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星降ル夜ノアリアドネ  作者: 東上春之
第一章 戦乱の始まり
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第一話 戦乱の始まり

久々の新作です。これからドバドバ更新していくので改めてよろしくお願いします!!Twitterでも活動しているので是非。「あやかしばかし」という作品も連載しているので見てみてください。

 西暦二〇五二年。世界は戦乱に包まれていた。

 北米大陸から始まったこの戦争は次第にアジア、ヨーロッパへと戦禍の波を広げていき、世界を巻き込む大戦へと変貌していった。


 その始まりは二〇三一年に起こった兵器産業のイノベーションだった。当時アメリカでは日米共同であらゆる環境での救助活動を可能とする新型マシンの開発を行っていた。その第一試作品として開発されたのが、後に戦乱を引き起こす原因となった人型兵器「ファーレス」であった。

 人型のシルエットをもち、新世代の電気エネルギー炉によって動く全長約六mの救助マシン。胸部にコクピットが存在し、背部以外の三方向スクリーンに頭部カメラからの映像を映し出す。両手足でレバーとペダルを操作することで駆動し、カメラの各種センサー機能によって遭難者や建物の倒壊によって下敷きになった者を発見し、迅速に救助する。


 試作機なだけに非常にシンプルな構造で製作された初期型ファーレスはその有用性をアメリカとメキシコの国境で発生した巨大地震によって証明した。五機のみしか投入されなかったが、下敷きとなった人命の救助や倒壊した建物の後始末などその製造目的を十全に果たし、目に見える貢献をした。

 この活躍はファーレスを軍事転用した際の有用性も同時に示し、良くも悪くもファーレスの設計、製造は加速。日米以外にも世界中各国からも協力の申し出が多数寄せられ、一大ムーブメントを引き起こした。この動きによって新たな第二、第三世代ファーレスが設計され、世界のテクノロジーイノベーションを促進させると共に結果的に戦争の下火になってしまっていた。


 西暦二〇三八年、シリコンバレーで進められていた第三世代ファーレスの作動試験中に事件は起きた。後に世界全体を揺るがすことになるこの事件を契機にファーレスによる戦乱の時代は始まった。翌二〇三九年に起こった新たなイノベーションはアメリカと日本を経済上の頂点へと押し上げた。

 電気的な供給を必要とするとはいえ圧倒的な駆動性を持った兵器が安全に運用できたという実例、表立ってはないが武器を持たせれば小さな国など十分に侵略できてしまうという可能性、何よりアメリカという大国が他国にない新たな武器を得たという脅威。


 目に見える圧迫感は日米に対する不信感をゆっくりとだが、着実に浸透させることとなった。新たに協力を名乗り出る国家が増えたおかげで研究のペースと規模は急拡大。第二世代では第一世代よりも屈強なパワーを、第三世代ではより細かな動きを可能とする俊敏さを、そして第四世代ではより正確で詳細な情報分析・解析能力を求め、日米の技術を組み合わせて開発を行っていた。


 数々のデモンストレーションの裏側では着実にファーレスの軍事兵器化が進行しており、武器製造ラインは日々拡大し、ファーレスによる戦闘を想定した特殊部隊が密かに運用されていた。そんな状況にしびれを切らしたのはメキシコであった。より正確に表現するのならば中国に傀儡とされたメキシコ軍というのが正しいだろう。中国はロシアなどと共にファーレスへの出資を拒否された国の一つであり、世界の第一線から排除されたことで方針を転換。


 中国はより詳細なファーレスの情報を得るためにメキシコ政府と密かに取引を行い、内部から侵食していった。そうして徐々に傀儡へと堕とし、メキシコ経由でアメリカ内部へ侵入しようとしていた。初めは順調に進んでいた中国であったが、ある一定の情報からはどうやっても入手はおろかその存在にすら辿り着けなくなっていた。

 その理由は単純明快。第三世代の開発後期の段階でメキシコにスパイが入り込んでいることが発覚したため、開発の拠点をアメリカから日本へと移転し、日本での開発成果を数ヵ月遅れでアメリカで発表する方針へと変更したのだ。開発データと若干の途中経過のみをアメリカに送っていたため、重要な部分はごく限られた研究員にしか伝わっていなかった。そうすることでスパイを炙り出し、その人間やその人間の周りの人間にも情報を流さないという対策が機能し、中国は焦りを募らせていった。


 そうして一向に情報が得られない中国は遂に二〇三八年七月、メキシコ軍に出動を要請。試作段階だった第四世代が正式に完成し、量産される前に技術と情報を根こそぎ奪ってしまおうと侵攻を開始し、同時に中国本土からも艦隊を派遣して強襲をかけた。初めは順調に北進していたが、テキサス南東部を越えた辺りから謎の襲撃を受け始める。

 当時の日本は北米大陸に渦巻く動乱の兆しを一早く察知し、同盟国の機能が麻痺し、自国と自国民の安全が脅かされるという最悪のシナリオを回避すべく静観していたどの国よりも早くオーストラリアと今までよりもより強固で規模の大きい経済同盟を結び、その裏で積極的な相互協力体制を確立していた。


 あくまで同盟国のアメリカを支援するためという意思表示のために欧州各国にも経済協力を呼びかけ、巧妙にカモフラージュを行った。だが、幸か不幸か当初の予測は的中し、北米大陸の騒乱は侵攻してきたメキシコ軍を武装したファーレス第四世代が壊滅させ、その虐殺とも言える光景が全世界に報道された。

