59 伝わらない伝言
「ボクはデミール。ちょっとだけ覚えておいてくれると嬉しいな。」
そう言って手を差し出してくるので、握手を交わすと地図情報収集と共に力の流入を感じる。
ボクって言ってるけど女の子だ。歳は僕より二つぐらい上だろうか。青みがかった緑の短髪で活発さを感じる可愛いというよりカッコいい系の顔立ちだ。
「じゃ、機会があったらまた会おうね。」
へ?随分あっさりしてませんか。
君は一体何を知ってるのかとっても知りたいんですけど。
「そんなにボクに興味あるんだ。どうしよっかなー。ボク、そんなに暇じゃないんだよね。」
これはあれか。気のない振りを装って逆に気を惹こうとする所謂駆け引きという名の高等技術でしょうか。まあ、僕にとっては主導権がどうとか、自分のことを良く見せたいとか、そんなことはどうでもいいので、正面突破でぶつかってみるとしよう。
君の「統べる者」に関して知ってることを教えてもらうにはどうすればいいですか。
「それじゃあつまんないなー。」
「カナタさん、あと十人ほどですのでここは一旦全員に会われてしまってはいかがでしょう。こちらの方とのお話はそれからでも。」
側に控えていたフィオレンティーナが助言してくれたので、先に残りの「青」から地図情報を受け取ることにした。
待たせていた十二人の「青」と対面して地図情報と力をありがたく受け取ると、フィオレンティーナとデミールを待たせている別室へと向かう。
「私が彼女のお相手をしましょうか。小娘なんてひとひねりして洗いざらい情報を引き出して御覧にいれますよ。」
別に敵対されてるわけでもないし、手荒な真似は必要ないかなって。今すぐ何としても情報を引き出さなければいけないわけでもないし、物騒なことは考えずにとりあえず時間の許す範囲で話をしてみることにしましょうね。
「私の鞭が唸るところを見せられなくて残念です。」
鞭って人に使うんですか。想像しただけで怖いです。
「カナタさんには使いませんから大丈夫ですよ。」
デミールのいる部屋に入ると彼女は長椅子に横たわって居眠りをしていた。朝早くから集まってくれていたから寝不足だったのかもしれないね。こんな時間に来てくれた他の皆にも本当に感謝しかないよ。
「寝ているうちに手籠めにして性奴隷にしてしまうという手もありますね。」
今日のフィオレンティーナはちょっと過激です。何かあったんでしょうか。
「この小娘を屈服させるついでにおこぼれにあずかろうとしているぐらいで特になにもありませんよ。」
そういうことでしたか。でも、ここでくんずほぐれつしてるとこの後の予定が狂ってしまうんじゃないでしょうか。
「そうなんですけど、この小娘との話がとんとん拍子で進むとも思えませんのでどうしたものかと。そうですね、あの十英傑の皆さんとやりまくる予定の「夢中生有」でしたっけ。それをうまく使えないでしょうか。」
「夢中生有」の使い道はあくまで戦闘訓練用でくんずほぐれつしまくるために作ったものではないですよ。まあ、疲れてお休みになってるのをわざわざ起こすのも忍びないですし、このまま夢の世界でお話をするのはありかもしれない。ついでに体感時間を調節すればじっくり相手をすることもできるってわけだ。
「そんなこともできるんですね。それなら、今後もちょっとの空き時間でたっぷり愛し合うことができるというわけですね。」
そういう使い方もできなくはないですが、基本的に体感時間の調節はしたくないです。やり過ぎると体と心の平衡を失ってしまいそうなんですよね。極端な話でいうと、「夢中生有」の中で一年過ごしたのに、現実では一秒しか経っていないということもできちゃうんですよ。
「なるほどです。長く愛し合うだけが良いわけでもないということですね。短い時間でも濃密にするように工夫します。」
そういうことではないと思うんですけど。
「次のエクストリエントには30分後に向かえば大丈夫ですのでうまく調節をお願いしますね。」
なんか有無を言わさず押し切られてしまった。
仕方ないので、フィオレンティーナをデミールの寝ている長椅子の向かいに座らせて楽な姿勢を取らせると僕もその横に座り「夢中生有」を発動させる。
「すごいですね。現実と何も変わらないじゃないですか。」
