第十二話 戦乱の始まり その十二
更新です。Twitterでも活動しているので是非。「あやかしばかし」という作品も連載しているので見てみてください。
第二演習場裏口に到着した晴人は永田に案内され、入ってきた西口とは反対側の東口のファーレス倉庫へやってきた。道中改めて決闘に関する細かなルールについて説明を受け、加えて今回の決闘での勝利条件は通常とは異なり、機体の損耗率が先に規定値である「八十%」を越えた方が敗北となるルールに変更されたことが伝えられた。
「通常の決闘だとファーレスの消耗を考慮して機体各部にポイントとなるアタッチメントを増設し、過半数を先に破壊した側が勝利とするという形式で行われますが、今回は倉敷さん側からの要求を宮内本部長が承認したため、勝利条件が損耗率となりました」
「変に機体に気を遣わなくていいのは助かりますが、折角軍から受領したばかりなのに大丈夫なんですか?」
「その点も踏まえて本部長が機装局と軍の方に確認を取って承認が出されたので、祈上さんは気兼ねなく戦って下さい」
「分かりました。最後にもう一点確認してもいいですか?」
「はい、何でも答えますよ」
「仮に一撃でファーレスを破壊してしまった場合は勝敗に影響しますか?」
損耗率が規定値に達した方が負けとなるルールの場合、勝利の仕方は二パターン考えられる。一つは順当に削り合って損耗させる戦い方。もう一つは一気に規定値以上のダメージを叩き込み、行動不能にするという方法。
損耗率を勝敗の条件にしたということはこの規定値を越えた場合のペナルティが存在してもおかしくはない。結局のところ損耗率八十%という規定値を設けたのは整備で直らないレベルの損傷を機体に与えないようにするためということも考えられる。
その建前を使えば、規定値以上の損傷を与えてしまった場合、ルールに違反したとして判定負けにされてしまうというケースもあり得る話である。
「破壊というのは部分的にということではなく、再起不能なまでにという意味ですか?」
「そうです。例えばコクピット下で上下に斬ってしまったり、コクピットを残して全壊してしまったりというケースです」
「なるほど。今回の決闘で設けられた損耗率というのはあくまで目安になる程度のものなのでそれを大幅に越してしまっても問題はありません。九十%以上損耗を受けると第六世代ファーレスであっても完全に動かなくなってしまいます。なので概ねその手前で決着が着くようにと今回このような形になっているだけなので祈上さんがお気にされることはありません。決闘監督委員会からも機装局からも統括本部からもその点に関して問題ないと了承を得ているので大丈夫です」
「分かりました、ご丁寧にありがとうございます」
「いえいえ。これが仕事ですから。あまり関係ないですが僕からも質問してもよろしいですか?」
「答えられる範囲でしたら」
「祈上さんは式の時、誰に向けて「知らねぇよ」と言ったんですか?」
「誰にでも、ですかね。意味なんてないかもしれませんけど」
話しているといつの間にか東口の倉庫についたようで機装局から手際よく運搬された「サンライズ」が既に機工科の生徒達によって最終調整が開始されていた。晴人も彼らの元へ向かい、軽く挨拶をしながら必要な分だけ調整を行った。
順調に調整を終わらせていると演習場の液晶パネルで決闘まで三十分とアナウンスが流れ、仕事が終わった機工科の生徒達も続々と「頑張って」と言葉を残して客席に移動していった。
始まりの予感。




