第十九話 戦乱の始まり その十九
更新です。Twitterでも活動しているので是非。「あやかしばかし」という作品も連載しているので見てみてください。
同時刻、山口県国防軍下関基地。第一会議室にて基地を預かる佐々木雅也大佐を含む七人の佐官で今回の侵攻に対する軍の対策案が共有されていた。
「今回の侵攻に際して本部から特務大隊が急行してくれるそうだ。作戦は彼らを軸に市街地に被害が出ない範囲で敵を引き込み、包囲殲滅戦。我々の役割はスムーズな作戦の遂行に必要な備えをしておくこと。この基地の装備だけでは先遣隊を追い払いことはできても敵本隊を相手取るには不利だ。各員、状況に柔軟に対応しつつ、特務が到着し次第、作戦を第二段階に移行する。いけるな?」
「もちろんです」
「既に準備は完了しています」
東亜軍からの侵攻など一度や二度ではない。日本という国の防人としてこの下関基地に勤める士官、職員達は皆、ここに来た日から常に戦う覚悟を持っていた。いつ何時敵が攻めてくるか分からないため、警戒態勢を解くことはなく、主要都市以外の中ではこの基地が最も勤務人数が多い。この基地は高い志と熱意を持った者が多いと近隣の住民や他の基地からも評判なのである。
そんな彼らだからこそ襲撃など襲るるに足らず。委縮することもなく、確かな緊張感を持って配置についてくれるだろうと佐々木は誇らしくなった。
「よし。では各員、解散。作戦に移れ」
「了解!」
佐々木の号令に佐官達は足早に部屋から退出し、佐々木は一人会議室の椅子に腰を下ろした。
「特務大隊か」
(二年前の「ハンブルグ事変」以後にに編成された特殊任務部隊。表沙汰にはされていないが、一年前のカザフスタンの騒乱でも「UEF軍」と協力して新ロシア軍を撤退させたという。少数精鋭ながら他の追随を許さない圧倒的な戦果を出し続けた。その功績が認められ、軍内で彼ら専用の黒い制服を着用することを許可されているらしい)
「一体どんな軍人なのか気にはなるが、まずは司令官としての責務を全うせねば」
そう口にすると佐々木は会議室を出て指令室へと向かった。だが、会議室を出る際に脳裏に過ぎった、何故特務大隊程のエリート部隊が今回の侵攻に出張ったのだろうと。あくまで伝聞であるが、彼らは参謀本部旗下の通常の指揮系統からは切り離された部隊。
そんな部隊がわざわざ出向くというならそれこそ何かしらの大事が発生している、もしくは発生することが予想されるということ。しかし、敵の動きはこちらの予測の通りの進路を進んで上手く誘導できている。であるなら、近隣の基地からの増援と基地のファーレスによる超遠距離攻撃でも敵を追い返すことは可能なはずだ。
侵攻を受けたの際、気を付けておくべきことは港付近の地域の物的、人的被害の他に警戒に綻びが出た場所から他国のスパイが密入国することも警戒しなければならない。それを懸念して指令本部はD-105案として敵の侵攻範囲を限定して押し込めるという策を取った。海上の東亜軍をある程度のポイントに集決させて下関周辺でリスクを負うことで仮に帝国が密入国者を流そうとしても日本海側の基地にはそれを警戒するだけのリソースが残るはずだ。
何故、上層部は特務大隊を北陸付近や北海道に送らず、こちらに送ったのか。佐々木はこの奇妙な違和感を解消することができなかった。この疑問に答えることができるとすれば、それはこの戦局の絵を描いた者達だけであり、盤上の駒の一つにしか過ぎない彼には不可能なことだった。
佐々木が司令として下関基地と周辺基地から集まった軍を統合し、再編成が完了した頃、彼らは黒い航空機がこちらに接近してきていることに気が付いた。指令室を出て歩きながら管制官に無線を飛ばす佐々木。
「あれは特務大隊の物か。管制官、あれは特務大隊の航空機か?」
『はい、あれはこちらに応援に来た特務大隊の航空機であります。着陸準備に入るとのこと。全部隊、滑走路から離れさせてください』
「了解した。全部隊に告げる、特務大隊の航空機が着陸する。滑走路から離れ、整列」
佐々木が滑走路に到着するとやってきた三機の航空機は基地の滑走路の四割も使わずに着陸し、真っ直ぐ士官達が並ぶ前で停止した。扉が開くと中からは黒く染められた軍服を着た者達が降りてきた。
「こちらは統合参謀本部旗下特務大隊大隊長、安藤憲吾大佐です。よろしく」
「下関基地司令官、佐々木武大佐であります。今回は応援に来ていただきありがとうございます。作戦準備は完了しています。いつでも出撃が可能です」
「了解した。では作戦通りに。不測の事態が起きればこちらから指示しますが、基本は作戦通りでいきます」
「そのように全体に伝達します。では、失礼します」
基地へ戻っていく佐々木の背中を見送って安藤は特務大隊の面々へ振り返った。
何者かに侵略されてるぞ
キャラ名:佐々木雅也




