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星降ル夜ノアリアドネ  作者: 東上春之
第一章 戦乱の始まり
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第十六話 戦乱の始まり その十六

更新です。Twitterでも活動しているので是非。「あやかしばかし」という作品も連載しているので見てみてください。

 今度は倉敷が攻勢に出る。腰に付けたスモークグレネードをアブソレイとサンライズの間に投げ、煙幕で視界を遮断した。倉敷は大剣を前面に構えて正面から煙を破って距離を詰めた。だがそこにサンライズの姿はなかった。

 晴人はグレネードが投げられた瞬間、中央、右、左の三択を選択した。その中で倉敷なら正面から来ると踏んだ晴人は左から煙に飛び込み、正面から抜けてきた倉敷の背後を取り、剣を振り下ろした。倉敷はその動きにアブソレイをすぐさま反転させ、上段から来るサンライズの攻撃を弾き、距離を詰めて大剣を突き出した。


 最もダメージが入るコクピットを狙った攻撃。くらえば大幅に損耗率が上昇する攻撃だが、晴人は機体上体を大きく後ろに逸らし、大剣を握るアブソレイの手を蹴り上げた。右手を潰したことでアブソレイは大剣を落とし、丸腰になった。

 蹴りの勢いで半回転して低空姿勢になったサンライズ、アブソレイの胴体ががら空きになったところを逃さず、斬り上げると倉敷はいつの間にか拾っていた晴人が投げていた剣でサンライズの攻撃を弾いた。


 片手しか使えない敵に容赦する晴人ではない。攻撃を弾かれてもなおアブソレイの左腕部にダメージを与えるため銃撃を浴びせた。文字通り一進一退の攻防。もはや観客の中で声を出せる者は誰もおらず、ただただ桁違いの戦いを眺めることしかできなかった。

 審判員として決闘を監督している岩崎ですらここまで晴人の実力が高かったのかと驚いていた。モニタールームの空気は決闘開始前とは完全に変わって、倉敷がここまで押されていることが認められないのか戦ってもいないのに苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。


 そんな彼らの姿を横目に見ながら宮内は笑みを浮かべていた。晴人と倉敷の戦いは段々と片手を十分に動かせないようにした晴人の優勢に傾いていき、機体の損耗率も倉敷は六割を超え始めていた。


「まさかここまで強いとは思わなかった。操縦も戦い方も「戦う」ということに慣れている。これはもはや候補生のレベルではないな」


 既に右手、左肩部、右膝部が損傷、背部ジェネレーター、脚部スラスターの出力低下と攻勢に出るにはダメージを受け過ぎている。機体の燃料や状態を表すモニター画面に72%と表示され、規定値まで後僅か。これ以上攻撃を受けられない。

 サンライズに攻撃を当てはしたが、決定打になる程のダメージは与えられなかった。倉敷は性能差以上に乗り手の技量の高さを痛感した。

 

 晴人はこれ以上の戦闘継続を無駄だと考えていた。お互いに攻撃を当てダメージを与えていたが、サンライズの損耗率は四割程度。アブソレイの損耗率は恐らく七割前後。あえて長引かせる必要も限界駆動を使用して強引に攻める必要もない。決闘開始時のように正面からぶつかって押し合えば自然と損耗率が規定値を上回る。

 倉敷は既に詰んでいる。だから晴人は決闘を終わらせることにした。左手に持ったライフルを捨て脚部スラスターを勢いよく噴射した。


 サンライズが剣を構えたのを見て倉敷も同じように剣を構え、スラスターを噴かせた。睨み合い数刻、お互いに空を駆けた。

 剣と剣が交わるその瞬間、校舎全域に響き渡る音でサイレンが鳴った。


「第二種警報。第二種警報。日本海北部にて侵攻を確認。統括本部付きの生徒以外の士官科の生徒は緊急マニュアルに従い、各教室で待機。機工科の生徒は直ちに士官学校内の全ファーレス最寄りの軍施設へ搬送せよ。繰り返す、各自、緊急マニュアルに従い、速やかに行動せよ」

その先に。

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