 人間には不可能な圧倒的な重武装とその重量をものともしない圧倒的な機動力。ファーレスというマシンが純粋な兵器であると全世界に認識された、その瞬間だった。たった十数機で千人規模の敵軍を瞬く間に壊滅させていく映像は衝撃的であり、アメリカ政府による降伏勧告が早期に発せられたのが唯一の救いであった。


 メキシコ軍に出撃を命じた政府は市民からの怒りから逃げ出し、南米大陸の中でも中国の息のかかった国へと亡命し、メキシコは新たに設立された政府がアメリカからの提案を受け入れ、同時期に共同化を申し込んできたカナダと合わせて合併。南米に逃げ込んだ旧メキシコ政府は中国の間者、ロシアからの使節の協力によって南米大陸を統合。メキシコ以北と以南を境に二分し、それぞれ「北米大陸会議」、「南米大陸軍事共同体」を発足し、今に至るまで大小様々な武力衝突を繰り返している。


 日豪欧は北米大陸会議を、露中は南米大陸軍事共同体を積極的に支援していたが、二〇四一年にロシアはEUに、中国は日本に対して突如宣戦布告を行い、新たな戦争が始まった。メキシコを動かし、アメリカからファーレスの情報を手に入れようと画策していた中国は旧アメリカと共にファーレスを開発していた日本に狙いを定め、数にものを言わせた物量作戦で日本へと侵攻を開始した。


 当時のファーレス開発はアメリカ主導で日本はあくまで資金・人材提供を行い、万が一のリスクヘッジ要員であるという見方が大半で、国内でも税金の無駄遣いであると非難する声が多かった。政府はその声を巧みに利用し、日本ではファーレスの製造も実験も行われていないと思い込ませていた。同時に情報を得ようとする各国の間者やスパイを水面下で間引き、巧妙に隠匿し続けてきた。

 よって海戦に際して船上・本土からファーレスを用いた長距離射撃を受けるなど敵軍は一切予測しておらず、艦船の機動力と長距離射撃による奇襲性を活かした電撃戦がはまり、日本海で敵艦隊を壊滅させることには成功したが、同じ頃、中国はモンゴル・カザフスタン・韓国・北朝鮮を支配下に置き、「東亜細亜軍事連合」と名称を変更し、日本への侵攻を囮に領土を拡大し、モンゴルを足掛かりにインドを含む東南アジア諸国へと侵攻を開始した。


 これにより、東南アジア諸国はインドを盟主に「新インド経済圏」を結成。東亜連の脅威を排除するためオーストラリアへの物資支援という間接的な協力体制に留めていた姿勢を改め、正式に日豪と同盟を結び、参戦。一方、ヨーロッパではロシアの侵攻によって東欧諸国が戦場となり、ポーランドを防衛線として激しい戦闘が繰り広げられていた。EUには資金提供の見返りとしてファーレスについての情報が開示されていたが、完全に製造することは不可能だった。


 しかし、部分的な模倣は成功させており、ファーレスのエネルギー変換システムをレーザー兵器へと転用し、広範囲超長距離プラズマ砲を完成させた。統率の取れた動きで進行するロシア軍に対して防戦一方だったEU軍はプラズマ砲によって戦況を何とか変化させ、ロシア軍を一時撤退させた。しかし、ロシアは侵攻し、占領した地域を併合して「新ロシア帝国」の建国を宣言。

 共和制の時代に唯一の専制君主制国家の建国を宣言し、その時をもって東亜連と公に同盟を結び、その数ヵ月後には南米大陸軍事共同体と三組織での同盟を締結した。


 ヨーロッパ諸国は全世界規模に拡大するこの戦争への意識を改め、統治組織をEUから「ヨーロッパ統一連邦」へと形態を変え、ヨーロッパ全ての軍事組織を統一連邦軍として再編成。意思統一を明確にし、政府形態も刷新した。政治・軍事への指揮系統を画一化し、中央政府をルクセンブルグに移転してロシアへの攻勢を強めた。


 この動きを見て中立を保っていたアラビア諸国はヨーロッパ統一連邦と日本への直接支援を決定。アラビア諸国は石油等の支援物資をヨーロッパ統一連邦と新アジア経済圏に送り、インドを経由して日本へ物資は届けられた。

 後に「第一次佐渡ヶ島インド洋海戦」と呼ばれた日本海とインド洋での戦いは三組織同盟による国際法の放棄という形で幕を閉じ、二〇四六年十一月には日本・オーストラリア・ヨーロッパ統一連邦・北米大陸会議・新アジア経済圏・アラビア諸国によって経済・軍事同盟が結ばれ、この日を境に世界は「自由共和連邦」と「新世界統合同盟」に二分された。


 二〇五一年にはアフリカ大陸において大規模な内戦が勃発し、アフリカ大陸を「北アフリカ共和政府」と「新アフリカ統一同盟」の南北二分する戦いにまで発展した。


 そうして争い続け、現在の世界は混迷を極めている。

新シリーズになります。

これから週一ペースで更新していきたいと思います。

国名:北米大陸会議、南米大陸軍事共同体、東亜細亜軍事連合、新インド経済圏、新ロシア帝国、ヨーロッパ統一連邦、北アフリカ共和政府、新アフリカ統一同盟

枠組み:自由共和連邦、新世界統合同盟

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