んでくれていたみたいだし、プリメーラたちの美しく装った姿も見られたしね。もちろんそれぞれ綺麗な姿を永久保存版で切り取らせていただいております。気がかりなのは後どれくらい僕と結婚したい人がいるかってことかな。食事の席でエクセラ曰く、マイなんかはそこまで執着していなくて、たまに僕をつまみ食いできるぐらいの関係がいいらしい。へー、それは助かる、とはならないってば。プリメーラたちはそれでもいいんじゃないかって歓迎するような感じだったけどなんかおかしくないでしょうか。何人もの妻がいて、妾も愛人も恋人もいて、火遊びも問題ないみたいなことを言われると混乱しちゃいますよね。
「カナタは大丈夫なのだ。いつもちゃんと愛してくれているのだ。」
じっと見つめられてそんなこと言われると何も言えなくなっちゃうじゃないですか。ちょっと浸っているとあちこちからあの時はこうだったとか具体的な話が飛び出しまくるので有耶無耶にするのが大変だったことを付け加えておこう。それを聞いていた父さんとツヴァイクはいやらしくにやけて、それぞれ突っ込まれて痛い思いをしていたことも。
食事会の後は僕が両親と暮らしていた家に行ってみた。
僕の部屋は使っていた時のまま残してくれてあり、お掃除もかかさずしてくれているようできれいな状態だった。
「カナタがいつ帰ってきてもゆっくりできるようにって心を込めて手入れしてるんだぞ。」
父さんが小声で教えてくれるが、だから母さんに聞こえてるってば。
「あんたは余計なこと言わなくていいんだよ。恥ずかしいじゃないか。」
ほんとに懲りないね。でも二人のやさしさが伝わってくる。
「素敵なご両親だな。」
僕もそう思います。
そんなに大きい家ではないので全員は連れてこられなかったというか、遠慮させてしまったというか、うちは次回にゃとかここでも順番が決められたとかで、今日ついてきたのはプリメーラとフィオレンティーナだ。
「こんな息子ですが、末永くよろしくお願いしますね。」
「いえ、こちらこそ。こんなに年の離れた身で申し訳なく思いますが、広い心で受け入れていただいて感謝しております。」
「いやいや、プリメーラさんは母さんに比べたら年齢なんて全然感じさせ…ゴフッ」
「あんた、バカなの。ちょっと黙っていようか。」
父さんってほんとに懲りない人だね。母さんの拳が見事に父さんの鳩尾に打ち込まれて悶絶しちゃったよ。っていうか、もしかしてこれが二人の愛情表現だったりするのだろうか。よく見ると、父さんはちょっと嬉しそうに見えなくもない。
「お義母様も…まだ早かったですね。アスカ様も羨ましいぐらいお綺麗です。特に艶やかな黒髪がとても素敵です。どうやってお手入れされているんでしょうか。」
「どう呼んでくれてもいいけど、「様」はやめてよ。家族になるんでしょ。お世辞もいらないよ。」
「はい、アスカさん。でも、お世辞なんかじゃありませんよ。」
この後もフィオレンティーナとプリメーラのそれぞれの髪にはこういう手入れがいいだの美容師目線での話に始まり、僕との馴れ初めを聞き出そうとしたり、しばらく女性同士仲良く話し込んでいたので、その隙に僕の部屋にせめてもの親孝行と結構な金額を置手紙と共に置いておきました。ちゃんと使ってくれるといいな。
両親に別れを告げて家を出た後は街でみんなと合流し、ライラとエクセラはミースに送り届けて僕らはフォルティスに帰るつもりだったんだけど、僕たちが家に行っている間にちょうど夜の訓練の後のアレも一周した後でどうするかみたいな話になっていたらしく、せっかく晴れて婚約者に名を連ねたことだしってことでなんやかんやで今日はエクセラ、明日はライラ、その後の二周目も基本的に今の順番のままだそうだ。こうして今日の訓練後、僕はエクセラにいいようにされてしまうのでした。




