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夢の続き-⑦

 


「とはいえ、この中に入っているのは俺が山に隠した指一つで、左近が外に出せる命は一つのままです。色々制約もつきましてね」

「制約、ですか?」

「桃子も見るか? 左近の家紋!」


 言うが早いか、左近は着物の合わせをがばりと広げて桃子に胸を見せてくる。着物で隠れる体の真ん中には、家紋が重なったような丸い柄があった。


「これは……」

「水の陰陽師筆頭の龍水様と、金の陰陽師筆頭の金条様の家紋が重なったものです。どちらかが左近に人を襲う危険性があると判断した場合には、この家紋にかかった術が左近の命を消します」

「そんな……! 左近くんは人を襲ったりなんて、」

「うん。でもこれは逆に考えると、左近の生存に、五つの筆頭のうち、二つの家が責任を持つと言ってくれたってことなんですよ」


 孤舟の言に、桃子の思考は一瞬止まる。あまりのことで、瞬時には理解が及ばなかった。


 でもそれって、それって……!


「すごいこと、ですよね……?」

「ええ。龍水様は先代潮家当主を守りきれなかった罪滅ぼし、金条様は今回の件の責任を取って、という形ではありますがね。鬼に対して、封印か滅殺かの二択しか持たなかった人間にとって、大きな一歩であることは間違いない」


 孤舟は左近を見て、


「お二人が責任を分け合ってくださったことで、俺も左近も晴れて放免。こうして二人で、桃子さんに事の次第を説明に来られたわけです」

「そうだったんですね……私、何も知らずに、呑気に暮らしてしまって……」

「いえいえ。その節は大変なご迷惑をおかけしました」


 左近の頭を上から押さえつけるようにして、孤舟は桃子に頭を下げる。


「そんな、やめてください、二人とも! 私なんか、全然、何もしてないんですから! いやだわ……あ、そうだ、お茶! お茶淹れ直しましょうね! 左近くんには甘いものがいいかしら。確か生徒さんからの頂き物があって、ちょっと待ってくださいね」


 二人の健やかな姿を見ると泣けてきてしまって、桃子は慌てて席を立つ。

 ところが、涙を隠すように襖を開けると、遠くの玄関に座っていた父が慌てて腰を上げるのが見えた。涙も引っ込むほど桃子は驚く。


「父様!? 何してるの! 立ち聞き禁止って言ったじゃない!」

「あ、いや、聞いてない! 聞いてないが……お帰りになる前に、土司様にご挨拶をと思ってだな」

「父様!」


 散歩を早めに切り上げて、上がり框に座って待ち構えていたようだ。怒る桃子の後ろから、孤舟がひょこりと顔を出す。


「もうご説明は終わりましたので、ここからはぜひ、お父様もご一緒に。お父様にも関係のあるお話ですから」

「孤舟様!?」

「言ったでしょう、ご説明はついでだと。……ここからが本題です」


 孤舟は囁き、どこか緊張したように頷く。

 一方、父は


「左様でございますか! では、不肖綿貫敬三も同席させていただきたく……」


 と、桃子の脇をすり抜けていそいそと客間に陣取ってしまった。桃子は、もうどうにでもなれ、とやけっぱちな気持ちで茶を淹れ直しに行った。



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