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そういう夢を見ていた-⑧



「ち、違う、違う! そうだ、肉片、泥人形に意思を持たせた、あの鬼の肉片が入って……」


 男は再び膝をついて、泥を乱雑にかき分ける。しかし、どれほど掘ろうとも、目当てのものは出てこない。

 泥にまみれながら、男が般若の形相で孤舟を睨み上げる。


「どこに隠した!」

「さて、なんのことやら」

「どうせあの術、手紙をその娘の父親に届けたような術で、どこかに隠したのだろう! この山のどこに隠したのだ、言え!!」

「ないものをあるとは言えません」


 男は顔を真っ赤にして立ち上がって腕輪を操ろうとするが、腕輪はしっかりと泥に捕らえられて動かない。高速で回転して泥から逃れようとするも、ぐずぐずとぬかるんだ地中に、ますます深く取り込まれていくばかりだった。


「これ以上打つ手がないようであれば、この辺で一度手を引いてはいかがです? 俺も他にやることがたくさんあるので、いつまでも君にかかずらわっているわけにもいかないのですが」

「あの鬼は! 我々があの狐山まで必死で追い込み、五人で絶えず術をかけることでなんとか抑え込んで、封印していた鬼なのだぞ! それをお前が、小さく切り離して己の手下として飼っていた。これが世界への反逆でなく、なんだと言うのだ! いくら土の陰陽師筆頭の土司家といえど、この罪を隠し立てすることはできまい!!」


 筆頭? 筆頭って、あの、一番偉い人のこと? その、土の陰陽師筆頭が、孤舟様の家?


 口を挟めずその場にただいる桃子の頭には、疑問が次から次へとねじ込まれる。

 桃子の混乱をよそに、孤舟は「やっぱり宝生家だったか」とため息をつき、


「あれをここまで追い込めるほど弱らせたのは、君たちじゃなくて潮家でしょう。それに、その封印の人柱の内の、二つは俺です。君たちは人の手柄を横から掠め取ったに過ぎない」


 と冷たく言い放った。


「身体と魂を二つに分けてまで封印に協力したというのに、あらぬ言いがかりをつけられて、本当に嘆かわしいことですよ。悲しいったらないなあ」

「ふざけるな!」


 男は身体中を怒りに震わせながら


「探してやる、見つけてやるぞ……! この山の中から、必ず……針一本さえ見逃すものか!」


 と吠える。

 孤舟は嘲るように返す。


「金の陰陽師の君が? この広大な山から? あるかもしれない鬼の肉片を探し出すって?」

「土の陰陽師に協力を仰げば、わけもないことだ!」


 その言葉を、今度こそ孤舟は笑い飛ばした。


「君も言ったように、これでも俺は土の陰陽師筆頭の土司の息子。うちに逆らおうとする人間は、土の陰陽師の中にはいませんよ。あの祖父も、家名に傷がつくとなったら黙って見てはいないだろう」

「罪を握り潰そうというのか……!」

「必要ならね」


 孤舟はすげなく言うと、「それじゃあ、もういいですか? 俺は左近と話しに行かないと」と言って、話を切り上げようとする。


「ここは元より、金の陰陽師の所轄。そこに土の陰陽師が、それも俺のようなものが送り込まれて、いくら封印のためとは言え、でかい顔で居座り続けるのはさぞかし業腹だったでしょう。同情いたしますよ。だが、こんなことにはなんの意味も、」

「お前の魂胆は分かっているぞ!」


 男は孤舟の言葉を遮り、大音声をあげた。


「あの鬼を手懐けていた理由……お雨は鬼を使って、世界を滅ぼすつもりなのだろう……!



 この、半人半鬼の化け物め!!」



 絶えず響いている轟音に晒された桃子の耳に、男の声はそれでも突き刺さるように響いた。



 半人半鬼……?


 なんのこと?




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