第十八話 戦乱の始まり その十八
更新です。Twitterでも活動しているので是非。「あやかしばかし」という作品も連載しているので見てみてください。
地下駐車場に入り、車両を停車すると黒服の士官が窓をノックした。
「お疲れ様です、藤野少佐。安藤大佐より到着次第すぐに第七会議室に来てほしいと」
「そうか、安藤大佐に了解したと伝えてくれ」
そう言うと彼は「かしこまりました」と敬礼し、スタスタと戻っていった。車を降りた二人は制服に着替えるため、「特務大隊」に割り当てられた棟へ向かった。それぞれ更衣室で着替え終わると軍用端末とプライベート端末に第二種警報の続報が入った。
プライベート端末には軍から公開された公の情報が記載され、軍用端末には東亜軍が日本海南方より鳴門海峡近郊に向けて軍事侵攻を開始したと報告された。警報発令時には軍事侵攻の動きが確認されたという報告だったが、正式にその動きが軍事行動だと承認され、これから東亜軍の侵攻に対する対策会議が話し合われる。
第七会議室に着くと特務大隊のメンバーが全員揃っていた。晴人とジャンヌが空けていた上座に着席したことを確認してこの大隊の形上の大隊長である安藤憲吾大佐が椅子から立ち上がり、背後のパネルに作戦資料を投影した。
「全員揃ったな。では手短に、東亜軍は日本海南方から侵攻中。作戦は敵軍を下関の西に引き込み、包囲、殲滅とする。一時間後には遠距離砲の射程圏内入ると予想される。遠距離砲にて広がった敵陣を中央に集結させてこちらの想定したポイントで包囲し、殲滅する。我々「特務大隊」は飛空艇で機体と共に下関基地へ向かい、待機する。以上だ」
「特務大隊」。正しくは「日本国防軍統合参謀本部旗下特殊任務大隊」。特務大隊は通常の指揮系統から外れ、統合参謀本部の指令で行動し、当該作戦内において作戦指揮官と同等、戦闘区域においては最高の指揮権を持つ組織だ。二年前にドイツ州で起こった「ハンブルグ事変」による失敗を踏まえて発足した「特殊指令計画」を前身とする特殊部隊としての性質と最新鋭ファーレスとその武装の性能評価実験と新型機開発を担当する実験部隊の性質の二つの側面を持っている。
参謀本部が彼らに任務の多くは今回のような敵国からの侵攻に対して攻勢に出る時であったり、国外任務であったりと重要度の高い任務が特務大隊に回ってくる。
今回の作戦もその例に漏れず、敵艦隊にダメージを与えることが最大の目的である。安藤が話し終えると磯貝拓磨中尉が手を上げた。
「隊長、敵戦力とこちらの戦力はそれぞれどれ程でしょうか?」
「敵規模は一個旅団前後、今回は陸上戦力に比重が置かれていると思われる。こちらの戦力は下関基地とその周辺基地にいる二千名とこの基地から向かう六百名の二千六百名前後だ。他に質問はないか」
全員把握したことを確認し、安藤は晴人に視線を向けた。すると晴人は席から立ち、全員が晴人に身体を向けた。
「今回の軍事侵攻はその規模こそ普段より少ないが、何か理由があると俺は考えている。全員それを念頭に入れて厳重に警戒して任務に当たれ。行くぞ」
晴人の声に着席していた士官全員が立ち上がり、一糸乱れず敬礼をした。いつもながらあっちこっちと全国各地に派遣されるのは骨が折れると晴人は愚痴を零したくなった。特務大隊に入ってから二年、幾度となく戦果を交えてきた敵国、「東亜細亜軍事連合」通称東亜連合。東アジア全域を併合し、ユーラシア大陸最大の国家となったこの軍事国家はその根底に中華思想に基づいた強い征服思考があり、極秘としてきたファーレスの情報を掴み、最も速く行動を起こして周囲の国家を併合した国家である。警戒し過ぎて損はないと晴人は考えていた。
会議室に晴人とジャンヌを残して大隊のメンバーは各自が決められた航空機に向かった。
「晴人、さっきの予測はどのくらい当たると思っている?」
「七割くらいかな」
「その根拠は?」
「最近、新ロシアの動きがめっきりなくなった。間違いなく何か企んでいるのが手に取るように分かる。このタイミングで仕掛けてきた思惑としては恐らく陽動だ」
新ロシア、正式名称「新ロシア帝国」。ユーラシア大陸の北部を支配する世界で唯一の帝国主義を掲げる国家である。
「そうだな。では北に警戒態勢を敷かせるべきだな。陽動を最大限に活用するなら最も離れたところから何かをするだろうな」
秘密の話し合いを終えた二人は安藤大佐に話し合った内容を口頭で伝え、滑走路に停まる特務大隊専用航空機に乗り込んだ。機体はその機動性と静音性を存分に発揮し、ほとんど音を立てずに離陸した。上昇が完了して空中で安定軌道に入ると更に加速し、ものの数秒で最高速に到達した。
目を覚ませ僕らの世界が
キャラ名:安藤憲吾、磯貝拓磨




