第十一話 戦乱の始まり その十一
更新です。Twitterでも活動しているので是非。「あやかしばかし」という作品も連載しているので見てみてください。
時間は少し、晴人と倉敷が教室を出た所まで巻き戻る。
突如やってきた上級生。そして、入学してまだ数時間しか経っていないのにも関わらず、「決闘」を受諾した風雲児。入学式で訳の分からない行動を起こし、生徒どころか教官達すら事態の収拾に奔走させた理解しがたい学年主席、祈上晴人。完全に流れに取り残された生徒達は数人を除いてこの状況に困惑していた。
(祈上晴人、聞いたことのない名前だった。私は入学試験でも他の誰よりもファーレスを上手く扱えていたし、筆記だって十分以上の出来だったと思う。だから私が主席じゃないなんて本当にショックだったし、私が負かされた相手はあどんな人なのかすごく気になった。けど、なんなのあれは。新入生総代の挨拶をするかと思ったらいきなり挨拶が書いてある紙を握り潰して「知らん」とか言ってどこか行くがきょし。主席だからって身勝手に振る舞ってるのかと思ったら先に教室でカリキュラムの確認をしてるし)
「訳分かんない」
今年度入学生の成績上位者は主席「祈上晴人」、次席「黒田楓」、そして三席が彼女「松原知佳」である。松原は中等部でも飛び抜けて優秀で彼女もまた相応の努力を重ね、その事実は彼女の自信となっていたが、晴人、黒田の存在が彼女のプライドを著しく刺激していた。
松原知佳。肩口まで甘栗色の髪を伸ばし、その茶色な瞳に女性らしい顔立ちに似合わず静かな力強さを宿し、スラっとした立ち姿からその内に宿す熱量を感じさせる、端的に言えば極度の負けず嫌いなのである。
今まで誰よりも努力を重ねて候補生校でもトップの成績を取り続けていたのにも関わらず、あんな問題児に自分が負けたという事実に沸々と腹が立っていた。
教室にいる他の生徒も緊迫感から解放され、皆口々に言葉を交わし始めた。倉敷が教室に入ってきたことに驚いて席から立ち上がった松原も落ち着きを取り戻し、再び席に着こうとしたその時全員の端末が一斉に音を鳴らし始めた。
(急に何?)
松原は端末を取り出し、学校からのメールに目を通すと晴人と倉敷の決闘が今より一時間後、第二演習場にて行われると書かれていた。
これは二年生以上にならないとわからなかったことだが、通常決闘を行うには当人間での合意、決闘監督委員会への申請、統括本部からの承認、機装局へファーレスの使用を申請をもって全ての準備が整うのだ。
この中でも特にファーレスの使用申請に最も時間がかかり、士官学校が所有しているファーレスは公的な扱いでは軍から貸し出されているということになっており、生徒が私的に使用するには軍からの確認が必要なのである。
学内で完結しないことのため、決闘申請から一日後に決闘が行われることが一般的であった。しかし、この決闘は生徒同士の決闘宣言から二時間と経たずに試合が行われるという異例な事態なのであった。
この時、統括本部にて宮内に晴人の行動の真意を問いただしていた巳門は端末に入ったメッセージに目を通すと静かにだが、確かな怒りを込めて宮内の襟首を掴んだ。
「お前、何を考えてる?」
「君がそんなに感情を剥き出しにするなんて珍しいね」
「話を逸らすな。あの子を使って何を考えてる、ことと次第によっては私も動かざるを得なくなるぞ」
「まぁまぁ落ち着きなよ。第一、僕は彼に対して選択肢を与えただけさ。彼の行動は彼が選んだ結果さ。確かに僕は挨拶の文をすり替えたが、彼は替える前の内容を全部覚えていたんだ。差し替えを無視して読みきることだって可能だった訳だ」
宮内の言葉にも一理あった。確かに晴人は文を全て覚えていると言っていたし、読む前に一度確認はしていたはずだ。巳門は一度宮内の襟から手を放した。
「つまり、この状況も晴人君の選択した結果だと?」
「そこまで突き放すつもりはないけどニュアンスは間違ってないかな。ただ、このままだと倉敷の一方的な試合になりかねないからね。ちゃんとの準備はしているさ」
(まぁそもそも勝負にすらならないかもしれないけどね)
宮内が用意した準備こそ第六世代機「アブソレイ」試験機体「サンライズ」。圧倒的な運動性能と制動性を持つ乗り手の負担を考えなければヨーロッパ連邦の最新鋭第七世代機によって構成された「グランドナイツ」にも引けを取らない機体である。
「お二人とも、到着しました。このまま倉敷さんは突き当りを右に曲がってファーレスの元まで向かってください。既に機工科の整備班がいるので最終調整を行ってください。祈上さんは案内するのでついてきてください」
「分かりました」
「祈上」
「なんですか?」
「本気で相手してやる」
「そりゃどうも」
ワクワク。
キャラ名:黒田楓、松原知佳