僕とフィオレンティーナの目の前ではデミールが現実と変わらず寝ている。
このままでは何も進まないんで、起こしましょうかね。
「ん…ボク、寝ちゃってた?ごめんね。」
「こちらこそこんな時間に来ていただいた上にお待たせして申し訳ありませんでした。それで、早速ですが「統べる者」についてご存じのことをお聞かせ願えないでしょうか。」
「あなたも「統べる者」のこと知ってるの?」
「私も「捧げる者」の一人です。フィオレンティーナと申します。以後、お見知りおきください。」
「なーんだ。知ってるのはてっきりボクだけだと思ってたのに「大いなる存在」もいい加減だな。」
やっぱりデミールは「大いなる存在」との記憶を持っているんだ。一体、デミールは「大いなる存在」からどんな言葉を託されたんだろう。十英傑とは歳も随分離れてるし、技能を極めよなんて話じゃないはずだ。なんとか聞き出したいものだ。
「この様子だと一緒に集められていた者たちが「捧げる者」であることも気付いてなさそうですね。」
フィオレンティーナがそっと耳打ちしてくる。
そうだね。「統べる者」のことを知ってるのが自分だけって思ってたってことは十英傑が知ってたってことも知らないってことだし、いろいろ知らないこともあるみたいだけど、それだけに何を知っているか余計に気になるというもの。
「それにしてもあなたはよくカナタさんの前であんなに平然とされていましたね。どうしてでしょうか。」
「そりゃ、通知で送られてきた映像を見た瞬間に「統べる者」だって気づいてちょっと悶々とはしたけど、最初から「統べる者」のことは知ってたわけだし、そうなる理由が判ってたからね。それにボクは男性もいけるけどどっちかと言ったら女性の方が好きだからかな。だから綺麗なお姉さんの方が興味がそそられてるよ。」
なるほど。人の数だけ嗜好はあるというわけですね。
ここで、またフィオレンティーナがとんでもないことを耳打ちしてくる。そんなことしなくてもとかいろいろごねたけど、結局やる羽目になってしまった。
「ん?「統べる者」はどこ行っちゃったの?いや、彼のことはどうでもいいや。このカッコかわいい子は誰?すっごくお近づきになりたいんだけど。」
はい、お察しの通り僕の作る夢の中では何でもありなので一瞬で女装状態の僕になったのですが、実は体の方も女性化させております。
「この子とあんなことやこんなことさせてあげてもいいですけど、それには何が必要かお分かりですよね。」
言いながらフィオレンティーナが僕の胸を揉みしだく。
くぅっ。やだっ、変な声が出ちゃう。
その声に興奮したのか、デミールが身を乗り出してくる。
「ほらほら。早くしないとお姉さんが一人でいただいちゃいますよ。」
こらっ、股間に手を伸ばすな。
初めての快感に身をのけ反らしてしまうと軽くイってしまったじゃないか。なんてことするんだ。初めての人の前でいかされちゃうなんて恥ずかしくてお嫁にいけないわ。
「なんでも話す。話すからお願い、ボクも交ぜて。」
デミールも居ても立っても居られないようで、知ってることをすべて語りだした。
それは次のようなことだった。
「大いなる存在」は分け身の数が増えたことで随分と力が失われてきたことを危惧していたようだ。そろそろ「統べる者」を送り込むことになるだろうが、その時に全てを託すことができないかもしれない。だから、その前にデミールにいくらか伝えておこうということだった。だけど、肝心なところが理解不足というかうまく伝わっていないようで、当然僕らにもその意図をすべて汲み取ることはできなかった。
「なんか、力の源は無限だから最終的には数の力でどうにでもなるっていうか…。あー、それと、イキっ放しじゃなくて…入れっ放し、それも違くて…なんかよくわかんないけどなんかそんな感じがどうのこうの…。」
なんだそれ。何もわからないに等しいんだけど。「大いなる存在」もいい加減だなぁ。
まあ、僕が何も知らないことは僕のせいではない可能性が高くなったということだけが収穫だろうか。
「そんなことではこの子といいことはさせてあげられませんね。」
「そんなぁ。」
ご褒美がもらえず悲嘆にくれるデミールだった。




