61 海に抱かれて
ゼクスベルクに幸福が訪れた翌日、僕はレーシア最大の都市クリーチを訪れている。
既にここでの地図情報は回収済みで、これからユイトセインが気になっていた遺跡を見に行くところだ。その遺跡は昔の都市が水中に沈んだ状態で発見されていて、研究者によると一万年以上昔に栄えていた都市なんだとか。それも都市のあちこちに魔法陣が残されていて、今の仕組みとは全く異なる方法で都市の機能が維持されていたんじゃないかって考えられているそうで、魔術師の最高峰である賢者のユイトセインとしては一度は直にその目で見てみたかったということらしい。一般的な見学方法は船で海底都市の上まで行って、その船から覗き窓のある観測室を降ろしてその中から眺めるというものだが、当然のことながら僕たちは違う方法で見に行くつもりだ。
「こんなの聞いてないの。あり得ないの。非常識なの。」
ひどい言われようなの。
一般客と一緒だとユイトセインがお望みの魔法陣が見られないことはないんだけれど、間近って感じでは見られないということだったので気を利かせたつもりだったんですが、お気に召さなかったようだ。
「カナタが異常なだけなの。気には入ってるの。」
もっとひどいこと言われた気がするの。
最初は「真呼吸」で素潜りするつもりだったんだけど、「泳げない」の一言で却下されてしまったんだよね。泳げなくても呼吸はできるんだから海底都市の好きなところを歩けるよって言ったんだけど、さらに「濡れたくない」の一言で強めに却下されたので今の状況に至っている。観光船を運用している業者にどんな装置を使っているかを問い合わせて、それ以上の機能を潤沢な素材を使って錬成した結果、水中を自由に移動できる全面透明な快適空間から海底都市のあちらこちらを眺めているというわけだ。錬成で難しかったのは全面を透明にすることと水圧に耐えられる構造を両立させたところだ。難しいことはよく判らなかったけど、とにかく球体で真球に近い方が大きい水圧に耐えられるみたいだったので、透明度の高い大きい水晶を使ってそんな風にしてみたんだよね。
「すごいの。こんなの初めてなの。」
気に入っていただけたようで良かったです。ちなみに推進力は魔法で周囲の水を操ることで代用しています。なので、今はユイトセインがこの水晶球を意のままにしているというわけ。
「今の魔法陣と全然違うの。何のためのものか想像もつかないの。」
僕はそれほど魔法陣に詳しいわけではないので違いはよくわからない。だけど、一万年以上前に栄えていた都市でどんな魔法が使われていたかを想像するのは楽しいかも。生活を支えるものだったかもしれないし、娯楽のためのものだったかもしれない。気が付いたんだけど、多種多様な魔法陣がほぼ完璧な状態で残っているのに、建物や道路なんかは損傷が結構あるんだよね。一万年経ってるから損傷があって当たり前なんだけど、地上の遺跡とは損傷の具合が違うっていうかなんていうか、うまく説明できなくてすいません。魔王との決着がついたらこういうことを研究してみるのもいいかなってふと思いました。こういう大昔のことってこういう遺跡って形でしか残ってなくて、文書や書籍の形で記録されて残っているものは千年前ぐらいが最古なんだよね。千年前って「勇者」が帰ってこなくなったぐらいだったと思うけど、それも何か関係しているんだろうか。
ふと、気付くとユイトセインが僕の顔をじっと眺めている。どうしたんだろう。
「カナタの考え込んでいる顔が好きなの。」
な、何を仰いますやら。あー、そういえばキャトレーブに珍しい魚を見かけたら捕ってきてって言われてたんだ。どこかにいないですかねぇ。
「はぐらかさなくていいの。もう十分濡れているの。」
あー、そのー、濡れたくないとか仰ってませんでしたっけ。
「そんなのもいらないの。おっぱじめるの。」
お魚さんが見てますって。あーれー。
◇◆◇
「気が進んでなかった割に激しかったの。」
そりゃ元気もりもり若さ溢れる十六歳ですから。魅力的な女性のお相手をするとなればいつでも全力投球です。
「魅力的だなんて嘘なの。でも嬉しいの。」
嘘なんかじゃありませんよ。こんな密室に二人っきりでいるわけですから、そういう雰囲気にならないようにしないとすぐにそっちの方に意識がいっちゃって理性を保つのが大変じゃないですか。
「カナタならいつでもいいの。好きな時にぶちまけるといいの。」
そんなこと言ってると人前で始めちゃいますよ。
「それでもいいの。でも、カナタはどうせ口だけなの。」
くっ、見透かされている。
でも、丁度いいところに観測室が降ろされてきているのが目に入ったので悪戯しちゃおう。
観測室側の壁にユイトセインを押しつけて弱いところを立て続けに責めると喘ぎ声が止まらなくなる。
「あっ…はあん…。人が…見てる…のに…。」
ユイトセインは人に見られると余計に興奮しちゃうんだね。もっと感じてるところを見てもらうといいですよ。
「やっ…。」
いつもより頬を赤く染めているのは羞恥心からくるものなのか、快感によるものなのかは定かではないが、強く抵抗はせずに僕の行為を受け入れている。
そんなに見られるのがいいんですね。じゃあイクところまで見てもらいましょうね。
「っ~~~~~~~~~~。」
◇◆◇
盛大にイキまくりましたね。
「意地悪なの。あんな顔カナタ以外に見られちゃったの。」
いつでもいいって言ったじゃないですか。それで気にしてるのはあの時の顔だけなんですね。
「絶対にできないと思ってたの。でも気持ちいいのが勝っちゃったの。」
大丈夫ですよ。向こうからは見えてませんから。
「…へ?どういうことなの。透明なのに見えないはずがないの。」
透明のままならね。実はこれ、内側からも外側からもそれぞれ見え方を変えることができるんです。こんな感じなんですよと、内側から見えていた海の中の様子を遮断してみせる。
「…聞いてないの。」
そりゃ、先に言ってしまったら意趣返しにならないじゃないですか。こんなこともあろうかとつけておいた機能じゃないですけど、ユイトセインも新しい一面を知れたってことで良かったですね。あれ?どうしたんですか。なんかプルプルしてますけど。
「…騙されたの。」
あ、怒ってます?そりゃ、そうですよねー。はい、ごめんなさい。やり過ぎました。
「怒ってはいないの。でもホッとしたの。」
こんなに短い間に表情がコロコロ変わるユイトセインも初めて見たかもしれない。出会った最初の頃は無口でどちらかというと無表情でことあるごとに僕の股間を擦ってくる不思議ちゃんだったけど、すっかり心を開いてくれたようでうれしい限りだ。
「もう一回するの。」
はい、かしこまりました。




